「かぁーつらぁー!」
そう怒鳴り声が聞こえるか聞こえないかの内に万事屋が爆発する。
…コレは…
「沖田さんっ!?」
「おー、新八くん。怪我はねェかィ?」
ツカツカと土足で入り込んできて、スッと僕を抱き上げる…何で!?
そう思う間も無く僕らが居た所が爆発する…!?
あぁぁぁぁ…もう万事屋ボロボロだよ…畜生、皆に弁償させてやる…
「危ねェなァ…大丈夫かィ?」
真面目な顔の沖田さんに顔を覗き込まれると、心臓がドキドキする…
カッコイイ…よな…
「あのっ…大丈夫です…」
「ったく、新八君が怪我したらどうするんでィ。死ね土方。」
「俺ぁ何もしてねぇだろ!お前こそ何新八抱き上げてんだ!?今すぐ離せ!!」
「やなこった。」
斬りかかってくる土方さんをひょいひょいと避けつつ、銀さんのデスクの陰に僕を降ろす。
あ…ヤダ…離れたくないよ…
沖田さんの首に腕を回してぎゅっと抱きつくと、頬っぺたに唇が当たってしまった…あ…なっ…!
僕の顔に物凄い勢いで血がのぼってくる。
僕…今何を…!?
そっと様子を窺うと、沖田さんはビクリと震えた…ちょっとショックだ…
でも…仕方ないよね…僕はさっきまで男だったし…男にキスされたり抱きつかれたりしたら…気持ち悪いよね…
「…沖田さんも…怪我…しないで下さいね…?」
「…へぃ…」
そっと離れると、沖田さんの顔も真っ赤で…
え…?何…?
「沖田さ…?」
「新八くん、俺はお前さんが…」
真剣な表情で手をギュッと握られる。
まさか…沖田さんも…
「新八何してるネ!?」
神楽ちゃんにぐいっと引っ張られて机の陰から出されると、全員が僕らの方を見ていて…闘ってたはずなのに、皆ピクリとも動かない…?
「え…?あのっ…」
「新ちゃん何してんの!綺麗な顔してたってドSだよ!!サディスティック星の王子様だよ?沖田君は!」
「総悟…斬る…」
「沖田君…キミ…羨ましい…」
「何?アイツ…殺しちゃって良い?」
「殺る…」
「真選組が…」
「まぁまぁ、それぐらいワシゃ気にせんぜよ…でも、とりあえず殺っとこうかの〜?」
それぞれ好き勝手な事を言ってじりじりと僕らに近付いてくる…
それなのに、真っ赤なままの沖田さんがこくりと首を傾げて僕の袖を掴む。
かっ…可愛いじゃないかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!
「…新八君も…俺の事好きなんで…?」
「すっ…好き…かもしれません…」
「なんでィ、そりゃぁ…んじゃ、付き合いやしょうか、俺達…」
ジッと目を見つめられたまま微笑まれたら…嫌だなんて言えない…
あ!でも…
「沖田さんっ!でも僕男に戻ったら…」
「大丈夫でィ、戻んねェからソレ。聞いてねェのか?使えねェな土方。」
「いっ…いえ、聞きましたけど…本当の本当なんですか?」
「おう、本当でさァ。だから安心して俺の所に嫁に来なせェ。」
ほにゃりと笑ってちゅうと唇にキスされると…心臓爆発しそうだ…!
なんで…男の人にキスされたのに全然嫌じゃないんだ…?
やっぱり…好き…なのか…?僕は…沖田さんが…
そう想うと一際心臓が騒ぎ出す…
「うーっ…はい………」
僕が頷くと、にっこり微笑んだ沖田さんがぐるりと皆を見回す。
「…って訳でさァ。あんたら皆振られたんで大人しく帰りなせェ。あ、高杉と桂はしょっ引くぜ。」
にっこりにこにこと笑ったままの沖田さんが物凄い殺気を放つと、他の皆さんも殺気を叩きつけてくる。
狭い万事屋に殺気が充満して痛いぐらいだ…
暫くそのまま睨み合った後、全員が一斉にジャキリと獲物を構える。
いくら沖田さんが強いからって…こんな人数相手に闘ったら無事じゃいられないよ…
ぼやぼやしている間にも、じりじりと皆が間合いをつめてくる…
僕が止めなきゃっ!!
「やめてーっ!」
僕が沖田さんの前に立ちはだかろうと駆けだすと、沖田さんがぐいっと僕の着物を掴んで引き留める。
でも、勢いのついてる僕は止まらなくって…そのまま前に進んだ…
「危ねェから下がって…ろ…」
ズルリ…
僕はまるで脱皮でもしたみたいに…綺麗に着物が剥がれて…上半身が露わになって…ぷるん、とおっぱいが震えた………
ってぇ―――っ!!!
慌てて胸を押さえても、思いっきり晒しちゃったよぉぉぉぉぉぉぉっ!!
「ギャ―――ッ!!」
みっ…見られた…皆さんに見られた…っ!
僕は男だけど…っ…今は女の子の身体だもん…なんか恥ずかしいよ…!
一瞬万事屋の時間が止まって、ポタリ、と何かが落ちる音がして又時間が動き始める。
なっ…皆さん…鼻血…
「…沖田君…」
「「「「「「「グッジョブ!」」」」」」」
鼻を押さえた皆さんが、親指を立てて声を揃えてそう言った…目が…目がいやらしいっ!!
「エロ親父――――っ!!」
ハッ!
沖田さん…沖田さんもエロ…?
恐る恐る振り返ると、沖田さんは真っ赤な顔で固まっていた…
良かった…沖田さんは鼻血出してないよ…
「エロい人は嫌いです!やっぱり僕は沖田さんが好きですっ!」
ぎゅうっと抱きつくと、沖田さんがそっと着物を掛けてくれる。
エロくない上に優しい!やっぱり沖田さんが良い!!
「新八くん、カッコいいねェ…惚れちまいやしたぜ?」
にっこりと爽やかに微笑まれると、ドキドキして…すっごく幸せを感じる…
「もう仕事終わりやしたよね?家まで送りやす。あ、途中で女もんの着物買ってやりまさァ!でーとしやしょうぜ、でーと。」
「…沖田さんはお仕事…良いんですか…?」
「おう、土方さんと伊東さんが桂と高杉捕まえたんで大丈夫でィ。」
「そうなんですか?じゃぁ…デート…行きます…あ、銀さん神楽ちゃん、お疲れ様です。」
僕が声を掛けて沖田さんと手を繋いで万事屋を出ると、中から雄叫びと一緒に何かが壊れる音がする。
あー…捕り物が又始まったのかな…部屋を直すのは、坂本さんにお願いしよう。変な話流しやがって…
不注意で僕は本当に女の子になっちゃったけど…
そっと沖田さんの顔を仰ぎ見ると、すぐに気付いて微笑んでくれる。
…こんなに優しい人が傍に居てくれるんだから…なんとかなるかな…って思います。
END
10萬打記念で壬南様にリクエスト頂きました。
女体新八はパチ恵を散々書いてはいるのですが、後天的なのは初めて…ですか?
総受けになると、だらだら長くなってしまってすみません!
でも、この人達は譲れないようです…
そして、沖田さんがやたらと好青年ですが…作戦です。
女の子は王子様が好きですからね!
騙しておいて、じわじわと泣かせていくつもりです。
でもきっと、そんなには泣かせられない。ベタ惚れだから。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
リクエスト有難う御座いました!
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