あぁ、僕はこの人が好きだったんだ…
ひとめぼれは、男の人相手でも有るんだ…運命とか思っちゃったもんな…
他の人じゃ考えられなくても…沖田君だったら…アリなんだ…
でも…気付いた時には失恋なんて…本当、僕ってタイミング悪い…
無理矢理笑顔を作って沖田君を見ると、怪訝な顔で僕を見る。

「新八ィ…?俺の話聞いてやした…?」

「うん、大丈夫。ちゃんと聞いてたよ?」

本当は何にも聞いて無かった。
でも、聞きたくないよ…姉さんを好きだって話なんか…

「…聞いてたんなら良いんでさァ…んじゃ、放課後な。」

何故か複雑な顔をして沖田君が席に戻る。

「…新八はそれで良いアルカ…?」

神楽ちゃんも複雑な顔をして僕を見る。
何で…?神楽ちゃんに心配されるぐらい酷い顔してるのかな…?
でも今ぐらい…失恋してすぐぐらいは…こんな顔させてよ…
僕がコクリと頷くと、泣きそうな顔をした神楽ちゃんも自分の席に戻る。
優しい子だよな、神楽ちゃん…自分の事のように心配してくれる…
出来るだけ心配かけたくないけど…でも今日だけは…許して…くれるよね…

僕は…

酷く落ち込んで、放課後なんか来なければ良い、なんて思ってしまった。



それでも放課後は確実にやってきて…席が隣じゃ逃げられる訳も無い。
HRが終わるとすぐに、にこにこと上機嫌な沖田君が僕の前に立つ。

「新八ィ、帰りやしょ―」

「…うん…」

思い足を引きずりながら家に向かって歩いていると、沖田君は嬉しそうに色んな話を僕に振ってくる。
でも…僕は何も答えられない…
うんうんと生返事を返すだけで精一杯で…
それでも沖田君は、気にする事なく話し続ける。
僕の事なんか目に入って無いんだろうな…姉さんの事しか考えて無いんだよ、きっと…

家の近くのコンビニまで来ると、沖田君が立ち止まる。

「新八ィ、コンビニ寄りやすぜ。姐さんに土産買って行きまさァ。」

「えっ…そんなの良いよ…」

「イヤイヤ、手土産は好感度アップの必須アイテムですぜ?」

それだけ言って、嫌がる僕の手を掴んで、楽しそうにコンビニに入っていく。
真っ直ぐアイスのコーナーに向かってバーゲンダッシュのカップを品定めしだす…姉さんの好物…何時の間に知ったんだ…?

「新八はどれが好きなんで?」

「…いちご…でも、ソレ姉さんのお土産なんでしょ-が…」

「俺らのおやつでもあるんでィ。」

にこり、と笑っていちご味とチョコ味とキャラメル味を積み上げる。
レジを済ませて外に出ても…僕らの手は繋がれたままで…
無意識…なんだろうな…変に意識してるのは僕だけで…沖田君にとっては友達同士で手を繋ぐくらい普通なんだ…
いや、もしかしたら手を繋いでる、なんて思って無いかもしれない…トロい僕を引っ張ってるぐらいしか思って無いのかもしれない…
なら…せめて家に帰るまでは…このままで良いよね…

家に着いて僕が鍵を開けると、沖田君はさっさと姉さんの所に行ってしまった。
玄関に僕を置いて。
…そんなに早く姉さんに逢いたかったんだ…
ぎゅうっと心臓が掴まれたみたいに痛くって、僕はいつもよりゆっくりと居間まで行く。
今迄だって、沖田君がさっさと家に入って行くなんて良くあった事なのに…自覚しちゃったらそれが悲しくて…
あぁ!もう僕ってこんなに女々しかったんだ…
居間に居る姉さんにただいまと挨拶すると、とても楽しそうに話す2人の邪魔をしてしまう。
…それが嬉しいなんて…僕は…嫌な奴だ…
これ以上嫌な奴になりたくなくて、沖田君に声を掛けて自室に向かう。
すると、すぐにパタパタと僕を追いかける足音が聞こえる…姉さん…?

「新八ィ、何怒ってんでィ?嫉妬かィ?」

「んなっ!?そんな訳ないじゃん!バカですか!?」

「なんでィ、残念。」

にっこりと笑って、ほい、とアイスをくれる。
…あ…って何でチョコ味…?

「沖田君、僕いちごが好きって…」

「チョコも旨いぜ?俺ァ好きだ。だから新八も喰って俺色に染まりなせェ。」

…俺色…?
沖田君は、一体何を…?

途端に、昼休みの光景が蘇る。
見てはいたけれど、脳が認識していなかった言葉…

『は?姐さん?好きですぜ?だって将来俺の姉ちゃんになる女ですからねィ…俺ァお前さんと結婚する予定なんでさァ!』

け…っこん…?
誰と…?
………僕と!?

「何恥ずかしい事教室で言ってんだよっ!!!!!」

「は?教室…?ココは新八の家じゃなかったんで?」

「そうじゃなくて!結婚…とか…」

僕が恥ずかしくなって俯くと、にこにこ笑った沖田君が無理矢理僕の顔を上げる。

「やっぱり聞いて無かったんじゃねェか…仕方ねェだろィ?お前さんにひとめぼれしちまったんだから。じわじわ近付いて仲良くなりやしたからねィ…やっと友達、って認めてくれやしたから、次は恋人かな、って思うじゃねェか。」

ちょっと照れながら、はにかむように微笑まれたら…ぼ―っと見惚れてしまう…
ズルイよ、そんな顔…

「まぁ、ここまでゆっくり来てるんだから今更焦んねェよ。ゆっくり落としていくから覚悟しなせェ。ぜってェ逃がしゃしねェよ。」

優しかった顔が、ニヤリと歪んで意地悪そうになっても…もうカッコイイとしか思えない。
あぁもう…でもなんか癪だよっ!

「そんな事より早くアイス喰おうぜ―、溶けちまわァ!」

…そんな事って…一喜一憂してんのは僕だけかよ!?
スタスタと僕の部屋に向かう沖田君に文句を言おうと後姿を見ると、耳から首筋が真っ赤に染まってて…
僕の事を想って急がないでいてくれるのかと思うと…ますます惚れ直す…

「アンタの色になんか染まりませんよ!僕はいちご味が好きなんです!!」

駆け寄って、いちご味のアイスを奪って自室に向かう。
奪われた沖田君も、不敵な笑いを浮かべて追って来る。
早く、僕もひとめぼれしたんだ、って伝えたいけど…きっと調子に乗るから。
もう暫くは、このままで。

たっぷり時間をあげますから、もっともっと僕を虜にして下さい。


END



10萬打企画でささ様にリクエスト頂きました。
連載の2人…は…こんなんだった…かな…?とか…
あんまり変わらないですね…

でも、3Z以外の学パロは初めて書いた気がするのですが…楽しかったです!
又書きたいかもしれない…

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
リクエスト有難う御座いました!