「オマエは馬鹿ネ!大馬鹿ネ!この娘良く見るネ。」

更に僕をぐっと近付けると、ものっ凄く顔が近いっ!!
なっ…何か照れるよっ…
僕が顔を赤くして、それでもジッと動かないで居ると、至近距離の沖田さんがマジマジと僕を見る。
その顔がうっすら赤くなってるんで、僕もつられて赤くなる。

「…何でィ、このお嬢さんがどうかしたんですかィ?…可愛いたァ思いやすぜ…?でも新八くんの方が可愛いでしょう。」

なっ…何言ってんだこの人っ!?
真面目な顔のままそんな事言われたら…凄くドキドキするんですけど…っ…!
あぁもう、顔に血が上るよっ…
真っ赤な顔で、それでも目線を逸らせなくって、僕がじっとその深い瞳を見つめていると、ポリポリと頬を掻いて、沖田さんも目を逸らしてくれない…
止めてくれよっ!そんな綺麗な瞳で見つめないでっ!!

僕らが見つめ合ったまま動けないで居ると、周りが爆笑する…

「何なんでィ!死ね土方!!」

沖田さんが掴みかかっても、土方さんは俯いて震えたまま抵抗しない。そこまで笑うか!?
その反応に不思議そうに首を傾げた沖田さんを嘲笑いながら、神楽ちゃんが又僕を掴む。

「オマエはホント馬鹿な!コレが新八アル。」

そう言われた沖田さんは、ヒーヒーと引き笑いまで始めた神楽ちゃんをぽかん、と見た後、バッと僕に向き直ってそれこそ穴が開くんじゃないかと思うほどジッと見る。

「…はい…あの…」

僕がなんとなく愛想笑いをすると、一瞬で真っ赤になった沖田さんが飛び退る。

「なっ…しっ…新八くん…?」

「…はい…」

僕が返事をすると、意味も無くパタパタと動き出す…
何か…可愛い…

「えっ?しっ…新八くん…?全部…聞いてやした…?」

「…はい…まぁ…」

ずっとここに居たしね…
えへへ、と笑うと、今度は動かなくなった…

「あれ?沖田さんっ!?」

目の前で手をぱたぱたと振っても微動だにしない…あれ…?

「沖田さーん?」

ぽんぽん、と肩を叩くとビクリと跳ねて飛び退る。
こんな格好だから…気持ち悪がられてるのかな…?ちょっとショック…
僕が俯くと、焦った沖田さんがダカダカと駆け寄ってくる。

「イヤ、あの、ほら、アレでィ!」

…アレって何だよ…

「俺ら芋侍はホラ、アレでィ、女には縁が無ェから…可愛い女に触られっとアレって言うか…」

「僕…男ですけど…」

僕が突っ込むと、又皆がゲラゲラと笑う。
何だよもう…!

「それに『俺ら』って…土方さんも、この間女装してた時に会った山崎さんも、普通でしたよ…?沖田さんは僕の事嫌いだから…だからですよね…?」

あ、何か自分で言ってて悲しくなってきた…

「きっ…嫌いなんて事ァねェよ!アイツ等は金にモノ言わせてそこら辺何とかしてるし!!」

なんだか必死で沖田さんが叫ぶけど…嫌われてはいないのかな…?良かった…って何で!?

「総悟!人聞き悪ぃ事言ってんじゃねぇよ!!山崎はそうでも俺は違ぇからな!」

土方さんが焦った顔で言い訳するけど…
大人なんだから仕方ないよね…
僕が生温かい目で見ると、もう1回

「違うからな!」

とか叫んでる…

「男なんだから、仕方ないッスよ。」

僕がフォローしてにへ、と笑うと、隣に居た銀さんも生温かい笑顔でポンポンと肩を叩いてる。
…大人って何か汚い…

「俺ァそんなんしてやせんから!新八くん一筋ですからねィ!!」

「…はぁ…」

真剣な顔で沖田さんが力説する。
へー、そうなんだ。沖田さんも土方さん達と一緒にそう言う所に行ってそうなのに、僕一筋なんだ…

…って…アレ…?今何か変な事聞いたような…

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

一気に顔に血が上ってくる。
えっ!?ちょっ…えーっ!?

「あっ…あのアレ…今僕…凄い事聞いた気がするんですが…」

「へっ?だって全部聞いてたんですよねィ…?もしかして新八くん…気付いてやせんでした…?」

「…はい…」

僕が答えると、沖田さんの顔も一気に赤くなる。
又挙動不審になって、意味も無くぱたぱたと動き出す。

えっ…ちょっ…マジで…?

動けない僕がジッと見ていると、大きく深呼吸した沖田さんがぎゅうと僕の手を握る。

「新八くん…俺ァ新八くんが好きでィ!惚れてまさァ!!」

「うわっ…はい…でもあの僕…」

マジでか!?マジでかっ!?告白されたぁぁぁぁぁぁっ!!
どうしようどうしようどうしよう…沖田さんだよ!アノ沖田さんだよっ!!
僕が脳内パニックでひたすらじーっと沖田さんを見ていると、これ以上ないんじゃないか、ってぐらい赤くなった沖田さんがにこり、と微笑む。
ニヤリ、とかニヤ、とか何か企んでいそうな笑顔じゃなくて、全く邪気の無いにこり…
そんな顔で微笑まれたら…心臓壊れそうになるよ…

「返事は今じゃなくて良いんで…俺の本気だけ…覚えといて下せェ。」

「うっ…はい…」

僕が言うと、周りの皆が何か叫んでるけど…耳に入ってこない。
ふわふわして…なんか水玉が飛んでる気がする…
何だろコレ…不思議と気持ち悪くない…
沖田さん、男の人なのに…
女装してるから、気持ちまで女の子になってるのかな…?

「…新八くん、送って行きまさァ…」

クイッと繋いだ手を引かれて歩き出すと、地面までふわふわしているように感じる。
この気持ちが何なのか…分かりたいけど分かりたくない。

もう暫くは…このままで…



END


10萬打企画で蘭様にリクエスト頂きました。
ギャグ…になってませんね…
沖田さんがとことんお馬鹿な子になっていますが、そこら辺は笑う所だと…思って頂けると…

少しでも楽しんで頂けると幸いです。
リクエスト有難う御座いました!