なんとかかんとか準備も終わって、遂に学校祭当日。
他のクラスが出店とかで忙しい中、僕ら3Zも待ちに待った演劇の本番がやってきた。
ばっちりと衣装を着せられた僕は、軽くメイクまでされてしまった…
やっぱりおかしいよね…男の僕がお姫様なんて…今更だけどさ…
「新ちゃん可愛い!これで皆のハートを鷲掴みね!!」
「姉上…やっぱり変ですよ、コレ…」
「そんな事無いわ!ものっすごく似合ってるもの新ちゃん!!」
「…あんまり嬉しくないです…」
げっそりしながら僕が言っても、姉上は聞いちゃくれない。
「可愛いわ!沖田君もそう思うわよね?」
「へっ…?」
慌てて姉上が声を掛けた方を振り向くと、王子様の格好をした総悟君がうっすら頬を染めてじっと僕を見ていた…うわ…カッコ良い…
「へい、俺の姫が誰よりも一番可愛いでさァ。」
にこり、と微笑まれると…やっぱり心臓が壊れそうにドキドキする…
でも、これも劇が終わるまでだ!
…きっと…
「俺もすぐに行きやすから…頑張って下せェ、新八ィ…」
とん、と押されて舞台に出ると、本番が始まった…
◆
「今日はお城で舞踏会が有るんだわ…私も行きたいな…」
「何言ってるアル!貧乏人は家で留守番ネ!!」
「そーよ!そんな事より私のドレスは用意できてるの?シンデレラ!!」
…神楽ちゃんと桂君…ノリノリだなぁ…
「育ててあげてるだけでも感謝してお妙さんに…ぶはぁ!!」
近藤君…余計な事言うから二人に突っ込まれてるよ…
「とにかく!アンタなんか連れて行かなくってよ!ホーホホホホホホホホホ…」
なんとか綺麗にまとめて劇は進む…僕、アドリブ出来るかなぁ…この後はちゃんと台本通りだと良いんだけど…
話は流れて置いて行かれたシンデレラの元に魔法使いがやってくる。
「まっ…マホーをかけてあげましょー」
…九兵衛さん…棒読みにも程が有る…
カチコチに固まったままの九兵衛さんがぎこちない動きで魔法の杖を振ると、黒子に扮した山崎君と原田君が、両側から僕のドレスを引っ張ってくれて、下から綺麗なドレスが現れる。
コレ作った人、凄いよなぁ…
「じゅうにじまでにー帰ってくるのだぞー」
結局最後まで棒読みのまま、九兵衛さんが去ると、ネズミの格好をしたさっちゃんさんが…ネズミ…
そんなセクシーなネズミ居ないからねっ!?
極端に布地の少ない衣装を身に付けたさっちゃんさんが舞台の端から端まで歩いていくと、その間に背景が変わる。
さっちゃんさんがはけると会場からブーイングが起こるけど、パッ、とライトが点いた舞台に沖田王子が現れるとそれは黄色い声に変わる。
すぐに僕の出番が来るけど…あんな歓声の中出て行って総悟君と絡むのヤダなぁ…女の子達に呪われそう…
でも出て行かない訳にはいかないし…
思い切って出ていくと、僕が予想していたようなブーイングなんかは無かった。
良かった…って言うか、僕なんか誰も見て無いや…それはそれで寂しいな…
でもまぁ、仕方ないか。
舞踏会のシーンは衣装班がかなり力入れてたからな!
色とりどりのドレスで踊る人達が…って、何でマヨネーズ!?
土方君…本当にマヨネーズ役だったんだ…マヨネーズの着ぐるみでウロウロしてるよ…
脱力しながらも、王子様の目にとまるシーンが始まって…
総悟君が人混みをスルスルとぬって僕の目の前に来て手を取ると、女の子達のキャー!という声が響き渡る。
あんまり怖くて思わず離れそうになると、グイッと引き寄せられてダンスのシーンが始まる。
練習沢山したけど、結局僕はダンスは上達しなかった。総悟君が上手で…上手くリードしてくれるからなんとか形になってるんだよね…本当、無敵かこの人…
ふと気付くと会場からやたらとシャッター音が聞こえる…眩しい位フラッシュが…
流石総悟君。女の子達が皆カメラ構えてるよ…
12時になって走り去ろうとすると、総悟君が僕の腕を掴んでグイッと引き寄せてキスをする…ってギャーっ!?ここにこんなシーン無いよっ!!!!!ってか本当にしたっ!!くっ…唇にっ…
キャーっ!という女の子達の悲鳴と一緒に更にシャッター音が増えるのは何でっ!?
グイグイと総悟君を押しやって、なんとか舞台袖に逃れたけど…心臓がっ…壊れるっ…
離れる寸前に囁かれた
『好き…ですぜ…』
って言葉は…なんだろう…
そこまで役に入っちゃってるのかな…?
それとも…
僕の動揺には関係なく劇は滞りなく進んでいって、いよいよクライマックス。
ガラスの靴を携えて現れる大臣と王子様…
伊東君大臣役ハマってるなぁ…すっごいやり手っぽいよ…
靴を履く為に前に出ると、総悟君がひどく切なそうな顔でじっと僕を見る。
そういうシーンだけど…さっきのアレのせいで、僕は総悟君の顔をちゃんと見る事が出来ない…
それでもなんとか進めていって、なんとかラストシーンまで話は進む。
…あとちょっと…
「貴女こそ私の探し求めていた女性だ!僕と結婚して頂けますか?」
物凄く眩しい笑顔でそんな事言われたら…演技だって分かってても、見惚れてしまう…
うっとりと見つめていると、伊東君に小さな声で
『新八君、台詞!台詞!!』
と教えられてしまった…いけないいけない…
「はい、嬉しいです…」
うん、これで物語は大団円。
後はお姫様が王子様の胸に飛び込んで、抱きあってめでたしめでたしで幕が降りる…はず…
僕が、ちょっと警戒しながらも王子様の腕の中に納まると、ぎゅうと抱きしめた総悟君が、僕の耳元でぼそぼそと囁く。
「新八ィ…さっきのちゅーは嫌でしたかィ…?嫌じゃなかったら…新八も俺の事好きって事ですぜ…?」
「へっ…!?も、って…」
思わず離れそうになると、更にぎゅうと抱きしめられる。
ちらっとだけ見えた総悟君の顔は、赤く染まっていて…
え…?マジでか…!?
そんな総悟君が、物凄く可愛く見えてしまった僕は…駄目かもしれない…
「好きですぜ…新八ィ…」
『姫』じゃ…無いんだ…
『新八』なんだ…
それがこんなに嬉しいなんて…
「僕も…総悟君が好きです…さっきの…嫌じゃ無かった自分が嫌です…」
僕がそう言うと、バッと離れてにっこり笑った総悟君がもう一回僕にキスをする。
こんな…舞台の上なのに…っ!!皆見てるのに恥ずかしいよっ…
でも…凄く幸せな気分になるから…今は怒らない。
もう一回、今度は僕からぎゅうっと抱きつくと、固まってたクラスの皆が動き出す。
「おっ…沖田君!?君は一体何を!?」
「沖田ぁぁぁぁぁぁ!?」
「沖田さん酷い!!」
「総悟…斬る…」
「のろのろ牽制してる方が悪いんでィ!逃げやすぜ、新八ィ。」
「えっ…!?」
がばっと僕を抱き上げた総悟君が、そのまま舞台から飛び降りて走り出す。
客席の女の子達にも邪魔されるかと思ったけど、意外と皆暖かく見送ってくれた。
むしろ追って来る皆を邪魔する勢いで…
この後も色々面倒くさそうだけど、総悟君ならなんとかしてくれるのかな…とか思ってしまいました。
END
10萬打企画でリクエスト頂きました。
3Z学校祭ネタが丁度かぶったので、こんな感じで。
連載3Zのパラレル的な感じで…クリスマスに告白してないと、こんな感じでしょうか?(聞くな!)
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
リクエスト有難う御座いました!
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