僕が２人の顔を交互に見ると、２人ともにこりと優しく笑ってくれる。
お…きたさんのこんな顔は…こんな距離で見るものじゃない…心臓が壊れ…
って！僕何大人しく抱きしめられてんのっ！？

グイッと胸を押して離れると、すんなりと離してくれる。
それが寂しいなんて…僕の頭は混乱でおかしくなってるんだ！
もういっそ…はっきりさせよう…
こんな一生懸命になってくれる人なら…僕は…

「…２人は…付き合ってるんですよね…？僕…姉上が取られたって思って…」

「「はぁっ！？」」

僕がやっと勇気を出して言ったっていうのに、２人が声を揃えておかしな声を出す。
こんななのに誤魔化そうだなんて…

「…デート…してたんですよね…？笑い合って…頬なんか染めちゃって…手も…握り合って…」

自分で言ってるのに、胸が締め付けられて…僕は俯いてしまった。

「あら、新ちゃん見てたの？」

「マジですかィ…」

そっと顔を上げると、姉上は平然としてるけど、沖田さんは気まずそうにしてる…
なんだ…やっぱり誤魔化そうとしてるんだ…

「私達はね『新ちゃん大好き同盟』を結んだの。さっきまで新ちゃんについて語り合っていたのよ？凄く充実したひと時だったわ！ね、沖田さん？」

姉上が頬を染めて、うっとりと言うけど…え…？しん…何…同盟…？

「姐さん勘弁して下せェ、俺まだ何も言ってねェです。」

沖田さんが頬を染めて、モジモジと言う…え…？

「あら、意外。沖田さんってばあんなに語るのに奥手なのね。」

綺麗に笑う姉上に、嫌な顔をした沖田さんが鼻を鳴らす。

「え…あの…話が良く見えな…」

僕が２人に声を掛けると、沖田さんがスーハーと大きく深呼吸をする。
その勢いで僕に向き直って、グイッと腕を掴まれる。

「新八くん…」

凄く真剣な顔が怖い…
『妙さんを俺にくれィ』
とか言われたら…僕はどうしたら…

「……はい……」

「俺ァ…俺ァ新八くんの事が大好きなんでさァ！」

「…へ…ぇ…？」

「勿論、ライクじゃなくてラブの方向で。」

…らぶ…って…

「えぇぇぇぇぇっ！？なっ…何を…」

「愛してる、って事でさァ。」

ふん、と鼻息も荒くそう言った沖田さんは、やり遂げたような顔で…

「良く言ったわ、沖田さん。」

姉上はと言えば、良い笑顔で拍手なんかして…あれ…？
ってか今…僕！？僕が言われたのっ！？

「あぁぁぁぁ…あのっ！僕はおとこ…なんですがっ…！」

頭が混乱する…沖田さんが好きなのは、姉上じゃ無くて僕で…
って！僕は男だし！！沖田さんも男だしっ！！
姉上が取られなくって安心したけど…
なんでかすっごくドキドキしてるけどっ…

「あら、好きなものは仕方ないじゃない。侍が小さな事にこだわってはダメよ？新ちゃん。」

「イヤ！何でもかんでも侍って言えば済むと思わないで下さいっ！！」

「そんな事思っちゃいねェよ。小さいボケも拾ってくれるなんざ、愛だねィ…」

にっこりと綺麗な笑顔を向けられたら…顔に血が上ってくる…

「そうなのよ！本当に、新ちゃんに関してこんなに話が合う人は沖田さんだけだわ！」

きゃっきゃっとはしゃぐ２人が何だか怖い…
え…？僕は…逃げた方が良い…？

そーっとその場を離れようとすると、両側からガシッと腕を掴まれた！？

「はっ…離し…」

「折角だから、新ちゃんも交えて続きを語りましょう？」

「良いですねィ！時間も時間なんで、新八くんの手料理なんざゴチになりやしょうか。勿論材料費は俺が出しまさァ。」

「まぁ、沖田さんったらずうずうしい。」

「やっと気持ちを伝えやしたし。新八くんも満更じゃなさそうですしねィ。」

ホホホ…ハハハ…と笑い合う２人が凄く怖い…
でも、組まれている腕は熱くて、さっきまでの胸の痛みは無くて。
僕の誤解で良かった…まだまだ姉上と一緒に居られるんだ！
…この人を…兄上、って呼ばなくて…良いんだ…

そっと沖田さんの顔を覗き見ると、バッチリ目が合って顔に血が上ってくる。

うわー！もう！！
沖田さんが変な事言うからこんな事になるんだ！
そうだ！そうに違いない！！

ドキドキと煩い胸の鼓動を無視して、僕らは３人で大江戸ストアに向かったのだった…
万事屋の晩ご飯は…銀さんがなんとかしてくれるよね…？



ＥＮＤ



１５萬打企画で壱碕さまにリクエスト頂きました

『沖田さんと妙さんが仲良し過ぎで、新八が嫉妬する話。新八は『姉上を沖田にとられたから』と思っていますが、本当は『沖田を姉上にとられたから』嫉妬している感じで。沖田と妙さんが仲良しな訳は情報交換とか。妙＋沖田→→(←無自覚)新八みたいな。』

話でした。
…上手く姉上が好きな新八くんになっているか…不安ですが…
どうしても沖田さん好き好き！になってしまう気が…します…

少しでも楽しんで頂けたなら、幸いです。
リクエスト有難う御座いました！


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