ぼくらの休日



「明日は俺非番だから、休み取りなせェ」

朝一番に家の玄関先に現れた恋人は、僕の顔を見るなりそんな事を言ってきた。
確かに万事屋はいつも休みみたいなもんだけど…でも、そんなに急に休みなんて言われても困るんだからな!
もしかしたら、今日急に依頼が入るかもしれないんだし…まぁ…そんな事ほとんど無いんだけどさ…

「…もしかしたら、今日行ったら依頼入ってるかもしれませんから休みが取れるかなんて分かりませんよ?全く、いつもいつも急にそんな事言われてもねぇ…」

僕がちょっと膨れてそう言うと、寂しそうに頭を垂れた沖田さんがぼそりと呟く。
え…?なんかいつもと違う…

「新八くんは俺と一緒に居たく無いんで…?」

「そっ…そんな事は…!」

「俺だけが新八くんに逢いたいんで…?すっげ久し振りの非番なのに…新八くんは俺とは居たく無いんで…?」

ちらり、と下から僕を見上げてくるのは反則だと思う。
そんな可愛い事されたら、僕だって強くなんか言えなくなってしまう。
僕だって…僕だって沖田さんの事大好きなんだからな!
それに、沖田さんの仕事はそんなに休んでばっかりもいられない仕事だって僕だって分かってる。
いっつもサボってるようで、本当はそんなにゆっくりと逢ってる訳じゃないんだ。
ほんの一瞬。
その為に沖田さんが僕に逢いに来てくれてるって事ぐらい僕だって分かってる。
それは凄く幸せな事で…正直言うと、その度に僕は又沖田さんを好きになっている。

あぁ、一日中ゆっくり一緒に居られる事なんか…ホント何週間ぶりだろ…

「…一緒に居たくない訳無いじゃないですか…銀さんが何て言っても…休み、もぎ取ってきますよ!」

力を込めてそう言うと、顔を上げた沖田さんがにっこりと笑う。
うわぁ〜…キレイ…

「おう!楽しみにしてまさァ。」

「はい、僕も。」

ぎゅう、と抱きしめられると力が湧いてくる。
沖田さんもそうだったら良いのに。
ちゅう、とほっぺたにキスを贈ると、とびっきりの笑顔を見せてくれる。

「今日もお仕事頑張って下さいね?」

「おう!新八くんのきっすで無敵状態でさァ…続きは明日な。」

ニヤリと笑って、振り返って行ってしまう。
つっ…続きって…何されるんだ、僕…



ドキドキしながらも万事屋に出勤して、開口一番明日の休みを申請する。

「銀さんっ!僕、明日休みを頂きたく…」

「あ〜、沖田君非番?何?デート?」

ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながらからかわれるけど…
それぐらいで怯むかよっ!!

「そうですっ!デートですっ!!」

フン、と鼻息も荒く言いきると、銀さんの目が少しだけ優しくなる。

「暫くぶりだもんな〜、良いよ、明日は新八休みな。」

…なんだろ…やけにあっさり…
でも良かった!もっとゴネられるかと思った。

「有難う御座います!」

「お〜、んじゃ俺も安心して…」

…?何を安心するんだろ?
あ!糖分か!?糖分を過剰摂取する気か!?
…神楽ちゃんにちゃんと注意しとかなきゃ…
でもまぁ、なんだかんだ言って銀さんは僕の味方してくれるよな…
有難いよね。

明日が楽しみ過ぎて、ソワソワしながら家事をこなしていると、いつもと違う僕に気付いたのか、神楽ちゃんが怪訝な顔で僕を見る。
危ない危ない!
神楽ちゃんにバレたら邪魔されちゃうよ。
なんであんなに仲悪いんだろ…沖田さんと神楽ちゃん…
一回沖田さんに聞いてみたら、

『新八くんは知らなくて良いんでさァ。』

とか言われたけど気になるよね。
神楽ちゃんは、

『ライバルに決まってるネ!』

とか言うし…
もうちょっとだけ仲良くしてくれないかな…沢山は嫌だけど…

「新八…何か機嫌良いアル…」

「そっ…そんな事無いよ?いつも通りだよ?」

ちょっとどもっちゃったけど、バレてないよね…?
嫌な汗が背中を流れていくけど、引きつった笑顔を浮かべる。
じーっと僕を見ていた神楽ちゃんが、ニヤリと嫌な笑顔を浮かべる。
なっ…バレ…

「新八ぃ、昨夜はお楽しみだったアルカ〜?程々にしないと銀ちゃんみたいなタダレタ大人になるネ〜」

「そっ…そんな事…」

「照れんなヨ。銀ちゃんも昨夜お泊りだったネ。ウチの男どもはタダレテるアル。」

はぁ〜っと溜息を吐かれて肩をすくめられる。
…そんなんじゃないけど…でも…
神楽ちゃんがちょっとだけ沖田さんを認めてくれたのかな…なんて…ちょっとだけ嬉しくなった。