そろーり、と両手を上げて、左右に二人が見える位置に移動すると、両側から二人がじりじりと俺に近付いてくる。
…あれ…?何か楽しかったっ出来事が脳裏に甦ってる…
あれ?これもしかして走馬灯…!?

「さくらちゃん!ほんとうにやまざきさんのおよめさんになっちゃうの!?」

あー…風樹くん泣きそうだ…

「そんなわけあるかィ。そういっといたらケーキかってきてくれるだろ?ふーきにもやるからな!」

「うん!ありがとうさくらちゃん!」

二人は凄く嬉しそうに手を繋いでニコニコ笑ってるけど…
ケーキの為に俺は死ぬのか…?

「でも、やまざきさんちょっとかわいそう…」

あぁ…風樹くんは良い子だな…
ビジュアルは沖田隊長なのに…そのまま真っ直ぐ育つんだよ…

「そんなことねェよ。だってたえねえちゃんとかぐらちゃんがいってたんでィ!よってくるおとこはつかえるだけつかえって。」

「そうなの?」

「おう!ちょっとかわいいかおしておねだりしたらなんでもかってくれるからしぼりとれって。」

「へぇ、べんきょうになるね!」

「かぶきちょうのじょうおうだからな!」

………子供に何教えてんだ!?
おっそろしい人達だな!!
俺がちょっと遠い目になると、ピタリと止まった新八君が赤くなる。

「なんか…すいません、山崎さん…」

「いやぁ…良いんだよ…」

反対側からは、沖田隊長の馬鹿笑いが聞こえる…
イラッとする。

「総悟さん笑わないっ!なんかもう…重ね重ねすみません…」

「いやぁ…良いよ良いよ…」

新八君が俺を素通りして沖田隊長をポカリと叩く。
命拾いしたけど…何か複雑な気分だ…

まぁ…良いけどね…

ははは…と乾いた笑いが自然と俺の口から出てくる。
安心したのと、虚しいのと…なんだか…

俺が呆然としていると、クイクイとズボンを引っ張られる…桜ちゃん…?
目線に合わせて俺がしゃがむと、そおっと近付いてきてこしょこしょと耳打ちしてくる…何だ…?

「まいにちケーキかってくれるんなら、ほんとにけっこんしてもいいよ?さくらきっとおかあさんみたいなびじんになるよ?」

「…へぇっ…!?」

驚いて桜ちゃんを見ると、赤い顔で恥ずかしそうに笑ってる…
え…?マジで…?
マジマジと桜ちゃんの顔を見つめたまま動けなくなった俺の頬に、ちゅっ、と可愛らしくキスまでくれた。

「えぇぇぇぇ!?」

思わず叫んでしまった俺を、他の三人が怪訝な顔で見るけど…
ほっぺチューはバレて無いらしい。

「おやじとおかーさんにはナイショでィ!」

唇に指を当ててにっこり笑った桜ちゃんは、新八君にそっくりで…

これはこれでアリかもしれない…なんて思ってしまった事は、誰にもナイショだ。


END


15萬打企画で紅兎さまにリクエスト頂きました
『沖田一家で山崎と桜のほのぼの』

まさかここの絡みを気に入って頂けるとは思っていなかったので、ちょっと張り切ってしまいました!
桜ちゃんはからかい半分甘え半分で山崎さんに絡んでいれば良いと思いました。
山崎さんは…お兄さんなのか、親戚のおじさんなのか…とにかく振り回されていれば良いと思いました。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
リクエスト有難う御座いました!