大江戸ストアを出ると、見慣れた傘をさしたピンクの三つ編みが見えた。

あ…神楽君もしかして迎えに来てくれたのかな…?
どうしよう…沖田さんと喧嘩になっちゃうかな?
でも、きっと大丈夫だよね?沖田さん今晩のおかずの豚肉持ってるし!
神楽君なら、お肉が駄目になるような事しないよね?

それに…いつも顔を合わせたら喧嘩してる2人だけど、本気でなんてしてないし。
挨拶みたいなものなのかな?

「神楽君!迎えに来てくれたの?」

私が声を掛けると、嬉しそうに振り向いた神楽君の顔が引きつる。
何…?

「テメードS!パチ恵に何してるネ!?」

一気に殺気が膨れ上がって叩きつけられる。
な…に…?
ぺたり、と腰が落ちて座り込んでしまう。
え…?
こんな神楽君…知らない…
本気の殺気なんて…知らない…

それを受けて、更に本気の殺気を叩きつける沖田さんも…知らない…

ドン…

ドン…

音だけが聞こえて、地面がめり込む。

あ…こんな所で…誰かが怪我したら…神楽君が悲しむよ…!
震える足をなんとか踏ん張って、立ち上がる。

「やっ…止めなさい神楽君っ!!沖田さんも…止めて!!」

声の限りに叫ぶと、2人の姿が私の前に立つ。

「パチ恵!何で止めるアルカ!?コイツがパチ恵を拘束してたから…」

「そんなんするかよ。恋人同士が手ェぐらい繋ぐのは当たり前だろィ。」

「は…?こい…びと…?」

神楽君の鮮やかな青い瞳が大きく見開かれる。
突然だったから…驚いたのかな…?
私でさえ驚いたんだし…当然だよね。

「神楽君、あのね、さっき…」

ちょっと照れながら私が言うと、物凄く悲しそうな瞳で神楽君が私の腕を掴む。
え…?

「パチ恵…そんな事無いよナ!ドSが勝手に言ってるだけだよナ!!」

「え…?あの…神楽君…?」

「パチ恵はオレの奥さんアル!銀ちゃんにもドSにも…誰にも渡さないアル!!」

そう言って、ぎゅーっと抱きしめられると、固い胸に心臓が跳ねる。
弟だって思ってたのに…こんなの…男の人だよ…っ…
どうしよう…顔に血が上ってくる…

「パチ恵はオレが好きアル!オレは…パチ恵が好きだ…!本気で…好きだ…!!」

「神楽君…」

「弟なんかじゃ無いネ!ちゃんと…オレを見るヨロシ!」

真剣な瞳が近付いてくる…って…え…?
危うく唇が重なりそうになる手前で、沖田さんが私を引いてくれる。

…あ…っ…危なかった!!

「テメェ…エセチャイナ…俺のパチ恵に何するつもりでィ…殺すぜ?」

「誰がオマエのネ!?パチ恵はオレのだ!!」

「パチ恵ちゃん!さっき『だいすき』って言ってくれたよねィ?俺の…パチ恵ちゃんだよな…?」

「パチ恵!パチ恵はオレが好きアルナ!?ずっとずっと一緒だよナ!!」

真剣過ぎて怖いくらいの4つの瞳がジッと私を見る。

…なっ…何、この状況!?
何でこんなイキナリモテモテなの私!?

それも…2人とも…大事な人なんて…
どちらかを選んだら…どちらかを傷付けてしまう…なんて…
そんなの…出来ないよ…
『スキ』の種類は違うけど…でも…どっちも傷付けたくなんて…ないよ…
どっちも大切な人だもん…

「そ…んなの…2人とも…好きだよ…?だいすき…だから…どっちかなんて…言えないよ…」

凄くズルい事…言ってるよね…
呆れられる…かな…
もう…逢いに来てくれないかもしれないけど…でも…大切だから…傷付けたくないよ…

「そんな事聞いて無いアル!オレだけのパチ恵になれヨ!」

神楽君…そんな事…想ってくれてたんだね…
でも…でも…

自然と頭が下がって俯いてしまう。
どうしよう…どうしよう…

「パチ恵ちゃんがちゃんと決められねェのは、俺らがまだまだだって事だろィ。なぁ?」

ぐしゃぐしゃと頭を撫でる手は、酷く優しい。
沖田さ…ん…?

「すぐに、優しいパチ恵ちゃんでも我慢出来ねェぐらい俺に惚れさせてやらァ。期待してなせェ。」

ニヤリと笑う顔は、大人の男の人の顔で…

「ハン!オマエの出る幕はないアル。さっさと諦めるヨロシ。」

上から目線で言ってる姿は、可愛いだけだよ…?

「…ごめんなさい…有難う…もう少しだけ…時間が欲しいの…」

私が言うと、はぁ、と溜息を吐かれてしまう。

「仕方ねェなァ、これも惚れた弱みでィ。」

「ホント、パチ恵は仕方無いネ。」

私が持っていた荷物を神楽君が持って、両側から手を繋がれる。
その手が温かくって…泣きたくなった。
もう少しだけ…もう少しだけこのままで…

もう少しだけ、私に時間を下さい…


END


15萬打企画で新羅さまにリクエスト頂きました

『沖→♀新←♂神で♀新争奪マジバトルをする二人とどっちも好きで保留にしてもらう♀新』

…すみません、これで限界です。
スゲェビッチなパチ恵にしてやるぜ、げへへへへ、とか思っていたんですが…
パチ恵に幻想見ているみたいです、ワタシ…

少しでも楽しんで頂けたら…良いなと思いました。
リクエスト有難う御座いました!