その後近藤さんは、お屋敷で働いている方達を紹介してくれて、私がこれからしなければいけない仕事を一通り教えてくれた。
…確かに…お給料良いだけはあるよ…大変そう…
でも、頑張ろう!
私が出来る事が、ここには有るかもしれないから。

お屋敷の掃除をして、晩ご飯の給仕をして、夜でもずっと仕事をしている総悟様にお茶をお淹れして。
…あれからずっとお仕事していたのかな…?
延々と難しい顔で書類を読んで、パソコンで何かやっているけど…お身体は大丈夫なのかな…?
心配…だよ…
そっと部屋の隅に控えていると、近藤さんがやってきて交代してくれる。

「パチ恵ちゃん、もう部屋に戻って良いよ。後は俺に任せてくれ。」

「はい。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

「おやすみなせェ。」

総悟様の仕事の邪魔をしないようにこそっと話をしていた筈なのに、声を掛けてくれるなんて…なんだか申し訳ないけど嬉しい。
そんな気遣いをしてくれるなんて…素敵な方…だよな…

私に宛がわれた部屋に帰って、お風呂に入って寝間着に着替えると、急に眠気が襲って来る。
今日はいっぱい働いたから疲れたなぁ…
一時はどうなる事かと思ったけど、皆良い人ばっかりで良かった!
きっとここなら上手くやっていける様な気がする!

…うん…明日も…頑張ろう…!



ふと夜中に目が覚めると、目の前一面に綺麗な蒼…

な…に…?

状況を把握出来ないでいると、何かが私の口を塞ぐ。
柔らかくて…温かくて…
気持ち良いけど、息苦しくて…
息を吸おうと口を開けると、何かが入ってきて一層苦しくなる。

何…が…?

頭を振ろうとすると、何かに抑えられる。

腕で除けようとしても、何かが抑えていて…動けない!?

まさか!これが噂の金縛り!?

こっ…怖いよぅ…
カタカタと震えると、私を抑えていた何かが離れて、優しい手がそっと頬を撫でてくれる…
誰…?お化け…?

暗闇に慣れた目でじっと目を凝らすと、綺麗な髪と…綺麗な顔が優しげに微笑んでいるのが見える…って!?

「総悟様っ!?えっ!?あのっ…」

なんでココに…?
って、一緒に寝て…るし…さっきのは…もしかして…きす…?

「何さっさと寝てるんでィ。お前さんが寝んのは俺のベッドの中だろィ?」

ニヤリ、と笑って又ちゅうと唇を吸われる。
え…?あれ…?
本当に…そんな仕事…しなくちゃいけないの…?

「そんな…私…そんな事出来な…」

起きあがろうとすると、ベッドに押し付けられる。
そんな…の…

「そんな事、ってどんな事想像してるんで?やーらし。」

意地悪な笑顔で見降ろされたら…心臓がドキドキする…
綺麗な笑顔もドキドキするけど、こんな顔もカッコいいとか…綺麗な男性はズルイ…よ…

「これも仕事…なんですか…?」

そうだとしたら…私は何も言えない…
仕事なら…嫌だって言えない…
でも…きすは…嫌じゃなかった…

じっと総悟様の綺麗な蒼い瞳を見つめると、はぁ、と大きな溜息を吐かれる。

「んなモン仕事な訳無ェだろィ…判んねェかな…」

暗くて間違ってるかもしれないけど…総悟様…赤くなって…る…?
え…?何で…?私何か変な事言ったかな…?

「俺ァ…お前さんにヒトメボレ…したんでィ…」

ヒトメボレ…?
あぁ、あれ美味しい…って…えぇぇぇぇっ!?
わっ…わたっ…私ぃぃぃぃぃぃっ!?

「あっ…あのっ…私っ…!」

「断るのは止めてくれィ。俺ァガラスのSなんでィ。」

「えっ…あの…ふわわわわわわっ!?」

わたわたしていると、ぽすり、と、むっ…胸に顔を埋められたぁぁぁぁぁぁっ!?

「そっ…そそそそそ…!」

「まだ何もしねェから…抱き枕になれよ…やーらかくてきもち…」

「何もしないって!…きっ…キスしたもん…」

「んー…パワハラパワハラ…」

最低な事言ってるよ!この王子様っ!!
なんとか気を取り直して、押しのけようと肩に手をかけるとすぅすぅと寝息が聞こえる。
え!?もう寝てるのコノ人!?
そーっと覗き込んでみると、安心しきったようなあどけない寝顔…

どっ…どうしよう…ドキドキし過ぎて泣きそう…
抱きしめて…きす…したい…
私…も…この人の事が…好き…なのかな…?
そう思ってしまったら、心臓がぎゅうってなって、胸が苦しい。

私…すき…なんだ…
優しい笑顔が、真剣な瞳が、意地悪な笑いが、頭に浮かぶ度に胸がぎゅうっと苦しくなる。

でも…この人は…雇い主で…お金持ちで…
そんなの、許される筈が無い。

せめて今、胸の中ですうすうと寝息を立てる人を抱きしめる。
それだけで、愛しくて、幸せで…
私はそのまま眠りについた。



朝、目が覚めるとそこに総悟様は居なくって。
身支度を整えて仕事を始めると、すぐに総悟様に逢ってしまう。
どうしたら…って不安に思っていたのに、顔を合わせると、昨日のままで…

…あれ…?夢…だったのかな…?

ちょっと恥ずかしくなってあわあわしていると、目の前に総悟様が立っていた。

「どうかしましたか…?」

「いや、お前さんがどうしたんでィ。」

うわぁ!挙動不審だった!?

「あっ…あのっ…何でもありませんっ!何でもっ!!」

ぱたぱたと手を動かすと、にこり、と笑ってズイッと近付いてくる。

「何でィ、俺の事意識してくれてんじゃねェのか。今晩はちゅーより凄い事しなきゃ駄目かねィ…」

「へぇぇっ!?」

夢じゃ…無かった…?
慌てて顔を上げると、又ちゅっとキスされて…

「ぱっ…パワハラ反対っ!!」

「愛情表現でさァ。」

にっこりと笑われると、絆されそうになるよぅっ!
でも…そんな訳には…いかない…よね…

「お前さんが『好き』って言うまでガンガン攻める事に決めやしたから、覚悟しなせェ。」

「そんな事っ…言いません!!」

「言うね絶対。言わせてみせらァ。」

「言いませんっ!」



…それから、私の大変で大騒ぎで…幸せな日々が、始まった。


END




15萬打企画で匿名様にリクエスト頂きました

『お金持ち沖田×メイド女新の慣れ染め』

でした。
ごっさ長くなってしまいましたが…
メイド女新は書いてみたい話だったので、かなりノリノリでした!
お屋敷で働く人々が真選組の面々だったり…とかも考えたんですが、近藤さんしか出せませんでした。
そんな絡みで、続き、書いてみたい1本です。

リクエスト有難う御座いました!