あつあつ



何故か総悟君が、又こっちに来てしまいました。
僕は、もう1回総悟君に逢えてすっごく嬉しいんですが…今回もすぐ帰っちゃうのかなぁ…ちょっと寂しいです。

こっちに居る間は、辛くないご飯を食べさせてあげられるんで、メニューを色々考えちゃいます。
毎回一緒、ってのも芸がないし…今日はお鍋にしてみました!
野菜もお肉もお魚も、バランス良く食べて欲しいからねっ!ちょっと寒くなってきた所だし…
総悟君に、今日はお鍋だよ、って言ったらすっごく喜んでくれました。
なので、早く帰ってきた総悟さんと3人で、お鍋を囲んでいます。

「新八ィ〜!俺ァ、肉と肉と肉と…」

総悟さんが、取り皿を僕に差出して満面の笑顔で言う。
…子供かよ…

「何してんですか、良い大人がっ!自分で取って下さい!…総悟君何が好き?あ、でもお野菜も食べなきゃ駄目だよ?」

僕が総悟君の取り皿を持ってバランスよく詰めていくと、総悟君がにっこりと笑う。

「おれ、なんでも食べれるよ!しんぱちのりょーりはおいしいからだいすき!」

あー、もぅ可愛いなぁっ!
よし、お肉大盛りにしてあげようっ!!

「チッ、何でィ良い子ぶりやがって…俺なんだから、野菜なんざ食わねぇに決まってらぁ。」

総悟さんが、じろりと総悟君を睨んで、空の取り皿を箸でチンチンと叩く。

「もぅ!総悟さんっ!何お行儀の悪い事してるんですかっ!!大人なんだからちゃんと自分で取って下さいっ!…はい、総悟君。お肉山盛りだよ?」

僕が山盛りの取り皿を、ことん、と前に置くと、えへへと笑った総悟君が、ぱしん、と手を合わせて、いただきまーす!と食べ始める。

…こんな良い子なのに…どこでひねくれ曲ったんだろ…

「新八は冷たいねィ…新婚夫婦とは思えねェや。普通は『はい、あ〜ん(はあと)』とかしてくれるんじゃあねェのかィ…」

総悟さんがぶつぶつ言って、イジケ始める。
…めんどくさいなぁ、もぅ…

「はい、あーん…」

仕方ないんで、鍋から1個取って差し出すと、ぱぁっ、と音でもしそうに微笑んで、大きく口を開ける。
僕が掴んだ物をぽいっ、と口に入れると、総悟さんの笑顔が固まる。

「はづっ!はづっ!はづっ!ほーふは無いれさぁ!」

大慌てで口の中の物を噛んで、ごくりと飲み込む。
…流石に豆腐直喰いは酷かったかなぁ…

「総悟君、ちゃんとふぅ〜、ってして食べるんだよ?熱いからね?」

「だいじょうぶ!ちゃんとふー、ってさましてたべてる!」

綺麗に小さくしてから、はくりと食べてにっこり笑う。
うーん…やっぱりお行儀良いや…どこでこんなに…

「新八ィ!酷いでさぁ!鍋から直に取った豆腐は熱すぎまさぁ!箸使いは上手ェけどな!」

「あー、すみません。あんまり煩いんで…」

「う…煩いって…酷いでさぁ!DVだ!DVだ!!」

「だからすいませんってば。」

総悟さんが涙目でぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる…ほんと、何でこんな人になっちゃったんだろ…

「おとななのにうるさいよ、おれ。おれはこんなおとなにはならないよ!じぶんだけどなさけないよ。」

だまってもくもくとお鍋を食べてた総悟君が、軽蔑の眼差しで総悟さんを見る。

「煩ェよ、可愛げのねェガキでィ…俺がちっせぇ頃は、もっと可愛かったぜ?」

「おっさんのちいさいころがおれだい!」

…はーっ、流石総悟さん。小さい頃から口じゃ負けない…って!
総悟さん目がマジ目がマジっ!家の中で子供相手に抜刀はやめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!

「総悟さんっ!子供相手に大人気無いっ!総悟君を斬るなら僕盾になりますよ?」

僕が総悟君の前に出ると、だだ漏れだったすっごい殺気を納めて、しぶしぶ刀を鞘に納める。

「新八斬るなら刀はいらねぇや。後で俺の愛刀でイヤっちゅう程斬ってやらぁ。」

総悟さんがニヤリといやらしい笑いを浮かべる。
…それって…えっちな意味でしょ!?このオヤジっ!

「バっ…カも休み休み言って下さいっ!子供の前で何言ってんですかっ!しませんからね!ぜっっっっったいしませんからねっ!」

「する、って何するつもりなんですかィ?俺ァそんな事ァなんも言ってやせんぜ?」

ニヤニヤ笑いやがって、ちくしょう…

「…そんな事言うなら、総悟さん今日は1人で寝て下さいね?僕は総悟君と寝ますから。部屋、入ってこないで下さいね?」

僕が赤くなりながら、絶対零度の笑顔で言うと、総悟さんがびくっ、とする。

「いっ…嫌でさぁ!なんで新婚夫婦が寝室を別にするんでィ!!ごめんなさい!」

「分かればよろしい。」

…そういう所は素直だよね…
僕が言うと、しゅん、として大人しく鍋をつつく。

「しんぱちぃ、おれしんぱちのぶん取ってあげたぜ!はい!肉やまもりだぜっ!」

総悟君が、いつの間にか僕の取り皿にホントに山盛りお鍋を取り分けてくれて、誇らしげにはいっ!と差出す。

「有難う、総悟君。いただきます!」

僕が食べ始めると、にこにこ笑って僕が食べるのを見てる。
あ〜!もぅ可愛いなぁっ!!

僕らがお互いお鍋の中身をよそいあってると、総悟さんが下を向いて白菜をつついてる…
ちょっと可哀想だったかな…

「はい、お皿出して下さい?総悟さんは何食べたいですか?」

僕が笑いながら手を差し出すと、満面の笑顔で顔を上げて、取り皿を差し出す。

「肉ー!肉と魚と…熱くない豆腐も欲しいでさぁ!」

僕がリクエスト通りによそって、ふー、って冷まして渡すと、にっこりと笑ってもくもくと食べる。
もぅ…そんな顔で笑われたら、さっきまでの意地悪な自分を反省しちゃうよ…ごめんね、総悟さん…

それからはお互いよそいあって楽しく鍋を囲む。
総悟君によそってもらった総悟さん、妙に緊張してて…可愛かった!
普通のお鍋だけど、2人の笑顔が有るから、何倍も美味しく感じたよ。

ふふっ、2人とも、大好きですよ?
言葉には出しませんけど。


END



壱萬打フリリク有難うございました!!
『沖田→新八←子沖で家族もの』でした。
家族ってぇと、鍋、ってイメージが有ります。こぅ、仲良くつついてたりとか…
少しでも気に入って頂けると嬉しいです…