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男達が夜這いに来なくなって、坂田家にもやっと平穏な夜がやって来ました。
姉2人も新八も、久し振りにぐっすりと寝る事が出来る事を喜び、早々に床につきました。
しかし、そこにひっそりと男が1人やってきました。
綺麗な栗色の髪をしたその男は、最近兵隊長や密偵が骨抜きにされていると言う美しい姫の噂を聞いてこっそり見物に来た帝その人でした。
するりと姫の寝所に滑り込んだ帝が姫の寝顔を覗き見ると、その姫は帝のドストライクでした。
吸い込まれるように可憐な姫の唇を奪うと、何故かソレは甘いような気がしました。
そうなると、もう帝は止まりません。
途中で目覚めた姫ににっこりと綺麗な笑顔を見せて、うっとりとした隙に最後まで致してしまいました。
「なっ…なっ…なっ…何すんだアンタァァァ!!」
「何でィ新八くんだって気持ち良さそうにあんあん言ってたじゃねェか…」
「うっさいバカ!何で初対面の…それも男に初めてを奪われなきゃ…」
「え?俺の事知らねェ?結構有名だと思ってやしたが…俺もまだまだですねィ…」
少しだけ顔を引き締めて肩をすくめる姿に新八はドキリとしましたが、ふるふると頭を振って正気を取り戻しました。
「誰ですか?役者さんですか?」
「イヤ、俺ァ…」
男が身分を明かそうとした所に、バタバタと足音を鳴らして新八の部屋に姉2人が飛び込んできました。
そしてすぐに全裸で横たわる2人を見とめると、その怒りは頂点に達しました。
「ちょっとアナタ、大切な新ちゃんに何してくれてんだゴラ…」
「新八に手ぇ出して、生きて帰れると思うなヨ…?」
バキリボキリと指を鳴らしつつジリジリと近付く2人に、新八は慌てて布団をかぶりますが、侵入者は気にせずニヤリと笑いかけます。
「なんでィヤキモチかィ?なんなら3人纏めて相手してやっても良いぜ?」
その不敵な笑い方に、姉2人は見覚えが有るような気がしてもう1度じっとその顔を見つめました。
それを見た新八は、何故か胸が痛くなってその侵入者に抱きついてしまいました。
「お?ヤキモチですかィ新八ィ…可愛いねィ。」
新八を抱き返して幸せそうに笑う男に、神楽がポンと手を叩きました。
「姐御、コイツ…」
「まさか…帝…?」
「おう。俺ァ今帝やってる沖田って言いまさァ。」
「エェェェェェ!?帝ォォォォ!?来ちゃったよ!ホントに帝来ちゃったよ!!」
坂田家はプチパニックです。
しかし、姉2人はすぐに普段通りに戻りました。
新八もあわあわしていましたが、帝の笑顔と温もりでだんだんと落ち着いて幸せな気分になっていきました。
「貴方も新ちゃんに求婚にいらしたの?」
「ん?土方さんと山崎が骨抜きにされてる美姫の面拝みに来たんですがねィ…惚れちまいやした。明日迎えに来やすから、新八くん俺の嫁になりなせィ。」
ちゅう、と口付けされると新八は頷いてしまいそうになりました。
しかし、それは無理な話なのです。
「それは…だって僕は男ですよ…?」
「そんなん知ってらァ。さっき、たっくさん可愛がってやったじゃねェか。」
いやらしくニヤニヤと笑う顔ですら、新八には格好良く見えてしまいます。
もう、帝ずっと一緒に居たくて堪りません。
新八も、帝の顔はドストライクだったのです。
だからこそ、最後まで致してしまったのです。
「だったら…僕がお嫁さんになれない事ぐらい…」
「そんな事ァ関係有りやせん。俺ァ新八くんが良い。新八君しかいらねェ。」
そんな事を言われて更にきつく抱きしめられると、もう新八は抗えませんでした。
「本当に…?僕で良いんですか…?」
「勿論。俺ァ新八くんが良いんでさァ。」
「嬉しいです…僕を帝のお嫁さんにして下さい…」
新八からも口付けを送ると、帝は更に嬉しそうに笑って新八の頬を優しく撫でました。
「新八くん違いまさァ…俺は総悟でィ…」
「そうごさん…」
新八の部屋から甘い雰囲気が立ち上り始めました。
姉2人はそーっと退出して、にやぁりと笑いました。
これで父が居なくても坂田家は安泰です。
…何より新八が本気で好いた男と結ばれた事が嬉しかったのです…と言う事にしておきます。
次の日すぐに帝の迎えがやってきましたが、新八は竹林の家に残る事にしました。
やはり、男である自分が帝の妻となり宮廷に住まうのはどうしても気が引けたのです。
それからは毎日帝が新八に逢いにやってきて、2人は仲睦まじく暮らしておりました…
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そして3年の月日が流れても、帝と新八は仲睦まじく想いあっておりました。
しかし、最近新八の様子がおかしいのです。
月を眺めては、帝の胸でほろほろと泣き崩れるのです。
何故かと聞いても答えはしないまま、ただほろほろと泣くのです。
困ってしまった帝は、姉達に頼んで新八に訳を聞いてもらいました。
何故か新八はボロ雑巾のようになりましたが、新八の様子がおかしくなった訳は判りました。
竹から産まれた新八は、実は月からやってきた人間で、もうすぐ迎えが来るのだと言うのです。
それを聞いた帝は、兵隊達を屋敷の周りに配して、月からの迎えを撃退しようとしました。
その日の晩、月から沢山の人間と馬車が降りてきたのを見付けると兵士達はすぐに攻撃を始めましたが、弓矢も刀もその人間達には届きません。
その上、兵士達はバタバタと倒れ込み、みんな眠ってしまいました。
勿論、帝も2人の姉達も倒れ込み、どんなに起きようとしても目は自然と瞑ってしまいます。
「新八ィ…」
「総悟さん…!嫌だ!僕は帰りたく無い!!」
「我儘言わないでよ新八君。連れて帰らないと俺困るよー」
何故かサングラスに咥え煙草のおっさんが新八に泣き付きます。
その男を中心に沢山の女官が新八を囲んで馬車に押し込んでしまいました。
「か…えせ…」
帝も姉達も最後まで眠気に耐えましたが、遂にはバタバタと倒れ込んで眠ってしまいました。
「総悟さん!姉上!!神楽ちゃん!!!」
馬車の窓からなんとか顔を出した新八が叫びますが、その声はもう届きません。
ふわりと馬車が浮かび、一行は月へと向かいます。
「「しぇこむぅ〜してますか〜?」」
その声と共に、衝撃が馬車を襲って地上に引き戻されます。
慌てて様子を見に外に出た女官が空を飛びました。
そして、次々と女官が空を飛び、遂にはサングラスの男も空を飛びました。
その様子が恐ろしくてそろりと外を覗いた新八は、思わず笑ってしまいました。
瞼の上に目玉を描いた帝と神楽が、眠ったまま月のお迎えを撃退していたのです。
すぐに馬車から飛び出た新八は、2人に飛びついてぎゅうっと抱きしめました。
「僕を守ってくれて有難う御座います、総悟さん、神楽ちゃん。でも、その顔はちょっと面白いですよ…?」
新八がくすくすと笑っていると2人も新八を抱きしめ返し、しかしお互いには片手で殴り合っておりました。
「こんな事されたんじゃ堪ったもんじゃないよ新八くん!そんなにここが良いなら一生こんなへんぴな惑星で過ごすが良いよ!!」
月のお迎えは、捨てゼリフを残して去っていきました。
もう、新八を迎えに来る気は無いようです。
そうして大好きな人達の元に残る事が出来た新八は、いつまでも帝と姉達と幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
END
二拾萬打企画で心さまにリクエスト頂きました
なんちゃってかぐや姫は、次辺り書こうかと思っていた素材だったりしました
そして元々求婚者の記述があまりハッキリしていないので、短くなってしまいましたが…神威高杉はちょっと力入りました
少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです
この度はリクエスト有難う御座いました!
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