数日後、僕は久し振りの任務が有って、いつものチームで里を離れる事になった。
要人の護衛という、ランクの高い任務は初めてかもしれない…
僕らが今回お守りする女性はとても綺麗な方で、少し御屋形様に似ているかもしれない。
いかにもな護衛だと逆に目立つという事で、僕と銀さんは女装することになった。
普段ならば似合わない女装をする所だけど、僕はここ最近ですっかり慣れてしまっているので変化の術で任務にあたった。
…こんな所で御屋形様の酔狂が役に立つとは…何事も無駄な事というのは無いんだな…
折角なんで僕が要人の女性に変化して、彼女には変装してもらって目的地まで行く事にした。
だから、案の定敵が襲って来た時も僕らは少し余裕を持っていた。
それが油断に繋がったのだろうか…?
上手い具合に倒したと思っていた敵が、いきなり警護の方に襲いかかってくるなんて…それもまさか大技を使って要人に襲いかかってくるなんて…!
銀さんと神楽ちゃんは他の敵と戦っている最中で、僕が走っても間に合わない!
なんとかしなくちゃと思った時に、御屋形様の術を思い出す。
『他装変化の術はねィ、分身にそれぞれ別の変化をさせるのが基本なんでさァ。そいつを変化させたいヤツに飛ばす感じで…』
…出来る…かも…
こいつら彼女を殺すつもりはないようだし…生かしたまま攫う気なんだろう。
なら、皆彼女になったら…
分身を彼女に変化させた感じで…銀さんと神楽ちゃんと要人に飛ばす…!
と、3人とも彼女の姿に変化する…出来た…!
急に全員が同じ姿になり、彼女を襲おうとした敵が一瞬戸惑う。
その隙に僕は彼女を連れて離脱して、銀さんと神楽ちゃんが全員を倒した。
「新八ぃー!どうしたネ、この術かっけー!」
「おいおい、いつの間にこんな術…」
驚きと喜びで駆け寄ってきた2人はもう元の姿に戻っていたけど、僕は自分でやった事が信じられなくてジッと手を見ていた。
「コレ…御屋形様の術で…アレは…修行だったんだ…」
「えー…アイツの術アルカ?じゃぁロクなもんじゃないネ。」
「ちょ!新ちゃんバイトってアイツのトコだったの!?銀さんちゃんと任務取ってくるから辞めなさい、そんなトコ!」
「そうネ!アイツのトコなんてさっさと辞めるヨロシ!」
2人が口を揃えて辞めろというけど、そんな事出来ないよ!
大体、僕が辞めたくない。
もう御屋形様と逢えなくなるなんて…胸がつぶれそうだ…
「ヤです!ウチがあんまり貧乏だったから御屋形様と近藤様が下さった仕事なんですよ?辞めるだなんて出来ません!御屋形様と離れたくありません!」
この2人は何故か御屋形様に良い感情を持ってないからそんな事言うんだ!
なんだかんだで立派な方なんだから!
そりゃぁ、書類仕事は苦手だし、休憩は多いし、好き嫌いばっかりしてるし、お菓子ばっかり食べて子供みたいだし、土方様への嫌がらせは命に関わるレベルだし、服装の趣味はアレだけど!
でも、術だって戦闘だって素晴らしい腕だし、色んな事をちゃんと見てるし、色男だし、スタイルだっていいし、寝顔は可愛いし、甘えて膝枕とかしてる時はきゅんてするし、僕を褒めてくれる時は頭撫でてくれて凄い気持ちいいし、可愛いって言われたらドキドキするし…ってアレ?
なんかコレって恋する女の子みたいじゃ…
って、恋ィィィ!?
僕が恐ろしい考えになって、顔に血を昇らせてアワアワしていると、要人の彼女がポン、と手を打つ。
「新八さんは御屋形様の事がお好きなんですね?」
うふふと笑ってそんな事を言う彼女は綺麗だけど!綺麗だけどォォォ!!
「そっ…そんな事は…っ!いえ、御屋形様の事は尊敬してますが!お慕いしていますが!そう言う意味では…!」
「あら、私もそんな事言ってませんよ?新八さんお顔が真っ赤…可愛い。」
あぁぁぁぁそんなぁぁぁ僕は…僕はぁぁぁぁ!
自分が分からなくなってぐるぐるしていると、彼女が近付いて来て僕にそっと囁いた。
「そーちゃんは新八さんの事が好きよ?新八さんもそーちゃんの事好きになってくれると嬉しいわ。」
うふふ、と綺麗に笑う顔が御屋形様の笑顔と重なる。
ヤバい…僕は…僕は………
無事任務を終えて里に帰ると、すぐにお屋敷から呼び出しがかかる。
久し振りに拝見する御屋形様は、なんかキラキラ光ってて、バックに花が見える…
あの女性がおかしな事を言うからだ!
僕の心臓はドキドキと早鐘を打って煩くてしょうがない。
その上顔に血が上ってくるし、頭がぼーっとしてくる…
「新八くん、任務ご苦労様。姉上が褒めてやしたぜ?『他装変化の術』でピンチを回避したんだって?」
「はい!僕出来ました!…って姉上…?」
「へー、案外早く出来たんだねィ、やっぱ術使うのが向いてんな、新八くんは…」
なんか真剣な顔で考え事してるけど!まさか!『そーちゃん』って…御屋形様…?そう言えば、御屋形様は『ソウゴ』…
それに、御屋形様に似てるな、って思う容姿だったぞ、彼女…
「じゃぁもっと術磨いてそっちに特化していきやすか。あ?警護する要人の名前ぐらい聞いてねェのか?あの女性は俺の姉上でさァ。」
真剣な顔を不機嫌に歪めて僕を見る。
そんな顔までカッコ良いと思ってしまった瞬間、僕は恋に落ちた。
…イヤ、本当はもうとっくに落ちていた。
「これからもちゃんと修行つけてやるから毎日通って来いよ?旨い茶ァ淹れに。」
そのままニコリと笑った顔を向けられると、僕は腰が抜けそうになる…可愛いぃぃぃぃぃ!
この気持ちに気付いてしまったら、もう僕は止まらない。
ずっと、ずぅーっとこの人の隣に居たい!
毎日大好きな人の笑顔が見たい!
それが出来るなんて、僕は世界一の幸せ者だ!!
そしていつか…いつかこの人の片腕になって…総悟さん、とか呼べたら…僕はきっと天にも昇ってしまうに違いない。
「新八くーん、そろそろ戻ってきなせェ。いつもの旨ェ茶淹れてくれよ。俺の為に愛を込めて。」
「はいっ!すぐに…って…愛…?」
「おう。たーっくさん込めて下せェよ?」
「…はいっ!」
名前を呼ばれただけでも腰が抜けそうなのに、そんな蕩けるような笑顔なんて反則だ!
その上、あっ…愛を込めろ…だなんて…
僕は、好きになって良いのかな…?
ずっとずっと一緒に居ても良いのかな…?
とにかくお茶をお持ちしようと、僕は台所に走った。
美味しいお茶を淹れなくちゃ!いっぱいいっぱい愛を込めて。
END
二拾萬打フリリクでリクエスト頂きました
忍者パロとか萌えるじゃありませんか!!
忍者モノはかなり好きです、ワタシ。
もっと色んな術とか考えたい感じでしたがラブがどっかに飛んでいくので辞めました…残念
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです
この度はリクエスト有難う御座いました!
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