あぁ、そうだよね…
バカイザーが私をそういう風に見るなんて有り得ないよね…
なんでこんなにショックなんだろう…そんなの当たり前のことなのに…
私は…きっとバカイザーの事好きになってたんだ…優しかったもん…この世界で唯一私が居て良い場所だったもん…
「パチ恵、結婚するぞ。」
「へ…?あの…誰が…?」
「ここに居るのは我とオマエだけだろう?やっぱり阿呆だな。」
晴れやかに笑う顔はやっぱりカッコいいけど…
しよう、じゃなくてするぞなんだ…決定事項なんだ…
どうしよう、嬉しくて顔が緩んでしまう。
「私の意見は無視ですか?もう、仕方ないんで結婚してあげます。監禁とかされそうな勢いですからね。」
「あぁ、我だけのモノだからな、もう逃がさん。すぐに式をするぞ。用意しろ。」
そう言って、バサリとマントを翻してバカイザーが私だけ残して部屋を出ていってしまう。
え…?用意って…?
私が呆然と扉を見つめていると、すぐにわらわらとメイドさん達が部屋に入ってきて私を取り囲む。
そのままお風呂に入れられて、綺麗なドレスを着せられて、綺麗に化粧を施されて…私は花嫁さんに仕立てられてしまった。
え…?すぐに、って…今日すぐに!?
「パチ恵、用意は出来たか?」
まだ呆然としていると、真っ白いスーツに着替えて、それでもいつものマントをはおったバカイザーが部屋に戻ってくる。
うわ…カッコいい…なのにマントなんだ…
「あの、式って結婚式なんですか…?今日!?今すぐに!?」
「勿論だ。ずっと想ってたんだからな…」
そう言うバカイザーは物凄く近くに居て…
「あっ…あの…近いです…」
「まだ遠い。もっと近くで…ヒトツになるぞ…」
私を見つめる瞳は潤んで色っぽくて…
「だって…結婚式…」
「大丈夫だ…招待客が集まるのは夕方だからな…時間はまだ有る…」
にやぁりと笑った顔は凄く綺麗だったけど…悪魔の頬笑みだった…
恐いぃぃぃ!
なんとか…なんとか逃げなきゃ…
「あのでもお化粧…!お化粧崩れますっ!」
「崩さない。」
「おっ…お風呂入ったし…」
「我の為か?」
「ドレスがっ…」
「脱がす。」
テキパキと外されていく金具、ちゃんと元通りに止められるのかな…
真剣な顔で、凄く熱い瞳で見つめられたら…これ以上は逃げられないよ…
「…あっ…あのっ………やさしく……して下さい…」
「それは保証出来ない。」
にっこりと微笑んだ顔は邪気のない凄く綺麗なモノだったのに恐くって…
私は本当に夕方まで離してもらえなかった。
「もう!どうするんですかっ!私歩けません!!」
「心配するな。ずっと抱いていってやる。」
「そんなのおかしいじゃないですか!」
「ラブラブっぷりを見せつけてやれば良い。」
「嫌です!嘘吐きっ!」
「嘘など何も言っておらぬが?」
…確かにバカイザーは嘘は言って無い。
お化粧は綺麗なままだし、ドレスも皺ひとつ無く元通りだ。
…優しくもしてくれなかったし…
「今迄何もしなかったのに、なんでいきなりこんな事…」
「言っただろう?デキ婚はしないと。だがもう結婚するのだから、デキても良いだろう?ちゃんと愛の告白をしたのだから、我がパチ恵を愛してる事ぐらいいかなオマエでも判るであろう?」
……あいのこくはく……?
いつそんな事…まさか、結婚するぞ、っていうのが…?
…この人らしいや…
思わず笑ってしまうと、イキナリ抱き上げられて、驚いた私はバカイザーに抱きついてしまった。
「それじゃぁ行くぞ。我らの愛を見せつけに。」
「はい、お供します。大好きな旦那様ですから。」
私がそう言って頬にキスすると、バカイザーはとても幸せそうに笑った。
彼は結婚式の間も、言った通りに私をずっと抱き上げていてくれた。
途中で襲いかかってきた銀さんや神楽ちゃんも、私を抱いたままでかわして護ってくれた。
今迄助けてくれなかったくせに、なんでこんな時に邪魔するんだろ…ってか神楽ちゃんも銀さんも元に戻ってない…?
でも、決めたんだから私はもう戻らない。
この人と一生を共に…
「絶対浮気しないで下さいね?」
「当たり前だ。我はオマエしか欲しくない。」
そうして誓ったキスは温かくて、幸せが溢れて来て私はカイザーに微笑みかけていた。
それなのに、驚いた顔で見るなんて酷いよ!
「共にいこう、朽ち果てるまで。」
「はい、貴方と共に。」
もう一度誓いのキスをして、私は一生を捧げる大切な人に微笑みかけた。
…まぁ、一生はそのすぐ後にハリセンを持った銀さんと土方さんに叩き壊されたんだけれど…
END
弐拾萬打企画でリクエスト頂きました。
甘ーく甘くと頑張りましたが、パチ恵ちゃんがいつもよりなんか厳しい気が…
カイザーは格好良く、と思ったんですが…なんか…こう…お馬鹿になった気が…
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
リクエスト有難う御座いました!
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