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スーパーで適当に買った弁当を食べて、俺達の好きなお笑い番組を観ててもなんだか意識しちまってぎこちなくなっちまう。
あー!畜生このまんまじゃ今晩もちそうにねェ…なんとか気を紛らわして…
「そーちゃんお風呂入ったよー!さくさく入っちゃってね。」
いつの間にか風呂に入って無防備に薄着になったパチ恵は今の俺にはもうマジで無理ってぐらい目の毒で。
いつも見てる筈だってェのに目が離せなくなっちまう…
「おー…」
気を紛らわすのと頭を冷やすのでいつもになくさっさと風呂に入ると、驚いたパチ恵が「嵐になる!」なんて言ったんで拳骨を一つ落としといた。
…セーフでィ…なんとなくいつもの雰囲気に戻った。
風呂から出て弁当と一緒に買ってきといたアイスを喰いながら居間に戻ると、パチ恵はソファに座ったままくうくうと寝ちまってた。
…ったく…俺が居んのに安心しきってんじゃねェよ…
…まぁ普通そうだろうな。
兄貴が邪な事考えてるなんて思わねェよな。
大きく溜息を吐いて気持ち良さそうに眠るパチ恵を見下ろす。
折角持ってきてやったアイス溶けちまう…柔らかそうな唇で喰ってんの見たか…って今日はマズイだろ俺!
ヤベ…意識したら唇から目が離れねェェェ!!
…ぐっすり眠ってるよな…起きねェよな…?
キスぐれェなら…兄弟でもする…よな…外国とか………
そっと柔らかい唇に俺の唇を寄せる。
ほんの触れるだけのキスでもスゲェ悪い事してる気になって、すぐに離れて乱暴に揺り起こす。
「オイ!こんな所で寝てんじゃねェぞパチ恵!!お前ェの分のアイスも喰っちまうぞ?」
結構デカイ声でそう言ってガクガクと揺すってるってェのにパチ恵は全然起きやがらねェ。
珍しい。よっぽど眠いんだねィ…
仕方ねェんで膝裏と背中に手を回して勢いをつけて抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこってやつでィ。
そのまま部屋まで運んでやろうとすると、ひゃぁ!と悲鳴を上げて俺にしがみついてくる。
…顔近ェよ…そんなんされたらヤバいんでィ!
「オイコラ。狸寝入りたァ感心しねェな。」
ソファに落としてやろうと両手を離したってェのにパチ恵はぎゅうぎゅうと俺に抱き付いたまま離れようとしない。
寝惚けてんのか…?
「パチ恵、下はソファだから痛く無ェよ?だからとっとと離せ眼鏡がうつる。」
ワザと憎まれ口きいてやってるってェのにパチ恵はふるふると首を振って離れない。
柔らけェほっぺたが触れて気持ちいんだよ!
「八恵、ちゃんと起きろ。何甘えてんでィ。」
ちゃんと名前で呼ぶ時は真面目に話をする時だ。
それでもパチ恵はふるふると首を振って離れようとしない。
「おい八恵、いい加減にしねェと怒りやすぜ…?」
力を込めて俺から離すと、真っ赤な顔で涙目で…何でィ…?
「…そーちゃん…なんで私に………キス…したの…?」
なっ…
まさか起きてたのか!?
ヤベェヤベェヤベェ…何て言い訳…
「は?何で俺がお前ェに…」
「したもん!柔らかかったもん!!」
駄目だ…言い逃れ出来ねェ…
でも、そう言ったパチ恵は嫌そうじゃなくて…むしろ嬉しそう…なんてのは俺の気のせいだ。
「…別に俺は…」
「私そーちゃんの好みになろうって頑張ったんだから!目が悪くなったのはお姉ちゃんの卵焼きのせいかもだけど!コンタクトにしないのはそーちゃんの為なんだからね!!」
「…は…?」
「おっぱいだって大きくなるように頑張ったんだから!体操とかしたんだよ?そーちゃんに女の子だって言ってもらえるように!!」
「…男じゃ無ェのは知ってらァ…」
「ちっちゃい頃お嫁さんにしてくれないって言われてからも私はずっとずーっとそーちゃんが好きなんだから!好みの女の子になったらお嫁さんにしてくれると思って頑張ってるんだから!!」
パチ恵の大きな瞳からポロリと涙が零れる。
そこまで言わせちまって…俺ァ…でもやっぱりこんな都合の良い事…そうやすやすと信じらんねェ…
「お前ェ…兄妹になってずっと一緒に居たいって言ってたじゃねェかよ…」
「それは!それでも一緒に居られるなら良いって思って…でもやっぱり好きなんだもん!」
「それにお前ェ毎朝飛び乗ってくるし…惚れた男に普通んな事しねェだろ…」
「だって!スキンシップが大切だって雑誌に書いてあったんだもん!…そーちゃんに触れたかったんだもん…」
「どこの雑誌だソレ…嘘でィ、信じんなそんなモン。」
俺が呆れた目で見てやるとパチ恵が真っ赤になって小さくなる。
そんな姿も可愛いけど…やっぱり俺ァパチ恵の全開の笑顔が一番好きだ。
そーっと優しく小さくなったままの身体を抱きしめると、パチ恵がビクリと震える。
「だまって抱かれてろィ。俺ァなぁ、初めて一緒に風呂に入ってお前ェが女だって判ってからずっと嫁にしねェって言った事後悔してたんでィ。」
「…え…」
「それなのに年々お前ェ俺好みになりやがって…だけどパチ恵は妹だし、兄貴として慕ってくれてると思ってたし、それを壊して悲しませたくないって思ってたんでィ。好きだなんて言ったらもう一緒には居られ無ェって思ってた…」
「…うん………え…?」
きょとん、と不思議そうに俺を見るのはなんでなんでィ。
喜べよパチ恵。
「好きだ、って言ってんでィ。判ってっか?妹としてじゃなくて嫁さんにしてェ好きだぜ?」
「…ほんとに…?そーちゃん本当に!?」
「おう。」
俺が笑ってやると、パチ恵もふんわりと幸せそうに笑ってキスをくれた。
「お前ェみてェな馬鹿相手にできんのは俺ぐれェしか居ねェだろ?仕方ねェから嫁に貰ってやらァ。勲兄みたいに稼いでちゃんと八恵を養えるようになったらちゃんと指輪用意してプロポーズしてやっから首洗って待ってろィ!」
俺がそう言うと、ぷっくり膨れたパチ恵が舌を出す。
「そっ…総悟さんみたいな人を相手に出来るのは私だけなんだから!仕方ないからお嫁さんになってあげます。ゴリ兄さんみたいに優しくなってプロポーズしてくれるのずっと待ってるから…でもあんまり遅いと泣いちゃうからね…」
そう言って笑った顔は最高に可愛くて、今度はゆっくりと確かめるようにキスをした。
妹から恋人に変わった朝はきっとおはようのちゅーなんてしてくれんのかと淡い期待を抱いていた俺に訪れた現実はなかなかに厳しくて。
俺に飛び乗るパチ恵はいつもと変わらず手厳しくて…
「そーちゃん起きろー!遅刻しちゃうよ!!」
上に乗っかられてゆさゆさと揺すられるのにも手加減は無い。
夕べのアレは俺の夢だったんじゃないかと思いだした頃、パチ恵が俺を揺する手が緩んで耳元で小さな声がする。
「そーちゃん…起きないとちゅーしちゃうから…」
…やっぱり夢じゃなかった!
「…恋人にちゅーされたら一発で起きやす…」
俺がそう言ってすぐに唇に触れる柔らかい感触。
すぐに飛び起きて妹改め可愛い恋人を抱きしめるとそっと抱き返してくる畜生可愛い。
暖かい体温と一緒に幸せなんざ感じる朝ってのも悪く無ェ。
これからもずっとずーっと、幸せ感じて生きていきやしょう。
どんな関係になっても、俺はパチ恵から離れる事なんざ無いと約束しやすから。
END
25萬打フリリク企画でリクエスト頂きました『兄妹で沖パチ』でした。
…なんかもうすみません!
やっぱり禁断的にはなりませんでした…私には書けないッス…
言い訳のしようもありません…
この2人が一緒に居て好きにならない訳ないですからね…もう…残念脳と思って頂けると…
パチ恵だけ『志村』なままなのは、勲兄と妙姉さんは小さい頃からパチ恵も総悟もお互いを好き合っているのを知っているからです。
早くお嫁においで〜とか思ってます。
少しでも楽しんで頂けると幸いです。
この度は企画にご参加頂きまして有難う御座いました!!
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