帰りのHRで銀八先生に呼び出された僕は、今国語科準備室へと向かっている。
早く部活に行きたいっていうのに!

『先生の心を傷付けたんだから志村は手伝いをしなきゃいけないんですぅ〜顧問が言ってるんだから部活には遅れなさい。』

とか勝手な事言うし…
どうせ僕に雑用を押し付けるつもりなんだよあのマダオ!

「先生ー来ましたけどー?」

一応ノックをして声を掛けながら部屋に入っていくと白いふわふわ頭が僕の方を見て意外そうな顔をする。

「おー、志村御苦労〜…あれ?沖田君は一緒じゃねーの?」

「は?沖田君がこんなの手伝ってくれる訳無いじゃないですか。」

「え〜?そう?」

「そうですよ!」

「いつも頑張ってっから期待してたんだけどな〜…ま、いっか。コレ頼むわ〜御駄賃やるからしっかり働けよ〜」

そう言って僕の口に何かを突っ込む。
…甘い…紅茶味だ…
僕がコロリと口の中の飴を転がすと、死んだ魚と称されるヤル気の無い目でほんわりと微笑まれるから怒る気も失せてしまった。
仕方ない。飴も美味しいし手伝いぐらいしても良いか。

先生と2人で、次の授業で使うであろうプリントを3枚纏めてホチキスで留めていく。
結構な枚数あるのに僕しか呼ばないなんて無茶だよ銀ぱっつあん!沖田君も来るみたいな事考えてたみたいだけど、あの人がそんな事する訳ないじゃん!
それとも先生達の前ではまだ優等生やってんのか?あの人…イヤ、もう問題児になってる筈だよね。なんせ僕を『沖田係』にしてるんだから。
そうだ!今直談判したら解放されるかも!

「先生!もう僕を『沖田係』から外して下さいよ!あの人実は僕よりしっかりしてるんですよ?やれば出来る子なんです!!………やらないだけで…それに放っておけば寂しくなって勝手に帰ってくるんですからわざわざ呼びに行く必要無いんですよ。先輩達も先生方もあの人に甘過ぎなんですよ!」

僕がぶうぶうと文句を言うと、楽しげにニヤリと笑った先生が首を横に振る。

「え〜?だって沖田君見付けんの早いじゃん志村。」

「なんか最近『沖田センサー』着いちゃってんですよ、僕…そんな機能全く要らないのに!」

僕が言い返すと今度は感心したような顔をして、何故か優しげに微笑んだ。

「ふ〜ん…アノ沖田君が必死で頑張ってっから少しぐらい応援してやろうとか思ってたけど…」

「はぁ!?沖田君が頑張ってる!?…確かに剣道はサボってるフリしててもきっちり基礎練してるし、勉強だってそこそこやってますよね…落第しないぐらいには…」

そう、僕は知っている。
いつもサボってばかりでいい加減な風にしてるけど、沖田君は必要な事には絶対手抜きはしないって事を。
銀八先生もそんな沖田君の隠している行動に気付いてたなんて…ちょっと尊敬してしまった…

「まぁ何だ。お前ら仲良しみたいだし沖田君も志村の言う事は聞くんだからまだ暫く『沖田係』よろしくな〜」

「え!?それとこれとは…!」「新八ィー!まだグダグダ雑用押し付けられてんですかィのろまー」

国語科準備室のドアが勢い良く開かれて、今まさに話題の中心だったヤツが現れた。
ムカつく台詞と共に。

「もう終わりますよ!遅いとか思うんなら手伝えよアンタも!!」

「えー?俺そんな暇じゃねェし。」

「僕も暇じゃねーよ!クタクタだよ!!」

ギャーギャーと言い合いをしている僕らを眺めていた銀八先生が、ニヤリと笑って僕の頭を撫でる。
何!?

「おー、志村御苦労もうい〜わ。しっかしおまえ働き者な〜、可愛いし。先生の嫁になるか?」

「は?頭湧きましたか天パ。」

クソくだらないオヤジギャグに僕が冷たい視線を浴びせていると、急に機嫌が悪くなった沖田君が僕の手を掴んで歩きだす。

「え?ちょ…沖田君!?」

「もう手伝い終わったんだろィ。さっさと部活行きやすぜダメガネ。」

「なっ…!ドS野郎に言われたくないですー」

一応会釈をして国語科準備室を出た僕に、ニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべた先生がヒラヒラと手を振ってくる。

「又よろしくな志村〜今度は先生のペロキャン嘗めさせてやるからな〜先生のはデカイから顎外れないように気ぃ付けてヤルぞ〜」

「っなっ…!?」

珍しく驚いた顔をした沖田君が、凄い勢いで先生を見て、すぐに恐い顔で睨みつけて、ピシャリとドアを閉めた。

「…沖田君も飴欲しかったの?紅茶味…言ったら先生くれると思うよ?」

「…飴…?」

「うん、飴。甘くて美味しかったよ?」

僕がちょっと勝ち誇ってそう言うと、沖田君がはぁーっと大きな溜息を吐いて抱き付いてきた。
何だ?匂いだけでも嗅ごうっていうのか?そんなに飴好きなのかな…?

「…次は俺も一緒に行く…」

「えぇっ!?沖田君が!?そんなに飴食べたいの!?」

「………おー………」

「じゃぁ、今、僕銀八先生に言ってあげるよ!ちょっと待ってて…」

「イヤ、キョウハイイデス。」

なんだか疲れたように遠い目をして、沖田君が僕の手を引いて歩き出す。
さっきとは違って力無く引いてるけど…そんなに残念だったのか…なんだかちょっと可愛い…
仕方ない、確か鞄に非常用の飴持ってた筈だから、後であげることにしよう。

なんだかんだ言って僕も沖田君に甘いんだから…まだしばらくは『沖田係』をやってあげる事にしよう。
友達だしね。



END



25萬打フリリク企画でリクエスト頂きました『めいんにある3Z小説の沖→→新』でした。

大変お待たせしました!
久し振りに書かせて頂いた3Zでしたが、なんだかキャラが変わっているような気が…しないでもないです…
沖田さん好きスキではない新八くんも書いていて楽しかったです。
あんまり押してない気もしないでもないのですが、少しでも楽しんで頂けましたら幸いです!

この度は企画にご参加いただきまして有難う御座いました!!