「おう。俺ァパチ恵に惚れてるって言ってんだろ?何で信じねェ?その上銀の旦那に求婚されて満更でもないって言うじゃねェか…」

怖い表情のまま唇を奪われてそのまま押し倒された!?

ぎっ…ぎゃぁぁぁ!!

なんとか押し返して距離は取ったけど、顔が怖いィィィ!!

「もう止めて下さいっ!私をからかってそんなに面白いですか!?総悟様の嘘くらい、私にだって分かるんですよ!」

「…何が嘘でィ…」

私がはっきりと言ったのに、総悟様は怯む事無く真っすぐに目を逸らさない。
それなら…ちゃんと言ってみよう。
それで、もう今迄みたいに接してくれなくなっても…その方がスッキリする…から…

「この間ミツバ様と近藤さんが私をお嫁にしろっておっしゃった時に、総悟様困った顔してました…本当になっちゃ困るから、ですよね…?」

私も目を逸らさないでそう言うと、総悟様はやっぱり困った顔をした。

「あれは…」

「別に良いです。私解ってますから…」

「違っ…!困んのはあの二人が首突っ込んでくるとロクな事にならねェからでィ!俺ァ嫁にすんならパチ恵しかいねェと思ってんだ。でもパチ恵は本気にしねェし、あの二人を始めとして屋敷中がなんかおかしな事しようとするし…」

「うそ…」

「嘘なんかじゃねェ!いつまでも信じねェってんなら…躰に教え込みやしょうか…?」

そう言った総悟様が、パワハラなんておふざけじゃないキスをして、私の体中をまさぐってくる!?
キャァァァァ!!!手篭にされるゥゥゥ!!!
バタバタと暴れて逃げようとしても、どう抑えられてるのか全然逃げられない!
こんなの…嫌だよ………
ぽろぽろと涙が零れてしまうと総悟様の動きが止まる。
助かった…?

「そー…」

声を掛けようとすると、ばったりと私の上に倒れてくる総悟様と、その向こうに呆れたような土方さん…え…?

「もう、そーちゃんったらケダモノさんなんだから。そんなに慌てちゃパチ恵ちゃんは好きになってくれないわよ。ね?」

「ミッ…ミツバ様ァァァ!?皆一体どこから…ってか何故ココにィィィ!?」

「私はそーちゃんにはちゃんと幸せになってほしいと思っているの。それにはやっぱり好き合って結婚しなくっちゃ。ね、パチ恵ちゃん?」

にっこりと微笑まれたミツバ様は輝くようにお綺麗で、ついうっとりと見つめてしまう。

「そうですね、やっぱり結婚は好きな人とじゃないと…って!そうじゃありませんっ!私、部屋に鍵かけてるのにどこから入ってきたんですかァァァ!?それに入ってくるタイミングが良すぎませんか!?なんでもっと早くに…」

うふふ、と笑うミツバ様は私の質問には答えてくれなそうなんで、土方さんに目線を移すと、あーとかうーとか唸った土方さんが口を開く。

「この屋敷のセキュリティは万全なんだよ…この部屋もな…」

「えっと…」

「イヤ、いやらしい気持ちは無いから。皆仕事って割り切ってるから。」

「…それって…」

「見護ってるから。24時間。」

「イヤァァァ!」

むっ無理無理無理っ!
そんな事になってるなんて知らなかったよぅ…全部見られてるなんて恥ずかし過ぎて誰とも顔を合わせられないよ!
もう今すぐココは辞めて、家に帰る…!!
ベッドから抜け出して速攻荷物を纏めようと、気絶したままの総悟様に手をかける。
と、そのまま寝てしまったのか、総悟様は私の上で安心してくうくうと寝ていた…

…可愛い…

思わずぎゅうと抱きしめてしまうと、むにゃむにゃと何か呟いた総悟様も私に抱き付いてくる。
…そんな事されたら…離れられないよ…
からかわれてるだけでも良いから一緒に居たいよ…

「あら、そーちゃんが寝てる時は素直なのね、パチ恵ちゃんったら。」

「ミツバ様…」

「こんなことなら止めないで既成事実作っちゃった方が良かったのかしら…そうしたら素直になってくれる?」

「恐い事言わないで下さいっ!!私は…総悟様をお慕いしています。でも…総悟様は本気で私の事を好きじゃないんです…ただからかって遊んでいるだけで…ミツバ様や近藤さんが冗談でも私と結婚させるって言った時、総悟様は困った顔をしていました…私は…好きな人を困らせたくなんかないんです…それに、私と総悟様とでは身分が違いすぎます!」

一気にそう言ってしまうと、驚いた表情になったミツバ様がにっこりと笑う。

「そう…じゃぁそーちゃんにはちゃんと頑張ってもらわないといけないわね。パチ恵ちゃんのお部屋はモニターは全部外しますから安心して?その代わり、次は助けてあげられないわよ?」

「あ…あの…」

「パチ恵ちゃんがそーちゃんのお嫁さんになる日を楽しみにしているわね。」

「でも…!」

そのままミツバ様が出ていってしまいそうになるのでつい引きとめてしまった。
だって…総悟様にはきっとどこかのお嬢様やご令嬢じゃなきゃ…

「私ね、そーちゃんのそんな安らかな寝顔って見た事無いのよ?パチ恵ちゃんと一緒に寝るようになってから凄く良く眠れているみたいなの。」

「でも…」

「これ以上はそーちゃんが頑張らなきゃいけない事だから。これからもそーちゃんをよろしくね?パチ恵ちゃん。」

今度こそミツバ様と土方さんが部屋を出ていってしまう。
そんな…本当に総悟様は…?
すうすうと気持ち良さそうに眠る総悟様を信じて良いのかな…?

「…パチ恵…」

「総悟様…?」

起きていたのかと顔を覗き込むと瞼は閉じられたままで…寝言…?夢でも私に逢って下さっているのかな…?

「…パチ恵のおっぱい枕きもちい…」



無言のまま、ベッドの下に落とそうと総悟様の体を転がすと、ぎゅうぎゅうとしがみついて来て全然落ちない!
やっぱりただのセクハラだった!ちょっとでも信じそうになった私爆発しろっ!

「絶対信じませんからね!総悟様なんかセクハラでパワハラでサイテーですっ!!」

…でも、惚れた弱みですから…辞めてなんかあげません。


END


25萬打フリリク企画で香様にリクエスト頂きました『お金持ち沖田とメイドパチ恵ちゃんの続き』でした。
続きを書きたいと思いつつ、なんだかんだで伸び伸びになっていたお話です。香様、書かせて下さいまして有難うございました!
今回は沖田家で働く皆さん紹介で!と思っていたので総悟様の見せ場が少なくなってしまいましたが、その分濃くなったかと思っています…濃いですかね…?
因みに銀さんと神楽ちゃんは親子ではないのですが、パチ恵は勝手に親子だと思っています。

すっかりお待たせしてしまい申し訳ありません。少しでも楽しんでいただければ幸いです。
この度は企画にご参加いただきまして有難う御座いました!!