一通り仕事を終えた頃にはすっかり夜も更けて、病院の面会時間はとっくに過ぎちまってた。
あの後新八くんは警察病院に運ばれて、最高の処置を施されたらしい。
それでも暫くは入院しなきゃいけねぇ程の怪我を負わせちまった。
万事屋も姐さんも大騒ぎだったらしいが、新八が説得してなんとか宥めてくれたらしい。
そんな話を聞いたからって、俺の不安は納まらない。
なんとか近藤さんに頼みこんで、そっと見舞わせてもらった病室には青白い顔でうつ伏せで横たわる新八くん。
ゆっくりと体が上下するんで、ちゃんと生きてるってェのが判った。
「…下手したら死んじまってたんですぜ…?」
そっと触れてみた頬は暖かくて、やっと生きてるって事を確認できて安心した。
「阿呆みたいに可愛い顔してるくせに男前過ぎるんでィ。んなもん、惚れねェ訳ねェだろうが…」
するりと頬を撫でて、少し開いている唇にも触れてみる。
…やわっけぇ…
そっと俺の唇を押しつけてみると、凄ェ気持ちい…
この程度の事でこんなん感じんのは、やっぱり好きだから…なんだろうねィ…
でも…
「こんな事はもう二度と御免でィ。だから…俺ァもう新八くんには近付きやせんから…安心して下せェ。」
もう一度だけ口付けて、新八くんに背を向ける。
そのまま立ち去ろうと一歩踏み出すと、何かに裾を引かれて足が止まった。
「…何好き勝手に話して好き勝手な事して立ち去ろうとしてんですかアンタ。」
「しっ…新八くん…起きてたんですかィ…?」
そーっと振り向くと、俺の上着の裾を掴んだ新八くんが、顔を赤く染めてジッと睨んでた。
ヤベ…全部聞かれてたんですかィ…
「すいやせん…俺が関わったせいで新八くんに酷ェ怪我させちまった…それに…嫌な思いさせちまって…だから、俺ァもう…」
「だから近付かない、なんて言ったら嫌いになりますよ?」
俺を睨みながらも、真っ直ぐ目を逸らさずにそう新八君が言う。
「…元々嫌いだったんじゃねェのかよ…嫌って言ったじゃねェか、俺の事…」
「嫌いなんて言ってません!男の僕を好きだなんて言うからからかってると思って…そうじゃなかったって解っちゃいましたけど…」
ふいっと目を逸らした新八くんが、真っ赤な顔で横を向く。
え…?テレてる…?
「新八くん…テレてやす…?え…?新八君も俺の事す…」
「そういうのじゃないです!僕は友人としてですね!!…あの時だってそういうんじゃなくて純粋に…!!」
むくれながらブツブツと文句を言ってるけど…これは…
「新八くん、俺はまだアンタの傍に居ても良いんですかィ…?」
「別に…そんなのは沖田さんの自由でしょ…」
あぁ…本当にアンタってお人は………!
「今回の事は肝に銘じて、次からは新八くんの隣に居る時も気は抜きやせん。誰かさんにいぢめられても、誰かさんに俺のガラスのハートが砕かれても、新八くんがピンチの時は絶対ェ俺が護りやすから。二度と傷は作らせやせんから。だからもうずーっと離れやせんぜ?」
にへら、と笑って頭を撫でると、目を見開いた新八くんが更に赤くなった。
「僕は沖田さんをいじめてなんかいませんし!そんな…ずーっととか…知りませんっ!!」
ついにはすっぽりと布団をかぶって逃げちまった。
ずっりぃの。
「それに!護るとか言ってるけど僕の方がアンタを護らないとですよね!ダメダメになっちゃうくせに!仕方ないから僕の近くに居る時は僕がアンタを護ってあげますよ!!」
「…男らしいこって…んじゃぁよろしくお願いしまさァ。可愛い恋人さん。」
「と・も・だ・ち!友人としての話です!」
真っ赤な顔を布団の間から覗かせて俺を睨んでくるなんざ、やっぱり俺ァコイツが良い。
諦めるなんて出来やしませんぜ。
「まぁ今は友達で我慢してやりまさァ。その内新八くんの方から好きだって言わせてやりやすから覚悟しなせェ。」
「そんな日は来ませんから!」
ふん、と鼻息荒く舌を出した新八くんの頭を撫でて、今度こそ病室を後にする。
随分と話し込んじまった…疲れちまっただろうに。
今日で最後じゃねェんだ、明日も又逢える。
素直に想い合ってくれるようになるまでまだ暫くかかりそうですが、そう遠くもなさそうでィ。
だから…二度とこんな事させねェから…
俺は、もっともっと沢山新八くんに逢いに行こうと決めやした。
「仕事しろォォォ!!」
END
25萬打フリリク企画でゆきの様にリクエスト頂きました『新八にベタぼれに片想いしてる沖田さんが、傷つきそうになったところを新ちゃんに庇われて新ちゃんが大怪我』でした。
シリアスに〜とか言いつつやはりシリアスにはなりきれませんでした…真っ暗を避けた分御勘弁頂けると…
そして、沖田さん片想いはやはりワタシには難しい…?
どうしても新八くんが傾いてしまうようです。
たいっっっっっへんお待たせいたしまして申し訳ありません!
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
リクエスト有難う御座いました!!
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