そーちゃんが連れて行ってくれたケーキバイキングは、前に私が行きたいって言っていた所で、すごく美味しかった。
それに、そーちゃんはただ黙ってひたすら私と一緒にケーキを食べてくれた。
最後の方なんて、坂田先生みたいな目をしてひたすらお茶でケーキを流し込んでまで食べるのを付き合ってくれた。

その優しさは、全部知ってたのに黙っていたお詫びなのか、土方先輩の相手がミツバお姉ちゃんだったからなのかは分からないけど、真っ白になってしまった私の心をしっかりと繋ぎとめてくれた。
あの時すぐに繋いでくれた手も暖かくて…流れてしまいそうだった涙も止めてくれた。

そーちゃんのおかげで、私は大好きな人達を悲しませないですんだ…と思う。
2人の事は、すごくショックだったけど…でもその事を知ってもやっぱり私は2人が大好きで…あぁ、そうなのか、って思ってしまった。
ミツバお姉ちゃんを悲しませてまで、私が土方先輩の隣に立ちたいとは思わなかった。
私が代わりに土方先輩の隣に立っても、今以上に先輩が幸せな気持ちになるとは思えなかった。
だって、ミツバお姉ちゃんと並んで皆に冷やかされてる土方先輩は、今迄見た事無いくらいに幸せそうだったから。
私に笑いかけてくれる時の笑顔とは全然違う、子供みたいに幸せそうな笑顔だったから。
それに、その隣で笑うミツバお姉ちゃんも凄く幸せそうで…一味ソバや激辛せんべえを食べてる時みたいな笑顔だったから…
だから、きっとこれで良いんだと思う。

あーあ、そーちゃんは凄いな…昔っからそうだったけど。
いつもはすっごい意地悪なのに、私が困っている時は必ず助けに来てくれるんだ。
それは私がトロくて情けない幼馴染だからなんだろうけど、それでもあんなに優しい人を私は他に知らない。
もちろん、お姉ちゃんも土方先輩もミツバお姉ちゃんもとっても優しい人だ。
でも、そーちゃんの優しさは誰よりも心地よくて、私は昔から頼ってばっかりだった。
ドSでいじめっ子で意地悪だけど、私にとってはヒーローで初恋の人で、今でも大好きな人。

もしもそーちゃんが困った時には絶対絶対私が助けてあげるから!

だから…もうちょっとだけ助けてね、そーちゃん…





次の日、パチ恵は土方の事を考えないようにしてなのか、忙しく学校では雑用をこなしたり、部活ではマネの仕事をこなしたりしてた。
…まぁ、俺と妙姐が仕事押し付けて、ワザとそうしてたってのもあるんですけどねィ…
その後部員共に詳しく二人の事を聞いたりしてやしたが…アイツM星のお姫様だったんですかィ…?
そのせいなのか、その次の日にパチ恵は風邪でダウンした。
ちょっとだけ良心も痛むし、やっぱり心配だし、俺は学校をサボって手土産を持ってパチ恵の家に向かった。

ピンポンピンポンとチャイムを鳴らし続けると、フラフラなパチ恵がだるそうに現れる。
…あり…?仮病じゃなかったのか…?

「…ぞーぢゃんどうじだの…?」

「…パチ恵が退屈してんじゃないかと思ってサボ…見舞いにきやした…本当に風邪かィ…?」

「…ごれがげびょうにみえる…?」

「…いんや…薬飲んだか?…アイス喰う…?」

「だべだい…ぐずりばね…のんだ…」

やっべェ、本当に風邪ひいてた。
絶対ショックで寝込んでるんだと思ってたのにどんなタイミングだコイツ…
フラフラ歩いてるのを見兼ねて、横抱きにして部屋まで運んでやるとジタバタと暴れまくりやがった!

「おまっ…大人しくしろィ!落とすぞ!」

ちょっとだけ手を下ろしてやるとそのまま俺の腕の中から降りようとするんで、逆に持ち上げて顔を近付けてやると大人しくなった。
何なんでィ…?
そのまま部屋まで運んで布団に座らせてやると、疲れたのかグッタリとしちまった。
…そういやすんげぇ熱かったよな、パチ恵の身体…よっぽど熱あるんだな…

「ほら、アイス。イチゴ味好きだろィ?ポカリは蓋開けて枕元置いとくから喉乾いたら面倒くさがらずに飲めよ?残ったアイスは冷凍庫に入れとっから後で喰いな。」

ぼんやりと俺を見るパチ恵にアイスとスプーンを持たせて、蓋を開けたペットボトルを枕元に置いて、残ったアイスを冷凍庫に入れるのに部屋を出ると、ぶびぃーんと派手な音がした。
本気で具合悪そうだし…俺ァ早々に退散するとしやすか。
一応帰る事を告げにパチ恵の部屋に戻ると、幸せそうな顔でアイスを喰うパチ恵がへらへら笑いながら俺を見る。

「そーちゃんは優しいねぇ。私が困ってたら、絶対助けてくれる。」

えへへ、と笑いかけてくる顔は子供ん時みてェだ。
そりゃぁお前が好きだからだよ。全く鈍いなァ、パチ恵は。

俺が何も言わねェでいても、へらへら笑ったパチ恵は話を続ける。

「私ね、土方先輩が好きだったの。カッコいいし優しいし意地悪しないし。」

俯いちまったパチ恵は泣いちまうのかと思ったのに、パクパクとアイスを喰いきって笑った。

「でもね、私ミツバお姉ちゃんが大好きなの。強くて綺麗で優しくて素敵で…憧れちゃうの。」

「…おう…」

それは仕方ねェ。俺の姉ちゃんは完璧だからねィ。

「ミツバお姉ちゃんの方は同意するんだね、そーちゃん。あ、もしかして土方先輩と仲悪いのってミツバお姉ちゃんを取られたから…?」

くすくす笑いながら、んな事言うんじゃねェ…もう笑えんのかよ…

「…それだけじゃねェよ…」

パチ恵が惚れてっからだろーが!
言えねェけど!

「そうなんだ…えっと、そんな大好きな2人だからね、恋人なんだって聞いて…ショックだったけど、でも仕方ないなって思ったんだ…」

「うん。」

珍しく真面目に俺がパチ恵の話を聞いてやると、凄ェ嬉しそうに話してきやがる。
…そんな顔されたら茶化せねェだろ…

「そう思えたのはね、そーちゃんがずっと一緒に居てくれたからだよ?本当は泣いちゃいそうだったし倒れちゃいそうだったんだけど、ずっと手を握っててくれたから大丈夫だったんだよ。ありがと…そーちゃん…」

そう言ってにこりと笑ったパチ恵が、俺に倒れ込んでくる。


…え…?

…いいの…?コレ…

…そういう流れだよね、コレ…


そっと顔を覗き込むと、やり遂げた満足そうな顔で、スースーと眠っていた。

…デスヨネー…
薬飲んだって言ってたもんなー…

起こさないようにそっと寝かせて布団を掛けてやると、幸せそうな顔で眠りこけてやがる…

「んなのなァ、好きなヤツだからに決まってんだろィ。お前じゃなきゃァ、んな面倒な事なんざしやせん。いい加減に気付けよ馬鹿八恵。」

寝てんのを良い事に、しっかり告ってついでにファーストキスも奪ってやる。
ビックリするぐれェ柔らかいソレをじっくり味わって顔を上げると、赤さを増した気がするパチ恵の寝顔に頭がくらくらすらァ…



俺の頭がくらくらしたのはきっすの余韻なんかじゃなくて、極悪ウィルスに感染したからだって判ったのは次の日すぐで。
スッキリ治って俺を看病に来たパチ恵に、熱にうなされた俺が告白したのは予定外だったが、真っ赤な顔をしたパチ恵が頷いてくれたのも予想外だった。


END


25萬打フリリク企画で匿名様にリクエスト頂きました『学パロ幼なじみ沖パチで沖→パチ→土ミツで最終的に沖パチ』でした。

カッコいい土方さんとは一体どんな人なのでしょう…な感じになってしまいました…ミツバさんの素敵さもさっぱりですねすみません!私の中の土ミツは凄く静かなイメージで…全く上手に書けませんでした、申し訳ありません…
その分、頑張る沖田くんとパチ恵ちゃんは書けたかなぁ…と思ったり思わなかったりしております。

少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。
そして、たいっっっっっっっへんお待たせしてしまい申し訳ありませんでした!

リクエスト有難う御座いました!!