深く考えに沈んでいた僕の肩に、何かが触れる。
それは、酷く白い手で…
ビクリとして振り向くと、手よりも更に白い顔をした沖田さんで…
「新八ィ…ちょいと病院まで連れてってくんねェかィ…?死にはしなかったけど、結構な重症でィ…」
「はっ…はいっ!すぐにお医者にっ!」
そうだった!元気そうだったけど、沖田さんは斬られてたんじゃないかっ!!
僕が慌てて沖田さんに肩を貸して歩き出すと、沖田さんがぐっともたれかかってくる。
呼吸も短くて、とても辛そうだ…
こんな時、僕にもっと腕力が有れば、沖田さんを抱き上げて連れて行けるのにっ…
「すみません…僕がもっと強かったら…僕がもっと早く気付いてたら…」
確か、この近くに病院が有ったはずだ…
早く…早く…
急がないと…沖田さんの手が、冷たくなってきたよっ…
さっきの力が、今の僕に有ればっ…
僕が眼鏡を外そうとすると、沖田さんの手がそれを止める。
「新八ィ…さっきの新八は…何だったんでィ…?」
沖田さん…全部見てたの…?
あんな僕を…全部…?
「…僕にも分かりません…眼鏡が外れてから…妙に冷静になって…気持ち悪いですよね…?」
僕が俯くと、沖田さんが、くつ…と嗤う。
「まぁ、どんな新八でも新八には変わりねぇ。俺の怪我が治ったら、アイツで立ち合いしてくれィ。」
「…沖田さん…?」
「見ててゾクゾクしたんでさァ…闘ってみてェ…」
隣にある顔を見ると、ニヤリとした笑顔…
戦闘民族になってるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!
「いえ、ぼっ…僕はっ…」
「まァ、色々する時は面倒くさそうだから、いつもの新八で居てくれィ。」
唇に、ちゅっと濡れた感触…って!?ココ、公道!公道っ!!
僕が真っ赤になると、ニヤリと笑う。
…それまでの重苦しい雰囲気は、消えていた…
あぁ、僕はこの人が一緒に居ればどうにでもなれる。
この人が居なければ、駄目なのかもしれない…
あの時の僕が何だったのかは分からないけど、沖田さんが一緒に居れば、きっと大丈夫だ。
結局沖田さんの傷は深くて、2週間の入院になった。
翌日僕は、なけなしの給料をはたいて買ったサクランボを持って、お見舞いに行った。
当然だよね!だって、僕を庇って負った傷だもの…それに、ずっと一緒に居たいし…
教えてもらった病室に着いて、ノックする。
「沖田さん、お加減いかがで……」
……僕の目の前に広がる光景は…看護師さん達にたかられて、プリンを食べさせてもらってる沖田さんで…
なんか、鼻の下、伸びてない……?
僕がにっこり微笑むと、沖田さんがビクリとして固まる。
あ、手が勝手に眼鏡を外しちゃった。
「貴女方、ケガ人に何をなさっているのですか…?そして沖田さん、随分と嬉しそうじゃないですか。ワタシは来ない方が良かったですねぇ…」
僕の殺気を受けて、看護師さん達が走って逃げる。
ベットの上の沖田さんは、引きつり笑いを浮かべてズルズルと後ずさる。
「や、新八来てくれて嬉しいでさァ!あ、ソレ何ですかィ?お見舞い?」
「えぇ、なけなしの給料はたいて買ってきたサクランボですよ。」
「わっ…わー!俺ァサクランボ大好きでさァ!」
「…空々しい…」
にこりと笑った僕の笑顔に安心したのか、気を抜いた沖田さんに僕は近寄って、髪を鷲掴んでグイッと頭を固定する。
「…あれ?新八ィ…?」
僕の鉄拳が沖田さんを襲ったのは言うまでもなく、沖田さんの入院は、1か月延びた。
意外と簡単に、僕の裏の顔は出るらしい…
END
参萬打企画で花椿さまにリク頂きました!
…初めは最後の方の路線で行こうと思っていたのですが…
何故かシリアスっぽくなってしまいました…スレ新?
えーと…少しでも気に入って頂けたら幸いです…です。
なんかすいまっせん!
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