山崎さんと伊東さんが十五郎君を囲んでじーっと見ると、十五郎君がイヤそうな顔をする。

「…やまざきといとうだ…なんだよ、おれせっかくかぐらとたのしくしてたのに!やなかおみちまったぜ。」

2人の笑顔が引きつる。

「うわー、副長そっくり…基本エロだよね、副長。」

「本当に。子は親の鏡、とは言うけれど…女性好きな所ばかり似るのはどうかな。」

「え?マジ?多串君ってそういう人なの?だってー、パチ恵ちゃんどうする?」

銀さんが、めっちゃ嬉しそうな顔で私に絡んでくる。
ホント、親が駄目だから、十五郎君がこんな子供に育ったんだよ…
やっぱり土方さんって駄目なんだ…

「山崎ィィィィィィィィィ!」

「はいぃっ!」

私達が十五郎君を囲んで嫌な顔になってると、土方さんの怒鳴り声がする。
何で山崎さん…?

丁度良かった、文句言わなきゃ!そして別れてやる!

「あっ!こんな所に居やがったか、十五郎!!」

「おとーさん!」

神楽ちゃんにしがみついたまま、十五郎君が土方さんに手を振る。
と、怒った顔の土方さんが十五郎君に近付いていく。

「ごめんなさいおとーさん…」

「俺は良いから。お母さん心配してるぞ?さ、帰るぞ。」

土方さんが神楽ちゃんから十五郎君を受け取ろうとすると、十五郎君が神楽ちゃんにしがみつく。

「…おれ、かぐらをつれてかえる。およめさんなんだ!」

「はぁ?カグラ…って…うおっ!?オマエら何やって…ってパチ恵か!?あー…何か可愛いな…」

土方さんが赤くなる。
…誤魔化そうとしたって誤魔化されないんだから!
フォロ方十四フォローにだって負けないから!

「こんにちわ、フォロ方さん。丁度良かったです、私アナタにお話が有ったんです。」

私がにっこりと微笑むと、全員が、ずさっと後ずさる。
…何よ…

「私と別れて下さい。今スグに。」

私がキッパリと言い放つと、土方さんが慌てだす。

「いや、誤解だ!俺は…」

「往生際悪いよ?多串君〜。パチ恵は俺に任せて、奥さんと子供を幸せにしてやれ。」

銀さんが私の肩を抱くんで、つねる。

「旦那〜、ずるいですよぉ〜!パチ恵ちゃんは俺が幸せにしますから!副長、安心して下さい!」

山崎さんが肩を抱くんで、つねる。

「山崎ィィィィィ!オマエ何言って…」

「まぁそうでしょう。この2人じゃ不安でしょうが、パチ恵さんは僕が幸せにしてみせますから。土方君、君はお相手の女性を幸せにすると良い。」

伊東さんが私の隣に立つ。
あ、伊東さんは肩抱かない…流石、学習能力有るな、この人…

「イヤ、だから…」

土方さんが困った顔でまだ何か言おうとするけど、何にも聞きたくない。

「そう言う事ですから。土方さん、さようなら。」

私が伊東さんの腕に抱きつくと、伊東さんが固まる。
…ちゃんとのってくれると思ってたのに…ただ単にスキンシップに弱かっただけか…

「ちょっ!待て…八恵!」

「なっ…何ですか…?」

珍しい…本名で呼ぶなんて…

「誤解だ!俺はお前しか見てねえから!別れるなんておかしいだろ!?」

「はぁ!?隠し子居るクセに何言ってんですか!?」

「イヤだから誤解だって!」

「へぇーっ、十五郎君を誤解で片付けちゃうんだ。さいってー、大っキライ。」

私がそう言うと、土方さんが舌打ちする。
何!?そのタイド!!大体まだ1回も謝ってないし、コノ人!!
私がムッとしたまま伊東さんと腕を組んで立ち去ろうとすると、土方さんが私の腕を取る。

「離して!!」

「だから、説明するから…」

土方さんの手を振りほどくと、皆が私の盾になってくれる。

「キライったらキライ!謝りもしないなんて信じられない!その上、子供まで作った相手の人を捨てようとするなんて…そんな人だとは思いませんでした!もう2度と私に近付かないで…」

そうだよ…よく考えたら私より相手の人の方がひどい事されてる…
そんな土方さんは、嫌だよ…

「こんな所に居たんですか?十四郎さん。」

辺りに、凛とした声が響く。
声のした方を見ると、清楚な着物をびしりと着こなして、長い髪を右側で纏めたひどく綺麗な女性が立っていた。
艶やかな髪飾りが…凄く映えて…
私を見て、ふんわりと微笑む…アノ人が、土方さんの…

「十五郎も、勝手に居なくなって…心配したのよ?」

…辺りの気温が、一気に下がった気がする…
なんか…姉上みたいな怒り方する女性だなぁ…きっと逆らったら酷い目に…
あ、山崎さんが建物の陰に避難した…

「おっ…おかーさんごめんなさいー!」

あ、十五郎君が泣いた…

「私にごめんなさいじゃないでしょ?皆さんにごめんなさいは?」

「みなさんごめんなさいー!」

ぐしぐしと目を擦る十五郎君の頭を神楽ちゃんが撫でてあげる。
その神楽ちゃんの頭を、ひどく懐かしそうな目をして女性が優しく撫でる。
その姿を、訝しげに銀さんが見ている。

「さ、帰るわよ?皆さんウチの人達がご迷惑おかけしました…申し訳ありません。」

にっこり微笑んで、スッと頭を下げる。そのまま2人の首根っこを掴んでズルズルと引き摺っていく。
あ…土方さんも…連れて行かれる…
思わず駆け寄って土方さんの袖を掴むと、その女性がくるりと振り返って微笑む。

「ごめんなさいね?この人は私の大切な人なの。あなたの十四郎さんは、今何処かでお仕事中してると思うから…この十四郎さんは、離して頂戴ね?」

うわ…可愛い…綺麗で可愛いなんて…ズルイ…
私がそっと手を離すと、スッと私の耳元に近付いて、こっそり囁く。

「大丈夫、十四郎さんはずっとあなたの事が1番好きよ?じゃなきゃ、私も十五郎もここには居ないから。」

うふふ、と悪戯っぽく笑って、女性が2人の手を取る。

「珍しいな、八恵が俺と手を繋ぐなんて…」

土方さんが、言う…えっ…?

「あら、嫌?」

「嫌な訳あるか。」

にっこり笑った土方さんが、女性の手をぎゅっと握って歩き出す。

「…って…えっ…?えぇぇぇぇぇぇーっ!?」

思わず叫ぶとその女性がちらっと振り返って、唇に指を当てて綺麗にウインクする。
そのまま、土方さんに引かれて行ってしまう。
あれ…アノ人…もしかして…未来の…

「パチ恵ー、帰るヨー!」

神楽ちゃんが私を呼ぶ。

「パチ恵さん、あの…」

伊東さんがもじもじと何か言ってる…
でも…今は…無性に土方さんに会いたい…

「伊東さんごめんなさい、変な事に付き合わせてしまって…神楽ちゃん、私ちょっと寄ってく所が出来たから!先に帰ってて!!」

皆にぺこりと頭を下げて走りだすと、銀さんがニヤリと笑う。
…全部お見通しなのかな…?銀さんは…

とにかく今は、土方さんに会いたいから…
私は走るスピードを上げて、土方さんを探しに行った。


END


参萬打企画でキャンさまにリク頂きました!
ギャグ…になっているかは微妙ですが…
美人奥様、ってぇ所にものっ凄く反応させて頂きましたァァァァァァ!!!
素敵リク有難う御座いました!少しでも気に入って頂けると幸いです。