僕が振り返ると総悟君が不思議そうな顔で僕を見ていた。
「父上と姉上が泊まりだそうです。」
「おっ?近藤さんやりやしたねっ!」
総悟君が嬉しそうに微笑む。なっ…なんて優しい顔してんだよ、この人っ!!
「…そう言う訳でも無いようですよ?」
赤くなった顔を誤魔化しながら、僕がカーテンを開けて見せると、総悟君が固まる。
「…俺も泊まってって良いですかぃ…?」
「えっ!?帰るつもりだったの?」
「新八ィ…大胆でさぁ…俺に何するつもりでさぁ…」
「何言ってんですかっ!今日帰れないって言ってウチに来たんでしょうがアンタ!!」
「…帰ったら姉上に殺されるかもしれやせん…お世話になりやす…」
「はい。総悟君がお泊りなんて初めてだね!今日はゆっくり遊べるね、ゲームとかやろうね!!」
僕がワクワクしながら言うと、総悟君が俯く。…やっぱりミツバさんが心配なんだろうなぁ…
でも、コレは無理でしょ。僕だって姉上が心配なんだから…
気が付くと、テーブルの上の料理は無くなっていた。
2人で後片付けして、お茶を飲みながらテレビを見る。
「あ、総悟君ケーキ食べる?」
「食いやす!!新八の手作りケーキ!!」
ケーキを切り分けてると、嬉しそうな笑顔で僕を見ている。
なんか…待て、してる犬みたいで可愛い…
「総悟君って細身なのに良く食べるよねー?」
「俺ァ動きますからねぃ。それに、新八の料理は美味いからいくらでも食べられまさぁ!」
幸せそうな笑顔…いつもこの笑顔を見ていたい………
どうしよう………僕………総悟君の事、好きかも………凄く…好きかも………
父上と姉上の分のケーキを残して食べ終わる。ほとんど総悟君が食べてくれた。
美味しかったのかな…?嬉しい…どうしよう…
お茶を飲みながら、テレビを見てまったりしていると、視界の端にチラチラと動くモノが見える。
…総悟君が、何かソワソワしてる…トイレかな…?
「総悟君、トイレは…」
「トイレの場所は知ってやす。新八ィ…プレゼント、開けないんですかぃ?」
あ、そういえば…
「何ですか?まさかビックリ箱とかじゃないでしょうね…」
そう言いながらがさがさと包みを開ける。
…何だ…?総悟君顔赤いような…
綺麗な包み紙の中からは、大きな茶色のクマのぬいぐるみが出てきた。
…高校生男子にクマのぬいぐるみって………
「…総悟君、コレは………?」
「や、クマは新八に似てやしたんで…」
僕かよ!?どっちかって言うと総悟君じゃない?茶色が何か…似てる…総悟君の髪の色に…
そんな事考えながら、じ―っ、とクマを見ていると、首から何か下げてる…何だコレ…?………指輪っ!?なっ…何で……っ!?
ソコに下がっていたのは、小さな青い宝石の付いた銀色のの指輪だった。
「…総悟君…コイツ、何かオシャレなモノ首から下げてるんだけど…」
「…そっちが本命でさぁ…」
総悟君の顔が、真っ赤になる。
「こっ…これってどういう…?」
「…野暮言うねぃ。クリスマスに指輪のプレゼント、って言ったら、そういう意味に決まってらぁ。」
そっ…そういう意味って…ああいう意味だよなぁ…
えぇ――っ!?何がっ!?僕、からかわれてるっ!?
「新八ィ…俺ァオメェが好きだ。桜の降る中出逢った時に、一目惚れしちまった。イロイロ考えたんだけどねぃ…やっぱりどうしても言わずにいられませんや。姉上についた嘘、本当にしやせんかぃ?」
「ちょっ…総悟君っ?何言ってんの!?だって僕男だよ!?料理やったり家事やったりしてるけど、正真正銘男だよっ!?胸なんか無いよ?からかってんでしょ?そうでしょ!?」
僕がきょどきょどしていると、真剣な顔をした総悟君が、僕の腕を掴む。
「えっ…何…!?」
そして、おもむろに近付いてきて、きっ…キスをした。
「シャレでこんな事しやせんぜ。俺ァ本気でさぁ。俺の恋人になってくれやせんか?新八ィ…」
「なっ…なっ…なっ……」
頭が混乱する。だって総悟君は僕の友達で…イジワルで…でも誰よりも優しくて…頼りになって…
何でだよ…何で僕、こんな事されたのに、こんなに嬉しいんだよっ…おかしいよっ…
僕が黙って俯いていると、総悟君がはぁ、と溜息をついて僕の腕を離す。
「…すいやせん…男にこんな事されて、嫌でしたねぃ…忘れてくだせぇ…」
「やっ…イヤじゃないですっ!」
思わず叫んでしまった。
今、無かった事にしてしまったら、きっともう2度と総悟君はこんな事言わない…
「…新八ィ…?」
「僕は…総悟君は友達だと思ってました…でも…このまま無かった事にしたくない…です…忘れるのは…イヤです…なんでか…凄く…嬉しいんです…凄く…」
総悟君の顔が、ほにゃりとくずれる。
「なんでぃ、新八も俺に惚れてんじゃね―か。」
「そっ…そんな事ないっ…」
ぎゅうと抱き締められると、心臓が爆発しそうだよっ…!!
「新八ィ…そんな事有るだろぃ?心臓、スゲー音してやすぜぃ?」
「…総悟君だって…」
僕の耳は、丁度総悟君の胸に当たってて…煩いくらい、ドキドキって音が聞こえる…
どうしよう…すごく…すごく…愛しい………僕…総悟君の事好きだ…恋人になりたいよ…誰にも渡したくない…あの女の子と居るのを見た時の気持ちは、嫉妬だったんだ…
「総悟君…僕…は…嫉妬深いですよ…?それに、縛り付けますよ?良いんですか?それでも…」
僕がぎゅうと抱きついて言うと、総悟君が強く抱き返してくれる。
…良いのかなぁ…僕は…幸せだけど………
「俺の方が嫉妬深いでさぁ。それに、SMぷれいはお手のモンでさぁ。あ、もちろん俺の方がSで。」
「ちょっとっ!何言って…」
僕が顔を上げると、優しく微笑む総悟君が居た。
あ…やっぱり好きかも…すごく…
総悟君の笑顔が近付いてきて、又、キスされる。
あ…きもちい…
僕がぼ―っとしていると、総悟君の手が僕の…って、ギャァ―――――ッ!?
「何すんだ!このやろうっ!!」
僕がいきなり復活したのに付いて来れなかったのか、総悟君が突き飛ばされたままひっくり返る。
「な…?何って…えっち?」
「何で疑問系なんだよっ!!しませんよ?僕はっ!!しませんよっ!?」
「え――っ?この流れで何も無しですかぃ!?」
「やかましいっ!やらないったらやらないっ!付き合ったその日に、って、どんだけ―っ!!」
仁王立ちになった僕を、総悟君は倒れたまま見上げている。
まだぶーぶーと文句を言う総悟君に最後通告を言い放つ。
「客間に布団用意しますから、総悟君はソコで寝てくださいね。」
僕が冷たく言い放つと、シャカシャカと寄ってきて僕の足にしがみつく。
「酷いでさぁ!冷たいでさぁ!!何もしねぇからせめて一緒の部屋で寝させてくだせぇ―!!」
僕の足にぐりぐりと頭をこすりつけて、下からうるうるした目で見上げてくる。
…ちくしょう、可愛いんだよっ!!
「…何かしたら、追い出しますからね…?」
「りょ―かい!」
それからテレビを見て、色々お話をして、結局1つの布団で寝た。
でも、ぎゅって抱き締めて、それ以上は何もしないでくれた。
朝になっても総悟君は隣に居てくれて…僕はすっごく幸せな気分になった。
…恋人になったんだ…僕達…
僕は…いつからだったんだろ…この人の事…大好きっ…
すぴすぴと寝こける頬に、ちゅ、とキスを落とす。
朝ごはんは何作ってあげようかな…きっと又、すっごく美味しそうに食べてくれるに違いない…
続く
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