神社の前は沢山の出店が出てて、何かお祭りみたいだ!
帰りに寄りたいよね!!

そろそろカウントダウンの時間だ!
皆で腕時計を見ながら、今年最後の何秒間かを数えていく。

出店の人達が、用意してたクラッカーを鳴らして、年が明ける。

皆で新年の挨拶を交わしながら、人の波に乗って境内に移動して、がらんがらんと鈴(?)を鳴らして色々お願い事をして、境内を後にする。

総悟君があっちの出店、こっちの出店と僕を引っ張って走る。楽しくって、僕も総悟君を引っ張ってあちこちを見て回ってるうちに、後ろを振り返るとそこに居るはずの総悟君は居なかった…

あれ…?

姉上や近藤君や九兵衛さんも居ない…
えぇっ!?ちょっ…ウソ…僕、迷子ぉぉぉぉぉ!?
慌てて周りを見渡すけど、やっぱり誰も居ない…

どうしよう…

ぐるぐる見渡すと、遠くに総悟君の頭が見えた!
わー、良かった!僕はなんとか駆け寄って、総悟君につかまる。

「総悟君、良かった!僕、迷子に…」

あれ…?黒い…
顔を見上げると、知らない人がビックリ顔で僕を見降ろしていた。
良く見たらこの人メガネかけてるし、総悟君より身長もあるし、髪も短いよ…!

「あぁっ!すみませんすみませんすみません!!間違えましたっ!!」

その人にぺこぺこと謝って、又キョロキョロと辺りを見回すと、メガネで茶髪の人が、くすっ、と笑う。

「どうしたんだい?迷子かい?」

「えっ…あのっ…連れとはぐれて…はい、迷子です…」

僕が赤くなって下を向くと、その人が又くすっ、と笑う。

「じゃぁ、僕が一緒に探してあげよう。探しているのはどんな人なんだい?」

「あ、えっと…アイボリーのハーフコートで、貴方と同じ髪の色で…」

「あぁ、だから間違えたのかい?でも、僕のコートは黒いよ?」

その人が又くすくすと笑う。
あぁぁぁぁ…恥ずかしいなぁ…

「あっ…あの…髪の色が目立つんで…」

「で?髪の色とコート以外はどんな人?」

「あ…あの…僕より4cmしか大きくないのに何か目立って…えっと…カッコよくって…わがままで…ドSで…」

その人が遂にぶはっ、と吹き出す。

「くっくっくっ…その人は君の彼氏かい?」

「あっ…あの………はい………」

僕が真っ赤になると、その人がぽんぽんと僕の頭を撫でる。

「可愛いなぁ。その彼氏、妬けちゃうね。君みたいな可愛い彼女を迷子にさせるなんて、そんなヤツとは別れて僕にしとかないかい?」

「えっ!?イエ!そんな事…」

その人は又クスクス笑いに戻って、僕の頭を撫でる。

「冗談だよ。じゃ、愛しの彼氏を探しに行こうか?」

その人が僕の手を掴んで歩きだす。

「あのっ…手…」

「ん?又迷子にになったら困るだろ?」

「あ…はい…」

その人に手を取られながら、総悟君を探す。
その人は僕より大分背が高いので遠くまで見渡せるみたいで、少し歩いたらすぐに総悟君は見つかった。

「あ、あの慌てて走ってる彼かな?…おや…?」

その人が立ち止まって、困ったような顔をする。

「え?総悟君居たんですか!?」

僕が笑顔で言うと、その人も笑い返してくれる。

「あぁ…ここを真っ直ぐ行った所に居る彼がそうかな?だとすると、僕は居ない方が良いだろうから、多分。あぁ、僕は伊東。伊東鴨太郎。君は?」

「あ、すみません!僕は志村新八です。」

「…しんぱちさん…?変わった名前だね…じゃぁ、又ね?」

ちゅっ…

えっ…!?ちょっ…!?
伊東さんが僕のほっぺたにキスをして、爽やかに去っていく。
ちょっとぉぉぉぉぉぉー!!

僕がほっぺたを押さえて呆然と立ちつくしてると、大慌てでこっちに向かって走ってくる総悟君が見えた。

「しっ…新八ィー!ドコ行ってたんでぃ!?」

「そっ…総悟君…」

総悟君がぎゅうと抱き付いてくるけど、僕はそれどころじゃないよっ!!
なっ…何した!?あの人っ!!!

「新八ィ、何ぼんやりしてんでぃ!皆心配してるんだぜ!!」

総悟君は怒りながらもどこかにメールしてる。

「ちっ…やっぱり新八も携帯持ちなせぇ。」

すぐに返信が帰ってきて、それを見た総悟君が、今度はしっかりと僕の手を握って歩きだす。

「近藤さんと連絡取りやしたから、今から皆と合流しやすぜ?」

あ、メール…近藤君とだったんだ…
総悟君に手を引かれて足早に合流地点に向かう。

「…心配しやしたぜ?勝手に居なくならないで下せぇ…心臓がもちやせんぜ…」

怒ってた総悟君が、いつの間にか悲しそうな顔になってる…

「…ごめんなさい…」

凄く心配かけたんだ…
僕がぎゅうと手を握り返すと、強く握り返される。

姉上達と合流すると、近藤君のコートをぎゅっと握りしめていた姉上が、僕に飛びついてきた。

「姉上…ごめんなさい…」

「もうっ!新ちゃんのバカっ!」

抱き付いてた姉上が、僕の頭をグリグリとする。イタタタタタタ…!

僕が皆に謝ると、がっくりと肩を落とした九兵衛さんが、薄く笑う。

「新八君も見つかった事だし、僕はここらで失礼するよ…妙ちゃん…近藤君とお幸せに…」

九兵衛さんがフラフラと帰って行く。…大丈夫かなぁ…
僕が居ない間に何が有ったんだ!?
でも…九兵衛さんは可哀想だけど、これで良いんだよね…

後で総悟君に聞いたんだけど、僕が居なくなってパニックを起こした姉上を宥めたり支えたのは近藤君なんだって!
敵わないよなぁ…近藤君には…

僕らもその後すぐに家に帰ってゆっくり休んだ。

それにしても、あの人…伊東さん…何だったんだろう!?
僕にきっ…キスなんて…
うぅぅぅぅごめんね総悟君…ほっぺた…奪われちゃったよ…

早く忘れよう…きっともう会う事もないよね…


END



おまけ


日本に帰って来てすぐに、あんなに可愛らしい子に逢えるなんて、僕もなかなかついているな。

しかし…

アレは確か沖田君だな。近藤君にいつもくっついていた狂犬だ。
あんな可愛らしい彼女が出来るなんて、人生というものは解らないものだ…

でも…

僕はあの子が気に入った。
沖田君には勿体ないだろう。
大体、沖田君といえば、ドS王子と名高い男じゃないか。
あの子が酷い目に遭う前に、僕が助けてあげようじゃないか。

ああいう子は僕みたいなジェントルマンと幸せになるのが似合うのさ。

沖田君の彼女なら…銀魂高校か?
それとも近くの女子高辺りか?

早速近藤君に連絡を取って、探りを入れてみようか…

僕は懐の携帯電話を取り出して、早速近藤君にメールを送る事にした。
都合良く、新年も迎えた事だしな…


続く