今年も桜の季節がやってきた。
1年生の頃は純粋だったよなぁ…僕も…
アノ人に出会ったのも、こんな綺麗な桜の中だったっけ…


桜の頃再び


「よぉ、新八。何朝からビンボーくせぇツラしてんでぇ。折角の桜が色褪せちまいまさぁ。」

ニヤニヤとからかうような顔で、ヨッ!と僕に手を上げるのは、同じ部活で、憧れの的だった沖田さんだ。
…えぇ、だった、です。中身を知った今は、憧れなんか持てる訳ありません。

沖田さんは僕が思ってた以上にスゴイ人で、見た目に騙されちゃいけない人地球代表だった。
爽やか美少年の仮面の下にかくれた腹黒さは天下一品で、他人を虐めるのが何よりも楽しいと言うドSな性格も併せ持っていた。
その上1日の大半は寝て過ごしているくせに、成績は良い。
聞けば勉強するのが面倒だからって、テストの時だけちょいと山をかけて、その山を全て当てると言う、真面目にやってる僕がバカらしくなってくるような事をやってのけているそうだ。

…それで成績上位ってのがイラっとくる。
…まぁ、僕は同じ山を教えてもらってもそんな成績は取れなかったけどね………

運動神経だって凄く良いし、剣の腕だって僕より全然たつ。

そんな沖田さんと僕は(多分)友達だ。外面に騙された僕が、1年の時に勇気を出して

『友達になって下さい!!』

なんて言っちゃったからだ。
初めの内は沖田さんも僕の前ではネコを被っていたらしく、僕も憧れの人と話が出来るだけで舞い上がって、沖田さんの後ばかり着いて歩いていた。

…おかげで今や僕は部活では『沖田係』にされてしまった…

道場の片隅で寝込む沖田さんを起こしたり(寝起きは異様に悪い。と、ゆうより起きない。)どっかに隠れて寝ている沖田さんを探してきたり、朝練に出て来ない沖田さんを引っ張って連れてきたり…

何!?僕は沖田さんの目覚まし!?目覚まし!?
連れて行かないと僕が先輩達に怒られるしさぁ…

短時間で百面相していた僕を、優しげに見つめる沖田さんと目が合って、ちょっと気まずい。
どーせまた何かイジワルな事考えてんだろうな。
自然と彼を見る目がジト目になる。

「沖田さん…おはようございます。悪かったっスね、しけたツラで。」

僕はジト目のまま挨拶を返す。
その表情を見て、楽しそうにニヤリと笑うと、僕の肩に手を回す。

「なんでぃなんでぃ、『憧れの沖田さん』が挨拶してやってんだぜぃ?もちっと嬉しそうな顔しなせぇ。」

「はぁ!?アンタいつの話してんですかっ!!アンタへの憧れなんて、1週間で消えましたよっ!!」

ニヤニヤ笑いの沖田さんの顔を、ぐい、と押しやる。

…近いよ、顔。

「なんでぃ。折角スキンシップして友情を深めようと思ったのに。照れんな、新八。」

「照れとらんわっ!!!!!」

僕が激しく突っ込むと、沖田さんはキレイな笑顔を僕に向けて、僕の手を引く。

「ちょっ…何するんですかっ!!」

「もうすぐ予鈴が鳴りやすぜ?さっさとクラス確認して教室に入りやしょうぜ。」

「イヤ、アンタと同じクラスじゃぁないですからっ!ってかなるな!…なんとか別のクラスでありますようにっ!!」

…僕の願いも虚しく、僕は沖田さんと同じクラスだった………
…早く3年生になりたい………

この1年間、僕がクラスでも『沖田係』になるのは、きっと間違いない。

………誰かコノ人なんとかして………


続く