俺がぼんやりと居間の入口を見ていると、予想外の人物が現れる。
「あっ…姉上っ!?どうして…!?」
まさか、心強い味方って…
「お、来たなミツバさん。妙さん、こちら総悟の姉上の沖田ミツバさんです。」
「初めまして、総悟の姉のミツバです。今日は、そーちゃんのお嫁さんのお家に結婚の挨拶に行く、って近藤さんに聞いて…馳せ参じましたの。」
姉上がうふふ、と笑って背負っていた風呂敷を置く。
何か…今どすん、って言わなかったか…?どんな重さだ…?山崎なんで持たねェんだ後で殺す…
「これ、うちの畑で採れた野菜です。良かったら召し上がってくださいね?」
風呂敷の中には美味そうな野菜がぎゅうぎゅうに詰まってて…
新八はものっ凄い笑顔で良いんですか?と言いつつさっさと冷蔵庫に野菜をしまいに行った…
「姉上…いつの間に畑なんて…お体の具合は良いんですか?」
俺が姉上に聞くと、姉上が又うふふと笑う。
「ほら、私1回死にそうになったじゃない?あの後からすっごく体調が良くって…ご近所の皆さんに教わって作ってみたのよ?」
ほら元気、と言って腕をめくって見せてくれたのは、結構な力瘤…
「いや、元気になりましたな!良かった良かった!!」
近藤さんは大喜びで笑ってるけど、土方と銀の旦那は呆然としていやがる…ってか俺が一番びっくりでィ。
「そーちゃんのお嫁さんは眼鏡っ子かしら?美人さんかしら?」
うふふ、と笑いながら聞いてくるけど…
「姉上…?新八が女だって、良く判りやしたね…」
俺が言うとビックリした顔になる。
「あら、だって女の子でしょう?男の子の格好しているけれど、気配りの出来る素敵な女の子だわ。」
野菜を詰め終わって、お茶を持って戻って来ていた新八が、顔を赤くする。
「あら、貴女の方がお嫁さんね?ふつつかな弟ですが、宜しくお願いします。」
深々と頭を下げる姉上に、新八が恐縮して駆け寄る。
「あのっ!頭を上げて下さいっ!僕の方こそ、宜しくお願いします!!」
あわあわと慌ててる新八の頭を、姉上が優しく撫でる。
新八が真っ赤になってとろん、とした目になる。
…何かヤな予感しまさァ…
新八を従えた姉上が姐さんに近付いていってスッと前に立ち、にこりと笑う。
少し警戒した姐さんが一歩引くけど、姉上はするりと近付いてやんわりと姐さんの手を取る。
「じゃぁお姉さんは…貴女ね?そーちゃんは、我儘で自分勝手でむちゃくちゃな子ですけど、大事な女性はちゃんと守れる子なんです。その女性を置いて、先に居なくなるような事もありません。ちゃんと皆さんの言う事も聞くように言い聞かせます。それでも…認めてもらえないかしら…?」
姉上がじっと姐さんの目を見つめて小首を傾げると、姐さんの顔が赤くなる。
「いっ…いえ!そんな事は…」
「じゃぁ、決まりね!私もこんな可愛い妹が2人も出来るなんて嬉しいわ。」
うふふ、と笑った姉上が2人をぎゅっと抱き締めると、真っ赤な顔をした新八と姐さんが、ガチガチに固まる。
流石姉上、ちゃんと纏めてくれたぜ。
…でも…何か…新八と姐さんの様子がおかしいでさァ…
「わっ…私もお姉さまみたいな素敵な女性の妹になれるなんて嬉しいです!」
姐さんが、胸の前で手を組んで、きらきらした目で姉上を見る。
「あら嬉しい。新八ちゃんのお姉さんは、とっても綺麗ね。」
姉上がうふふ、と笑うと姐さんがぷぅ、と膨れる。
「お姉さま、酷いです!私は妙って言います!」
「あら、ごめんなさい!妙ちゃんね?可愛いお名前。」
2人がうふふと笑い合うと、新八が姉上の袂をきゅっと掴む。
「お姉さま、僕も新八っていうのはイヤです…可愛くないです…」
「そう?可愛いお名前だと思うけど…そうね…じゃぁ新ちゃん!」
「はいっ!」
3人がうふふ、えへへと笑い合う。
…俺の目の錯覚かねェ…3人の後ろに百合の花が見えらァ…
「旦那…俺ァ目がおかしくなったんですかねェ…あの3人の後ろに百合の花が見えらァ…」
俺が遠い目で銀の旦那に話しかけると、旦那も遠い目をしてどっかを見てた。
「イヤ、気のせいじゃ無いと思うよ。俺にも見えるわ、秘密の花園…」
確かに…秘密の花園でさァ…
土方の方を見ると、土方も遠い目をしていた。うっすら笑ってるのが気持ちわりィや。
山崎は…何で写真撮ってんでィ!?
後で新八と姉上の写真は没収でィ。
近藤さんは、仲良くなって良かった良かったってにこにこ笑ってら…流石だぜ、近藤さん…
3人はきゃっきゃっと笑いながら何か楽しそうでィ…
俺らが暫くボーッとしてると、姐さんがポン、と手を叩く。
「じゃぁ決まりですね!」
「うふふ、楽しみだわ!」
「僕もすっごく楽しみです!」
「…何か決まったんですかィ…?」
なんとなく聞いちゃいけねェ事なような気がしたんですが、とりあえず聞いてみると、きゃっきゃっと楽しそうな3人に取り囲まれる。
「沖田君、新ちゃんは貴方の所にお嫁に出すことにしたわ。」
「マジですかィ!?」
姐さんがこくりと頷く。
「でね、私もここに越してくる事になったの。」
姉上がにこにこ笑ってとんでもない事をいう。
「あっ…姉上…?家はどうする…」
「だってお姉さまが1人で遠くに居るなんて!心配じゃないの?そーちゃん?」
「そりゃぁ心配…って…しっ…新八…?」
今、そーちゃんって…
「あ、いけない。お姉さまの呼び方がうつっちゃった。」
「あら、新ちゃんったら。」
えへへ、と笑う新八のおでこを姉上がつん、とつつく。
あれ…?
ソコ、俺の位置じゃね…?
何で姉上が新八とイチャイチャ…
新ちゃんするぅい!と入っていく姐さんと3人で、又きゃっきゃっとはしゃぎだす中に入っていけねェ…
脇で呆然と立ちすくむ俺の肩に、4本の手が置かれる。
「「「「…頑張れ…」」」」
嬉しい筈の新婚生活が、何だか不安になるのは気のせいですやねェ…
気のせいと、言ってくれィ…
END
伍萬打企画で奈々香様にリク頂きました!
続きが書けるとは思って居なかったので、書けて楽しかったです!
なんだか変な方向に進んでしまったんですが…
少しでも楽しんで頂けたら幸いです!!
リクエスト有難う御座いました!!
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