想い出シャシン



遂に僕の高校生活も今日で終わる。
クラスのみんなと会えるのも今日が最後かと思うと、なんだか感慨深い気分になる。
みんなそうなのか、式が終わってもなかなか帰りがたくて教室でおしゃべりしていると、誰が言い出したか忘れちゃったけど、校庭で集合写真を撮ろう、って話になった。

校庭に出てみんな好き勝手に並んだら、やっぱり近藤君が姉上の隣に並んで、姉上に殴られた。
さっちゃんさんは銀八先生にくっつこうとして、軽くあしらわれてる。
姉上と阿音さんも、隣どうしで静かに闘ってるし…
沖田君と神楽ちゃんも、僕の後ろで掴み合いの喧嘩を始めた…コレは…やっぱり僕が止めなきゃいけないのかなぁ…

「新八〜、なんとかしろ〜」

銀八先生が、咥え煙草で面倒くさそうに僕を見る。
アンタ担任なんだから、アンタが止めろよっ!面倒だからっていっつも僕に押しつけやがって…
仕方なく僕が後ろを振り向くと、2人がムキィー!と叫びつつ足を振り上げていた。

「ちょっとっ!沖田君も神楽ちゃんも!アンタら喧嘩するのになんで隣に並ぶんだよっ!ホントは仲良いんだろ…っ…」

なんで僕がいっつもこの2人の喧嘩の仲裁しなきゃいけないんだよ…
仲良いの見せつけられてさっ…
…そうだよね…喧嘩するほど仲が良いって言うし…
今日が最後なんだから…告白とか…しちゃうのかな…

「新八は分かって無いネ!ワタシは新八の隣が良いアル!それなのにこのドSが近くに来るネ!」

「はぁ?俺が立ってる所にオメェが寄ってくんだろ?」

「ダレがオマエなんかの近くに行くネ。」

「俺こそチャイナの近くになんざ寄りたかねェや。」

2人が僕を挟んで又言い合いを始めるけど…
本当に仲良いや…
早く告白しちゃえば良いのに…沖田君のはアレだよね。
好きな娘程いじめちゃう、ってアレ…
神楽ちゃん可愛いもんな…

「大体なァ、志村はヘドロの隣って決まってんだろィ。」

…ちょっ…!?
なっ…何言うんだよ沖田君んんんんんん!!!!!
僕に何の恨みが…でも、そんな事ヘドロ君の前では言えない…
なんで僕ばっかり怖い目に会わなきゃいけないんだよっ!!

ちょっと泣きそうになりながら沖田君をそっと覗き見ると、物凄く意地悪な顔で僕を見てる…
目が合ったら、凄い速さで体ごと逸らされた…

…僕…沖田君に嫌われてるのかなぁ…

ヘドロ君の方を見ると、凄く嬉しそうだ…
めっちゃ期待されてる…めっちゃ仲良しだと思われてる…

「あ〜もうお前らめんどくさい。男は左、女は右に別れろ〜!」

見兼ねた銀八先生が珍しく仕切ってくれると、なんだかんだ言いながらもみんなそれに従う。
なんとなく並んでいくと、思い出したように銀八先生が言う。

「あ、志村姉と阿音も離れろ〜」

あ、意外とちゃんと見てるんだ…そう言う所、やっぱり先生だよね…

「新八君、じゃぁぼくの隣に…」

嬉しそうな顔のヘドロ君が僕に声を掛ける。
凄く怖いけど…実は良い人だもんね、ヘドロ君…

「…うん…」

僕がヘドロ君の横に並ぼうとすると、誰かに横からグイッと引っ張られる。

「おっと、志村はちっせェからこっちだぜィ。ヘドロ君、悪ィけどアンタは大きいから後ろだ。」

沖田君…?
僕がビックリして動けないでいると、グッと僕の手を引いて隣に並ばせる。
助けて…くれたのかな…?凄く嬉しい…

後ろを振り返ると、ヘドロ君が一番後ろに移動するのが見えた。
ヘドロ君に悪い事したかな…
でも…僕が沖田君の隣に並べるなんて初めてだから…
だから…ごめんなさい、ヘドロ君。

改めて意識すると、体中が熱くなってしまう。
だって、手…繋いでるんだもん…僕の心臓の音…聞こえちゃわないかな…?
自由でカッコ良くて可愛くてたまに優しくて…僕の憧れだった沖田君…
どうせこんな事沖田君の気紛れなんだろうけど…それでもすっごく嬉しい…

山崎君がシャッターをきる時に声を掛けた瞬間、沖田君が僕の手をぎゅうと握ってくれた。
それがどんな意味だったのかは分からないけど、僕もぎゅうと握り返した。



出来あがった写真は、酷く恥じらった僕と、照れた顔をした沖田君が隣同志並んでいた。
勿論、この写真が僕の宝物になったのは、言うまでも無い。


END


八萬打記念小説は、3Z小説の表紙を見て浮かんだネタを形にしてしまいました。
フリーにしますので、宜しければお持ちください。
いつもの如く、使う時はご連絡ください。