誕生日だからって何でもやっていい訳じゃない。
今日は俺の誕生日。
俺から言うまでもなく、近藤さんが非番にしてくれた。
「非番だぞ。」
と言った時のニヤニヤ顔がちょっと気になりやすが…まぁ、良いか。
その上今日は新八の家にお呼ばれしてるんでさァ!
新八ときたら、うるうるした上目使いで
「7月8日は沖田さんの誕生日ですよね…?その日は1日、僕にくれませんか…?僕の家でお誕生日のお祝いさせて下さい…姉上、すまいるの社員旅行で居ないんです…」
とか言われた日にゃぁ、何をプレゼントしてくれんのかは一目瞭然でィ!
きっと俺が新八ん家の玄関開けたら立ってんでさァ!
全裸にリボンを巻いただけの新八が!!
そんでそんで!うるうるした目で全身を真っ赤に染め上げていうんでさァ!
「そーちゃん…お誕生日おめでとう御座います…僕がプレゼントですっ…食べて…?」
なーんてな!なーんてな!!
残さず戴きやすぜー?
いつもは手加減してやすけど、今日はプレゼントでィ!足腰立たなくなるまで可愛がってやりまさァ!
丁度昼頃、俺がウキウキと新八の家まで行くと、珍しく門が開いている。
邪魔されちゃ堪んねェや。
ギギギ…っという音をさせながら、きっちり門を閉める。
そして、玄関前まで行って一旦止まる。
いつもなら勝手に入っていくんですがねェ…今日は違いまさァ。
ホラ、準備とか有るだろィ?
ブ――――ッ、と呼び鈴を鳴らすと家の中から
「開いてますから入って来て下さい―!」
という声がする。
オイオイ、俺じゃなかったらどうするつもりでィ。
期待に胸を膨らませながら一気に扉を引き開けると、そこには誰も居ねぇ…
アレ…?
あ、新八は恥ずかしがり屋さんだからねェ、居間で待ってんのか?
玄関の鍵をきっちり閉めて、一応新八の部屋を覗いてみる。
…やっぱ居ねェか…流石に寺門さんの前じゃぁあんな事やこんな事は出来ねェか。
俺がいそいそと居間に入っていくと、テーブルの上には所狭しと料理が並んでいる。
オムライスに唐揚げにスパゲティにハンバーグにカレーライスにグラタンに…俺の好物ばっかじゃねェか…
「あ、沖田さんいらっしゃい!わざわざご足労頂きまして有難う御座います!」
新八ィ!
俺が期待して振り向くと、きっちり着物を着込んだいつもの新八が、割烹着と三角巾をつけて笑ってる。
………せめて裸エプロン………
「…気にすんねェ…新八が望むなら、何処にでも行きまさァ…」
俺が言うと、新八の頬が染まる。
「…優しいんですね…本当は、僕が屯所に行こうかと思ってたんですけど…お料理冷めちゃうし…近藤さんに皆さんに食べられちゃう、って止められたんで…」
えへへ、と笑う新八が可愛い…こんな顔見れただけで、ここまで来た甲斐が有るってもんでさァ。
「もうちょっと待って下さいね?後少し運んできますから!」
テーブルに酢豚を置いて、ととっ、と台所に走る。
なんでィ、まだ有るのか?
「俺も手伝いまさァ。」
俺が新八について台所に入ろうとすると、ぐるっと振り向かされて背中を押される。
「沖田さんは座ってて下さいっ!今日の主役なんですからっ!」
一か所だけ座布団の敷かれた所に座らされて、ぼんやりと座って待ってると、新八が両手にタコさんウインナーと卵焼きと肉団子を持って現れて、テーブルの上にとんとんと置いていく。
「後1つですから、もう少し待ってて下さいね?」
「おぅ。」
台所に引っ込んだ新八を見つつ、肉団子を1つ口に運ぶ。
やっぱ美味ェや、新八の料理は。
もぐもぐと噛み砕いてると、ケーキを持って戻ってきた新八が目を吊り上げる。
「あっ!沖田さん!つまみ食いしたでしょっ!?」
「ふっへへえほ?」
「口動いてるし!ちゃんと喋れてないでしょうがっ!」
…そんな怒る事ねぇじゃねぇか…
「…我慢出来なかったんでィ…美味そうな匂いしたし…」
俺の腹が、ぐうと鳴る。
くすりと笑った新八が、ケーキをテーブルの真ん中に置いて三角巾と割烹着をとる。
ケーキの蝋燭に火をつけて、にっこり笑って俺を見る。
「ごめんなさい、お待たせしました………そーちゃんお誕生日おめでとう御座います…火、消して下さいね…?」
「し…んぱち…?今…そーちゃんって言った…?」
「きょっ…今日だけですからねっ!今日は誕生日だから…だからですからねっ!」
俺がにっこり笑って蝋燭の火を吹き消すと、赤い顔をした新八が、パチパチと拍手をしておめでとう御座います、と言ってくれる。
「誕生日プレゼント、何が良いかなって思ったんですけど僕あんまりお金が無くて…」
「その割には豪華ですねェ。」
「はい!今日沖田さんを非番にして下さいってお願いに行ったら、近藤さんが資金提供して下さったんです!近藤さんにも御礼言って下さいね?」
「判りやした…もう食っても良いんで…?」
「あ、はいどうぞ!そーちゃんの好きな物、沢山作ったんです…美味しく出来たかな…?」
心配そうに俺の顔を覗き込んでくるんで、手前にあったカレーとグラタンを食べる。
「んめぇ!」
俺が笑うと新八も笑う。
「どんどん食べて下さいね?」
新八の笑顔につられてモリモリ食っていくと、新八も端からちょこちょこ食べていく。
やっぱ新八の飯は美味ェや…毎日食えっと良いのにねェ…
全部を食べ終わった頃にはすっかり満腹になった。
「ごっそーさん」
「お粗末さまでしたっ!そーちゃんお腹一杯になっちゃいました…?」
心配そうな顔で俺を見てくるんで、ニヤリと笑ってやる。
「おー、満腹でさァ。でも、ケーキは入りやすぜ?」
「良かった!」
新八が嬉しそうに笑ってケーキを切り分ける。
俺ァその笑顔だけで、腹一杯でィ。
今日はずっと笑ってくれてるねェ…いつもこうなら良いのに…
ケーキも食ってまったりしてると、後片付けを終わらせた新八が居間に戻ってきて俺の隣に座る。
…アレ…?まだ服着てらァ…
「新八ィ、おめぇ近藤さんに俺の非番を頼みに行ったのかィ…?」
俺が聞くと、新八が頬を染める。
「…はい…プレゼント買えそうも無かったんで…せめて…と思って…」
「近藤さんが金出してくれなかったら、何くれるつもりだったんでィ…?」
俺が期待満々で聞くと、新八は苦笑いする。
「今日作った料理の中でどれか1つとケーキですかね…すごくちっちゃいケーキになったと思いますが…」
……どっちに転んでも料理ですかぃ……
イヤ、美味かったけど…美味かったけどねェ…もっと金のかからないプレゼント、有るだろィ…
「…なんでィ…」
俺ががっかりすると、新八が慌てる。
「えっ!?そーちゃん嬉しくなかった?どうしよう…やっぱり何かプレゼント買っておけば良かった…!」
「…品物だけがプレゼントとは限らねェぜ…?俺が1番好きなもの、新八は知らないんで…?」
「えっ…!?」
新八がおろおろしながら辺りを見回す。
「えっと…駄菓子とか…?そーちゃんの好物は今日全部作ったし…」
「まぁ、ある意味食いもんですがね?」
俺が言うと、はっとした顔になる。
よしよし、やっと判って…
「お酒ですかっ!?駄目ですよっ?そーちゃんまだ未成年なんですからっ!!」
「…酒も好きですがねェ…もっと好きなモンが有るんでさァ…」
「えっ…えっと…えっと…」
キョロキョロと辺りを見回す新八との距離をそっと縮めると、涙目で俺を見上げる。
「僕…そーちゃんの事何も知らないんだ…一番好きなもの、分かんないよっ…」
…誘ってるだろ、コレは…
俺が新八をぎゅうと抱き締めると、新八がびくりと跳ねる。
「残念、時間切れでさァ。何で判んねェかなァ…俺が一番好きなのは、新八でィ。全裸にリボン巻いて、僕がプレゼント、ってやれィ。」
「ばっ…ばっかじゃない!?途中まで感動したのに台無しだよっ!そーちゃんのばかっ!」
馬鹿馬鹿言う割には俺にぎゅうと抱きついてくるじゃねェか。
何て言われようが、やっぱり俺には新八が一番のプレゼントでィ。
手の中に納まってるだけで幸せな気分にならァ。
そっと新八の顔を持ち上げて、俺の顔を近付けると、そっと目をつぶる。
よし、おっけーなんですねィ?
ゆっくりとメガネをはずして更に近付いて、もう少し、って所でふっと呟く。
「いただきやす。」
ばちっと目を開いた新八が何か言おうとするけど、言葉は全部吸い取った。
残さず戴きやすぜ?だからプレゼントは新八をくだせェ。
良いだろィ…?
良いよねェ…?
END
沖田さんはぴば!!
遅くなってすんまっせん…
宜しかったらフリーでどうぞ。
使う時だけ連絡プリーズ。
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