頑張れ!クリスマス
毎年なんだかんだで誤魔化してたクリスマス。
だってよぉ、金なんざ無かったんだもんよぉ。
でも、今年は2人に秘密でちっとばかし夜にバイトしたから、何かプレゼントしちゃおうかな〜?なんて思ったワケよ。
あ、夜のバイトったって、かまっことかじゃねぇからな!
銀さんの名誉の為に言っとくけど、そんなんじゃないからな!!
ホラ、暮れになるとやたらとやってる工事現場でちょっと頑張っちゃっただけだからな!!!
…まぁ、たまには?アイツらの喜ぶ顔なんて見てみたいかな〜?なんて思うワケだ。
ちびっこ達は何が欲しいのかね〜?
ちょっとだけウキウキしながら万事屋に帰ると、いつものように神楽はソファに寝っ転がってテレビを見てて、新八は晩飯の支度をしていた。
「たでいま〜っと。」
「あ、銀さんお帰りなさい。」
「おかえりヨ〜」
うん、良いもんだね。
家に帰ったら誰かが居て、おかえり〜。なんて言ってくれるのは。
さてさて、サクサク聞いてみようかね〜
「おぅ、オメェら今年のクリスマスはサンタに何お願いするんだ?俺に言ってみ?言っといてやるから。」
俺がそう言うと、一瞬動きの止まった2人が、にひっと笑う。
何だよ…サンタの底力知らねぇな?
「何だ?言ってみ?神楽はやっぱアレか、肉まんか?ピザまんとかカレーまんでも良いんだぜ?」
俺がそう言ったら、ビックリした顔になる。
「え…?そんなゼイタクして良いアルカ!?」
「おうよ。何なら2個でも3個でも良いんだぜ?」
「じゃっ…じゃぁ…ピザまんとキーマカレーまんと…特選肉まんが良いアル!」
神楽が恐る恐る言ってくる…何だよ何だよ、そんなんで贅沢なのか?コイツ…ちょっと泣きそうだぜ?銀さんは…
「お〜、言っとくわ、サンタに。で?新八は何が良いんだ?あんまんか?」
「えー?そうですね…」
ま、どうせコイツの事だ。お通ちゃんのCDが良いですぅ〜、とか言うんだろ?
「じゃぁ、沖田さんのバナナが良いです。」
「…は………?」
「だから、沖田さんのバナナが食べたいです。」
…ばっ…バナナ…?バナナっつったらバナナだよな。あの…黄色いアレ…ってか沖田君の、って付いてたよな…
………って事はアレか…?あの…俺らの股にぶら下がってる…例の…アレ…か…?
「あ〜…そればっかりは銀さん…いや、サンタでもどうにも出来るもんじゃなくてだな…?そりゃぁ、本人同士の合意ってヤツがねぇとだな…?」
俺がボソボソ言っても、新八と神楽は俺を無視してキャッキャッと話しだす。
「おー、悔しいけどアイツのバナナは美味かったアル!」
「えっ!?ちょっ…神楽…?」
「忘れられないよねー?アレ。」
「しっ…新八君…?」
何コレ何でこの2人食べちゃってるの!?
「あんな太くておっきいの、食べた事無いよ、僕!」
えっ!?他にも食べちゃってるの!?新八君っ!?
「ワタシなんか初めて食べたヨ!」
かっ…神楽…なんで頬染めてんだよっ!?
………ダメだ…何かスゲーショック…
コイツらのそんな話は、知りたく無かったよ…銀さん…
2人が盛り上がってる中、とぼとぼと万事屋を後にする。
…仕方ない…沖田君に頼みに行こう………
◆
「アレ、絶対、億曳屋のバナナだよねっ!」
「おう!マダオのバナナなんか目じゃなかったネ!」
「アレ食べられるんだったら、僕又入院しても良いくらいだよっ!」
「ワタシもネ!新八、サドヤローにおねだりシロヨー」
「えー?やだよ、後が面倒くさそうだもん。ほら、今年はサンタさんが買ってくれるらしいから。ねー?銀さ…あれ?銀さんは?」
「いなくなったアル。きっと早速バナナ買いに行ったネ!」
「そうだね!銀さんはバレてないと思ってたみたいだけど、僕らに隠れてバイトしてるの知ってたもんねー?」
「ねー?」
「バナナ楽しみだねっ!」
「おうよ!ワタシのピザまん、少し新八にもヤルヨ!」
「有難う、神楽ちゃん。」
◆
そして12月24日。
俺が土下座した甲斐が有って、沖田君は素直に万事屋に来てリボンを掛けられてくれた。
神楽のまんじゅうも買った事だし、鳥の足とかケーキも買ってきた。
部屋は2人が飾り付けしたらしくって、折り紙とかで飾り付けられてる。
俺はサンタの衣装を借りて来て着込んだ。
さて、いよいよパーティーだ。
俺としては複雑な心境だが…まぁ、子供は成長するもんだ。そう思って諦めよう…
「んじゃ沖田君、頼んだ。」
「まぁ、任せて下せェ。俺としても願ったり叶ったりでィ。」
ニヤリと笑うコイツのドコが良いんだか…新八にしか分かんねぇか…
「んじゃ、行くぜ。」
「へい。」
がらりと戸を開けて、
「「めりーぃくりすまぁーす!!」」
と飛び込むと、一瞬喜んだ2人が顔を顰める。
「何でドエスが来るネ!?」
「や、沖田さんが銀さんと仲良しなのは良いですけど、何でリボン掛けてんですか…?」
…アレ…?何か雰囲気おかしくね?
2人とも照れ隠しじゃなくて、マジで嫌がってね?
神楽はそうでも新八おかしくね?
「いや…ぷれぜんと…」
俺が神楽に肉まんの袋を渡すと、キャッホー!と飛び上がる。
新八の方に沖田君を差し出すと、新八の眉間の皺が、更に深くなる。
「だから、何で沖田さん?」
ものっすごく怪訝な顔の新八に、沖田君が抱きついてぼそぼそと何か言ってる。
途端、真っ赤になった新八がものっすごい勢いで抵抗を始める。
「なっ…何でそうなるんですかっ!?僕が言ってたのはお見舞いに貰ったバナナですっ!!おっ…沖田さんの…っなんてっ…食べませんからっ!!」
「…えっ…?」
「なんでィ。折角チャンスだと思ったのにねィ、旦那の勘違いですかィ…土下座までしたのにお疲れさんでした。」
新八をがっちりホールドしたままの沖田君が俺をちろりと見て、ふふんと笑う。
なんかイラッとするなぁ!
「もうっ!沖田さん離して下さいってばっ!銀さんもっ!何ぼーっとしてるんですかっ!?バナナ買って来て下さいよっ!僕ら楽しみにしてたんですよっ!?億曳屋のバナナですからねっ!!」
「あ、旦那。ついでにケンタ買って来て下せェ。あ、寿司も。」
「はぁ?何で俺が…」
「プレゼント…楽しみにしてたのに…」
未だに沖田君の腕の中でバタバタ暴れてなんとか脱出しようとしている新八が、涙目で俺を見る…
やべ、クリスマスだってのに子供を泣かせる訳にはイカンだろ…
「早く帰ってこないと新八喰っちまいやすぜ〜?」
更に腕の中にぎゅっと新八を抱きかかえた沖田君が、わっるい顔で笑う。
さっきまでジタバタ暴れていた新八が、抱え込まれてぐったりと動けなくなる。
まっ…マズイ…マジで新八が喰われる!!
沖田君がひらひらさせてる壱萬円札を引っ掴んで、俺はダッシュでバナナとケンタと寿司を買いに走った…
END
クリスマス…
何か甘ったるい沖新にしようかと思ってたのに、何故かこんな事に…
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