そして、バレンタイン当日。

俺が見廻りをサボって意気揚々と新八の家に行くと、新八は既に色とりどりの箱に囲まれていた。
その中には当然、山崎が作ってたチョコの箱も有る。あ、アレは近藤さんがおまけに作ってた…土方が買ってたヤツも有らァ…

「おー、新八モテモテですねィ…」

「あ、沖田さんっ!当分おやつに困らないですよー!みんな僕がバレンタインにチョコ貰えないと思って気を使ってくれてるんですよ。」

嬉しそうににこにこ笑う顔は可愛いし…ヤツらの気持ち、判ってねェけど…なんかイラッとすらァ…

「ほい、俺からもやらァ。今年のばれんたいんは男からチョコやるみたいですぜ?」

「えっ!?マジですかっ!?」

「手作りでィ。有難く喰いやがれ。」

俺がそう言うと、とろけそうな笑顔をくれる。

「沖田さんの手作りって…なんか怖いなぁ…でも嬉しいです!有難う御座います!!」

「味は保証済みでィ。近藤さんも山崎も喰ったから安心しろィ。」

「えっ…なんで…?まさか沖田さん皆に配ったとか…?」

新八がゲッ…って顔で俺を見る。
何か誤解してやがるぜ…

「んな訳あるかィ、一緒に作ったんでィ。山崎のソレ、俺が作ったチョコ使ってるからねィ。」

「えっ、そうなんですか?手作りって自慢してたのに…山崎さんって意外と腹黒なんですね。」

ふふふ…と笑う顔がちょっと怖ェ…新八は怒らしちゃ駄目だな…

「とっ…とりあえず喰ってみて下せェ!」

「はい。」

嬉しそうにリボンをといて、ぱかりと蓋を開けるとふわりとチョコの甘ったるい匂いがする。

「わぁ凄いっ!本当にこれ沖田さんが作ったんですかっ!?」

「おう」

「えへへ、食べるの勿体無いや…でも、折角なんでいただきます!」

そう言ってぱくん、と口に放りこんでもぐもぐと口を動かす。
と、はっと目を見開いて幸せそうに笑う。

「おいしーいっ!山崎さんのもコレと同じなんですよね?先にそっちを食べて、これはゆっくり食べますね?」

幸せそうに笑う顔を見れただけで、俺も幸せになっちまう。
チョコ持って来て良かったでさァ!

「あー、でもこんな美味しいの貰っちゃったら、僕の出しづらいなぁ…あのね?僕も沖田さんにちょこ作ったんれすよ?」

…あれ…?新八がちょいおかしい…
真っ赤な顔で…いつもならある程度距離をとってんのに、今日は俺の腕にくっついてきやがる…その上なんか舌っ足らずだし…
イヤ、可愛いけどねィ…

「沖田しゃん聞いてましゅ?しょれとも…僕のちょこにゃんていらないでしゅか…?」

悲しそうな顔で上目遣いなんてされたら…手ェ出ちまうよな?な?
ちゅっ、と軽くきっすをして笑いかけると、新八もにこりと笑う。

「俺が、大好きな新八のチョコ要らねぇ訳ねェだろィ。すっげー楽しみでィ!」

俺がそう言うと、とろけそうな笑顔再び。
なんでィ、今日はサービス満点でさァ。

「あのね?僕もだいしゅきな沖田さんの事、一杯考えながら作ったんらよ?」

えへへー、と笑いながら、俺の手を引っ張って連れて行ったのは冷蔵庫の前で。
じゃーんっ!と言いつつ開いた中には綺麗なチョコレートケーキ。

「…スゲェ…ケーキだ…」

「沖田しゃん甘い物しゅきだから、頑張ったんらよ?僕っ!」

「…俺の為に…?」

俺が新八をじっと見降ろすと、潤んだ瞳で新八が俺を見上げる。

「…沖田しゃんらけの為に作ったんらよ…?」

そう言って、スッと目を閉じるんで、ちゅうと唇を奪って舌も差し込む。

でも…いつもなら可愛らしく応えてくれるのに…今日は何の反応も無ェ…
何でだ…?新八ィ…
唇を離して新八の顔を覗き込むと、凄く幸せそうな顔で、すーすーと寝息をたてていた。

「…新八ィ…?」

まさかコイツ…チョコに入ってた酒程度で酔っ払って…?

とりあえず冷蔵庫のドアを閉めて、新八を抱き上げて居間に運ぶ。
毛布毛布…っと…


ケーキを喰うのもそれ以外も。
新八が起きるまでおあずけですねィ…
ま、バレンタインディはまだまだ有らァ!
それまでは、この幸せそうな寝顔でも堪能してまさァ。


END