「誰からかァ知らねェが…お前さんに逢えるなんざ誕生日プレゼントなんだろィ?遊びに行きやしょうぜ。」

スッと離れて僕の手を掴んで走り出す。
ご飯を食べて、買い物に行って、公園で一休みして、手を繋いで散歩する。

なんとなく…なんとなくなんだけど…
この沖田さんは、ちょっと先の沖田さんなんじゃないかと思う…
物腰が、ちょっと柔らかくなっていて…ベタベタに優しい。
ちょっとした事にも気付いてくれるし…なにより顔が…大人の男の人だし…
カッコよすぎてドキドキが止まらない…

僕は…僕も大人になれてるのかな…?
沖田さんに釣り合うような…カッコいい大人になれてるのかな…?
僕がぼおっと沖田さんの横顔を眺めていると、不意に振り向いた沖田さんが僕の頬にキスをする。

「新八ィ…抱きたい…」

そんな事を聞き慣れない低音で…耳元で囁かれたら…
足に力が入らなくなってしまう…
ぎゅっとしがみつくと、そっと肩を抱かれて、近くの建物に入ってしまう…あ…

そこはホテルで…
僕はこの沖田さんと…シてしまった…

「…沖田さん…貴方は幾つの沖田さんなんですか…?」

「…さぁねィ…幾つに見える?」

「…どこぞのおねーちゃんかよ…」

僕が突っ込むと、変わらないねェ…と言って笑う。

「俺ァ…新八くんの人生に関わっちまったのを…イヤ、何でもねェ。」

「なんですか?途中で止められたら気になりますよ…優しいと思ったのに…やっぱドSじゃん…」

僕が膨れると、柔らかく笑ってキスをくれる。

「…余計な先入観、与えたく無いんでィ…でも…これだけは覚えてなせェ…俺は大丈夫だから…俺なんざ…庇わなくても…大丈夫だから…」

「沖田さん…?」

「好きでさァ…大好きでィ…愛してまさァ…」

ぎゅうっと僕を抱きしめる腕が、一瞬消えて、一回り小さいものに変わる…

「…沖田さん…?」

「…新八ィ!?」

顔をあげると、いつもの沖田さんで…
目にいっぱい涙をためて、ぎゅうっと抱きついてくる。

なんだか良く分からないけど…やぱり今の僕は、今の沖田さんが一番好きなんだ…

ぎゅうっと抱き締めると、変わらないぬくもり…
何故だか、僕も涙が溢れた。





ほんの一瞬の夢のような出来事は…
新八を失って駄目駄目だった俺に、新八が贈ってくれた、最後のプレゼントだったんだろうか…

それが何でも、夢だとしても、俺はなんとかやっていける…

「それにどうせ…俺だってすぐお前ェの所に行けるさ…」

「…誰がどこに行くんですか?」

それは、さっきまで聞いてた声よりも、幾分大人びた落ち着いた声…

「…新八ィ…?」

「アンタ、何やってくれちゃってるんですかっ!?いくら僕だからって、浮気ですからね!許しませんよ?」

許さないと言いつつ、ふんわりと笑う顔は…俺が逢いたかった新八で…

「…新八…おかえり…」

「総悟さん、貴方も。」

もう二度と離れないように、力一杯抱きしめたら、痛いと叫んで殴られた…
あぁ…新八だ…
もっとぎゅっと抱きしめると、新八も、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。

幸せな誕生日は…始まったばかりだ。


終わり



沖誕…
祝って…無い事も無いと思います。
ネタを考えたら、大人沖田が浮かんだんでこんな事に…

色々失礼しました。