真ん中の日



どうでも良い時にはサボってる暇が有る割には、それぞれの誕生日が有る時期には何だか忙しい。
その時期にはちゃんと時間がとれなそうなんで、2人の誕生日の丁度真ん中の日に一緒に祝う事にした。
数えていくと1日にはならなかったんで、2日間目一杯祝おうと思ってやしたのに、非番は1日しか貰えなかった。

チッ…土方コノヤローめ、俺に嫉妬してやがんな。面倒くせェヤツだぜ…

俺がしょんぼりしながら新八にその事を言った時、それでも新八は嬉しそうでその日をすげェ楽しみにしてくれた。
だから、真ん中の日はずーっとイチャイチャベタベタしてやる事に決めた。
新八も、頑張って下さいね?とか言ってたし。

夜が楽しみすぎて仕事なんかやってらんねェ!それでもやっと貰った非番を取り消されちゃ敵わねェ。
仕方ねェんで1日ちゃんと仕事して、勤務が終わってから私服に着替えて新八ん家に向かった。
ケーキも買ったしケンタも買った。この組み合わせはなんかめでてェ感じだろイ?
今日は姐さんも仕事だって言うし、明け方までのんびり出来るし…
さぁて、覚悟しろよ?新八ィ…これでもかってぐらい祝ってやらァ!



意気揚々と新八ん家の門をくぐる。
俺を迎えるように大きく開け放たれた門をくぐってキッチリ閉める。邪魔されちゃァかなわねェからな。
いつもはそのまま普通に入って行くけど、今日は呼び鈴なんか押してみる。

「はーい、どちら様ですか?」

「俺でィ。」

「あ、沖田さんっ!」

ぱたぱたと音がして、新八が満面の笑顔で迎えてくれる。
なんでィ…今日は特に可愛いじゃねェか…
やっぱ新八も、ノリノリのエロエロなのか!?

………まぁ落ち着け自分。
イキナリがっついたら格好悪ィぜ、山崎じゃあるめェし。

とりあえず、手に持ってたケーキとケンタを持ち上げると、新八がニッコリ笑う。

「有難う御座います!ケーキが有るとなんか誕生日っぽいですよね!」

「おぅ、ケーキは無いとな。」

俺も楽しくなって笑うと、新八が早く早くと小走りで行ってしまう。

はしゃいじまって…マジ可愛いねェ…

俺がワザとゆっくり居間に行くと、そこは折り紙のわっかで飾られてて…なんだかちょっと恥ずかしくなった。

「新八ィ…お前さん、コレ1人で飾り付けしたんかィ?」

「はい!今日は万事屋お休み貰ったんです。あ!勿論明日も。」

…スゲェ嬉しそうなんで、ダセェとは言わないでおこう。

「沖田さんはこっちに座って下さいね?」

ふかふかになってる座布団に座らされて、頭に三角帽子をかぶせられる。
…新八の誕生日会のイメージってェのは子供だねィ…
でも、スゲェ自慢気だから…目の前に有った目の前に有った鼻メガネも掛けてみる。

「あはっ、沖田さん、鼻メガネ似合いますね!」

「そりゃ、美少年は何着てても似合うんでさァ。」

「うわっ、自慢気ー!僕だって…」

えいっ!と掛け声を掛けて、新八も鼻メガネを掛ける。
期待に満ちた目で俺を見てるけど…似合う、って言った方が良いんですかねェ…

「…あー…新八も似合いやすよ?色んな意味で…」

「…別にこんなの似合わなくたって良いですもん。」

ぷぅ、と膨れる顔は可愛らしくて…思わず笑っちまう。

「あー!笑うほど変ですかっ!?ちょっと傷付いちゃいますよ、僕…」

「そんな事ねェよ?あんまし可愛くってほわーっとしてんでィ。」

新八の頬に手をあてて、そっと近付いてチューをする。
ぎゅうと俺に抱きついてくれる仕草が可愛い…


ぐぅぅぅぅ―――――――っ………


…空気読めねェなァ…俺の腹………
それに、良く考えたら三角帽子と鼻メガネ仕様じゃねェかよ…格好悪ィ…

「…お腹すきましたね…」

「おぅ!ケンタが冷めちまわぁ。喰いやしょうぜ!」

今の格好でがっついちまったを誤魔化したくて、ちょっとおどけて言ってみると、俺に抱きついたままの新八が又膨れる。
…なんでィ…?

「もう、ズルイな総悟さんは…こんな格好でもカッコ良いなんて…どれだけ僕をドキドキさせるつもりなんですか…?」

なっ…何言い出すんでィ!?コイツ…
俺を殺す気だ…キュン死にさせるつもりでさァ!!

「しんぱ…」

「僕、総悟さんの好物も作ってるんですよ?すぐに用意するんでちょっとだけ待ってて下さいね?」

ぎゅうと抱き締めて、もう一回チューしようとしてたのに…新八はするっと逃げちまった…
仕方ないんで、ふかふかの座布団に座って待ってると、つまみと熱燗をおぼんに乗せた新八がスキップしてくる…って危ねェ!なんかピチャピチャってはねてるぜィ!?

「えへへ、今日はちょっとサービスです!沢山は無いけどお酒買ってきちゃいました!」

はい、どーぞ。とか新八が酌してくれるなんざ…
アレ?コレ夢じゃね?
ぎゅーっと顔を抓ってみると、スゲェ痛ェ…

「夢じゃねェ…」

「何言ってるんですか?変な総悟さん。」

くすくすと笑われて、なんとか我に返る。
あぁ、夢じゃねェ。
今日は特別な日だもんな。

ケーキにロウソクを点けて、新八のゴッドボイスを聞いて…2人でロウソクの火を吹き消す。
御猪口で乾杯したら、2人でぐいっと空ける。
新八酒弱いのに…大丈夫か…?
ちょっと冷めたケンタを喰ってると、台所に引っ込んだ新八がオムライスを持ってくる。
…ケチャップで『そうごさん』とか書いてある…

「この間恥ずかしくて嫌だ、って作ってあげなかったから…今日は誕生日だから…特別ですよ…?」

そんなの、別にどうしてもって訳じゃなかったのに…
チャイナがやたら自慢するから悔しくて言っただけなのに…
俺ですらすっかり忘れてたような小さな事まで覚えててくれる事が…すげぇ嬉しい…

「有難う…ごぜぇやす…」

俺が笑うと新八も笑う。

「僕のオムライスには、総悟さんが書いて下さいね?」

はい!とケチャップを渡されるんで『メガネ』と書いてメガネの絵も描いてやったらケチャップで叩かれた。
それが又楽しくて、笑い合って食事を続ける。
楽しいままでケーキまで喰い終わって、後片付けは2人でした。
なんか…新婚みてェだ…

流石に風呂は別々に入って、新八の寝巻きを借りて布団に潜り込む。
別々に敷いて有るのが不満ですがねェ…新八もがっついてるように見られたくないんだろうぜ!

暫く、布団に潜り込んだまま話をする。
そろそろ…良いかねィ…?
スーハーと呼吸を整えて、いざ新八の布団に潜り込むと、スースーと可愛らしい寝息を立てて寝ちまってる!?
そんな!ほんの数秒しか経ってねェじゃねェか!!お前はの○太か!?

「しっ…新八ィ…?」

肩を揺すって起こしてみると、ほにゃりと笑って抱きついてきた。
なっ…なんでィ、起きてんじゃねェか…
そのまま距離をとって…とって………
なんて馬鹿力でィっ!!やっぱ寝てんのかよ!?

その寝顔がえらく幸せそうなんで、俺はそのまま新八を抱きしめて眠りについた。


END