真ん中の日2
空は憎らしい程快晴で、絶好のお出かけ日和だ。
僕はちょっと腰がダルいけど、それでもやっぱりワクワクしてる。
幸せな気分で隣を見ると…あれ…?沖田さんがいない…?
ノソノソと起き上がって辺りを見回すけど、やっぱり沖田さんはいない…
「…総悟さん…?」
だんだん不安になってきて、キョロキョロと見回しても、やっぱりいない。
「…そおご…?」
「新八ィー!良い天気ですぜ?さっさと飯喰って出掛けやしょうぜー!!」
ガバッと抱きついてきた総悟さんは、僕の割烹着を着てて…三角巾までかぶってた。
「えっ…まさか…総悟さん朝ご飯作ってくれたんですかっ!?」
「もっちろんでさァ!さ、さ、早く起きなせェ!それともおはようのチューしねェと起きらんねぇかィ?仕方ねェ甘えん坊さんだねェ、新八くんは。」
「へっ…!?」
僕の意見なんて全く聞かない内に、濃厚なキスをしてくるし…
もぅ…自由な人なんだから…
たっぷりとキスを堪能してから、身支度を整えて居間に行くと姉上が食後のお茶を飲んでいた。
あれ…?その割には可哀想な卵が無い…?
「あら新ちゃんおはよう。昨日と今日がお誕生日会なんですって?沖田さんに聞いたわよ。終わったらちゃんと片付けてね?」
そういえば…飾り付け取って無かったっけ…
その割には、姉上にこにこ笑ってる…怒って無いのかな…?
「はい、あの…本当の誕生日の頃には沖田さん忙しいんで…」
「じゃあ、その時は私がお祝いしてあげるわね。」
うふふ、と綺麗に笑ってくれると、僕も自然と笑顔になる。
「有難う御座います!姉上!!」
「お待たせしやした!」
ちょうど良いタイミングで、沖田さんがお皿を持ってくる。
わ…トーストにハムエッグにコーヒーだ!
いつも和食だから、なんか新鮮だよ…!!
「わー、凄い!洋食なんてなかなか食べる機会無いですよ!」
「…和食の方が良かったですかィ…?」
沖田さんがしょんぼりするんで、僕は慌てて言い募る。
「や!そんな事無いですよ!すっごく嬉しいですっ!!」
「そうよ、沖田さん気にしないで?新ちゃんはダサメガネだから納豆がお似合いなのよ。」
「ちょ…姉上ェェェェェェェェェェ!?」
「…納豆作り直してきまさァ…」
しょんぼりしたままの沖田さんが、台所に戻ろうとするんで慌てて引き留める。
「だから!嬉しいですからっ!!」
卓袱台に置かれたお皿からトーストを取って食べる。
わっ…凄く美味しい!!
「美味しいです!トースト…ですよね…?でもコレなんか柔らかくて甘い…」
「フレンチトーストでさァ!」
えへへ、と笑う姿にドキリとしてしまう。
割烹着…似合うよね…
「折角だから、新ちゃん沖田さんをお嫁に貰っちゃいなさいな。」
あー、お嫁さんか…良いなぁ…ん?お嫁さん…?
「あっ…姉上ェェェェェェェェェェっ!?」
何言って…
「姐さん、良いんですかィ?」
イヤイヤイヤ!沖田さんもソコ食いつかないっ!!
「ええ。」
姉上ェェェェェェェェェ!?
何真顔で肯定してるのォォォォォォォォ!?
全く邪気の無い笑顔でニッコリ笑われてもォォォォォォ!!
「や、ちょ、姉上っ!?」
僕が姉上に詰め寄ろうとすると、沖田さんがぎゅっと抱きついてくる。
「新八ィ、折角姐さんが認めてくれれてるんでィ。婿でも嫁でも気にすんねィ。」
「だって…僕達どっちも男ですよっ!?」
「でも、貴方達好き合ってるんでしょう?」
…姉上…知ってたんだ…
「…はい…」
「新ちゃん、私だって理由も無く反対なんかしないわよ。新ちゃんには幸せになって欲しいし…」
「姉上…」
僕が感動して涙目になると、沖田さんがそっと涙をぬぐってくれる。
「それに…」
にこにこ笑ってた姉上の顔が、ニヤリと歪む…えっ…?
「沖田さんは名の知れた剣士だし、病気しそうだし、真選組だし、殺しに来る敵が多そうだし、見栄えも良いし、長生きしそうにないし、貯め込んでそうだし…新ちゃんの事愛してるし。」
「姉上ェェェェェ!?最後フォローしたつもりですか!?さらっと凄い事言いましたよ!?」
「あら新ちゃん、わかちこの精神は大切よ?」
「ちっちゃい事ってか!?ソコ大切な所ですからね!?沖田さん抹殺されちゃいますっ!!」
「まぁ、今日もツッコミが冴えてるわね!新ちゃん。」
うふふ…と笑う姉上の、目が笑って無い…
本気だ…この人本気だよ…
そこからは、沖田さんと姉上の舌戦が始まって、僕はもくもくと朝食を食べた。
朝食が終わっても、片付けが終わっても、2人の話は終わらない…
いつの間にか意気投合して、どんどん僕らの縁談話が決まっていってるんですけど!?
ってか、今日のお出掛けは!?
大体、そんな事決めていったってお役所が認めてくれないからね!!
結局1日かけて、僕を無視して縁談話はまとまってしまった…
「私からのお誕生日プレゼントよ。」
とか姉上が笑うけど…
アレ絶対富と名声狙いだよね…?
安定した収入と、道場の復興の為に沖田さん利用しようとしてるよね…?
「良いじゃねェですかィ。」
「総悟さん!総悟さんはそれで良いんですか!?結局出掛けられなかったし…」
「まぁまぁ、出掛けるのは又今度でも良いじゃねェか。それよりも姐さんに認めて貰える方が大切ですぜ?」
「…そうですけど…」
「それに、名前なんざどっちでも良いじゃないですかィ。これでずっと一緒に居られるんですぜ?」
「…それは嬉しいですけど…」
「なら良いじゃないですかィ。」
「…はい…」
嬉しそうにニッコリ笑って抱き締められると、僕はもう頷くしかないじゃないか…
「新八ィ…早く18になって下さいねィ。」
「…はい…」
これって、婚約者が出来たって事なのかな…?
その時になったら又大騒ぎになるんだろうけど…とりあえず今は幸せに浸っておこう…
予定は狂っちゃったけど…楽しい誕生日だったって事にしておこう…
END
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