「山崎さん、土方さん、こんにちわ。」

「しっ…新八っ…」

「こんにちわー、新八君。」

土方さんがビクッと跳ね上がって、それを押さえて山崎さんが笑顔で挨拶してくれる。
マヨ買ってるのバレたくなかったのかな…?

「今日もマヨネーズですか?土方さん、身体壊しますよ?」

「おっ…おう…」

…あれ…?でも今日は少ないな…それも、良いマヨ買ってる…
自分へのご褒美…?

「あ、新八君は買い物?いつも大変だねー。」

「まぁ…あの2人ですから…僕、今日誕生日なのに全然いつも通りですよっ!」

僕がさっきまでの事を怒りながら愚痴を言うと、山崎さんが驚いたような顔になる。

「え?新八君今日誕生日なの?おめでとー!」

「…おめでとう…」

えっ…!?まさかこの2人から、おめでとうって言葉が貰えるなんて思って無かったよ!
うわ…なんか凄く嬉しい…!!

「有難う御座います!」

嬉しい気分のまま、お礼を言ってお2人と別れて万事屋に向かって歩き出す。

嬉しいついでに…沖田さんにも逢えないかなぁ…
やっぱり…こっ…恋人なんだし…誕生日にはおめでとう、って言って欲しいし…
ホントは一緒にいたかったけど…お仕事忙しいのか、そんな話全然しなかったもんな…
寂しいけど、お仕事だから仕方ないよね…
それでもちょっと期待しながら、沖田さんが良く居る場所を通りながら帰る。
大江戸ストアの前には居なかったし…公園にも居なかった。

後は…

駄菓子屋さんの前を通りかかると、ベンチで沖田さんが昼寝をしていた。
居たっ!
やっぱり誕生日だからちょっとだけ運が良いかも…

駆け寄ってそっと様子を窺うと、沖田さんはぐっすり寝ているみたい…起こすのは可哀想だけど…でも…お話したいなぁ…

「…おきたさん…?」

声を掛けて起きなかったら諦めよう。
そう思って小さく声を掛けると、沖田さんがもぞもぞと動き出す。

「…なんでィ…新八くんじゃぁねぇですか…」

コシコシと目をこする姿は可愛くて、凄く良いもの見ちゃった!

「もう、こんな所で寝てると風邪ひいちゃいますよ?」

「…ん―――…」

まだはっきりとは目が覚めていないみたいで、ほやっとした顔が凄く可愛い。
やっぱり今日は良い日だ!
この顔を見るために、今までのちょっと悲しい出来事が起こってたんだよ、きっと!

「…買い物の帰りなんですかィ?んじゃ、アレ買って下せェ…」

駄菓子を指差して、上目遣いで僕を見る姿は可愛いけど!可愛いけどっ!!

「んじゃ、の意味が分かりません。大体なんで僕が買ってあげなきゃいけないんですかっ!?僕今日誕生日なのに…」

僕がブツブツと文句を言うと、沖田さんの目がぱっちりと開く。

「…新八くん…今日…誕生日なんで…?」

「…はい…」

そんなびっくりした顔されても…僕の方がビックリだよ。
絶対知っててくれると思ったのに…まさか沖田さんまで僕の誕生日知らなかったなんて…

「何でもっと早くに言ってくれねェんですかィ!知ってたら今日非番にしてもらうんだったのに…」

「え…だって…沖田さん知ってるとばっかり…」

「新八君は俺をなんだと思ってるんでィ…」

そう言って、沖田さんは難しい顔をして何かを考え込む。

…そういえば僕…沖田さんに誕生日教えて無かった…
でも、山崎さんとかに聞いてるかな、とか…思ってたのに…

「…すみません…教えて無い事も色々知ってるから…」

僕が俯くと、すっくと立ち上がった沖田さんが、ひょいっと僕を抱きあげる。
って…え―――――っ!?

「なっ…沖田さん何…?」

「ちょいとベタですが、プレゼントは俺でィ!全身で可愛がってやりまさァ。」

ニヤリと笑って走り出す。
えっ!?まさか…うそっ!?

「何する気ですかっ!?」

「判ってるクセにー!新八くんのえっち♪」

「そりゃアンタだっ!!」

僕が叫んでも素知らぬ顔で、ぐんぐんスピード上げるし…
それに…やっぱり一緒に居たいし…

その後、僕は本当に全身全霊で可愛がられてしまいました…





その頃の万事屋では、神楽が居間を折り紙で飾って、銀時が新八の為にケーキを焼いていた。

「新八遅いアル。銀ちゃん新八本当に買い物って言ってたネ!?」

「あぁ、それは間違いないよ?俺達スーパーで逢いましたもん。」

更に山崎と、ちょっと高いマヨネーズにリボンを巻いて持ち込んだ土方が居た。

「総悟も遅ぇな…山崎ちゃんと言ったのか?」

「えっ…?副長が言ってくれたんじゃ…?」

「山崎ィィィィィィィィィィィ!!!!!」

「ひぃーっ!すんまっせーん!!」

土方と山崎が走り回る中、神楽がはぁっ、と溜息を吐いてソファに沈み込む。

「秘密にしてたから、新八なかなか帰ってこないヨ…」



新八が沖田に連れられて万事屋に帰ってきたのは、それからやや暫くたった後の事でした。
万事屋の様子を見た新八は、大きな目を更に大きく広げて、その後にっこりと花が咲いたように笑った。

新八の笑顔が見れたのは嬉しかったし、サプライズも成功したものの、隣で笑う沖田に色々負けた気にさせられた4人でした。


END



新八誕生日おめでとー!
色々中途半端だな…