君とメリークリスマス
なんだかんだ言ってもやっぱり皆クリスマスは特別な日で。
大好きな人が幸せで有りますように、なんて想って行動してしまうから…
だから…
あんな悲惨なクリスマスでも、きっと楽しかったんだ…
…うん、僕は楽しかったよ?
猿タクロースがふらふらしてたから、本当に逢いたかった人に仕事が回って逢えなくなったって…
楽 し か っ た よ … ?
神楽ちゃんも姉上も銀さんも長谷川さんも…
皆楽しそうだったしさ…
イブだけがクリスマスじゃないし?
明日は非番だって…言ってたし…
…本当は…仕事が早く終わったら今晩から一緒にクリスマスしようね、って言ってたのに…
楽しみに…してたのに…
自分で思ってたより、ショックだったのかな…
涙…出てきちゃったよ…
ゴシゴシとタオルケットで涙を拭いて、布団をかぶって丸くなる。
…明日は…大好きなあの人に逢えるから…ちゃんと寝ておかなくちゃ。
きっと、はしゃぎすぎたあの人に付いて行くのは体力要るからね!
一緒の時間は、一瞬だって無駄になんかしたくないから。
明日は何処に連れてってくれるのかな…?
あの人と一緒なら…本当は何処でも良いんだけれど。
でも、僕の行きたい所をちゃんと聞いてくれる優しい人だから…まぁ、結局はあの人の決めた所に行くのだけれど。
明日の事を考えてると、なんだか楽しくなってきた。
うん、楽しい気分のまま明日に備えて寝てしまおう。
そう思って僕がうとうとと眠りにつこうとすると、すぅっと襖の開く音がする。
…姉上…?
イヤ、姉上なら必ず声を掛けてくれる。
じゃぁ、泥棒…?
イヤイヤまさか。
普通の泥棒に戦闘要塞と化してるウチに入り込む事なんて出来ないよ。
…じゃぁ…まさか…
神経を研ぎ澄まして気配を探ると、それはもうすっかり馴染みになった気配…
僕の大好きな、あの人の気配…
お仕事終わったんだ…サンタクロースのつもりなのかな?
そーっと忍び足で僕の枕元まで近付いてくる…
プレゼントの袋かな…ガサガサいっちゃってるから、忍び足の意味無いじゃん…
くすくすと笑いそうになるのをこらえて、寝たフリを続ける。
枕元まで来たその人は、そっと
「メリークリスマス…」
と囁いて、僕の枕元にプレゼントを置く。
1個…2個…3個…4個…5個…6個………
ガサガサとビニール袋の音が鳴り続いて……………
「どんだけ―――――――――――っ!?アンタ笠こ地藏かっ!!??」
布団から飛び起きると、びっくりした顔の沖田さんが大量のビニール袋のうちの1つから、お寿司を出して食べようとしていた。
「しっ…新八くん…起きてたんで…?」
「僕だって侍のはしくれですからねっ!人の気配ぐらい気付きますからっ!!特に、アンタの気配に気づかない訳無いでしょうがっ!!」
僕がそう叫ぶと、にひゃりと笑った沖田さんが頬を染める。
「新八くん熱烈な告白有難う御座いやす。最高のプレゼントでさァ!」
「そっ…そんなつもりじゃ…無いですからねっ!」
恥ずかしい事をいけしゃーしゃーと…
でも…やたらと幸せそうな顔されたら…それ以上は何も言えない。
幸せな顔のまま、ガサガサとパックを開けて沖田さんが食事を始める。
「…お茶淹れてきますね…ってか、どうしたんですか?これ…」
良く見るとガサガサいわせてたビニール袋はお寿司やオードブルやチキンで…あ、ケーキも有る…
「…仕事早く終わったんで…新八くん家で食べようと思って買ったんでさァ…でも、近藤さんがどっか行っちまったんで…抜けられなくなっちまって…」
…やっぱり…
猿タクロースのせいだったんだ…
僕がマロニーくんしか食べられなかったのも、沖田さんに逢えなかったのも…
心の中で、近藤さん振られろ振られろと呪いを掛けていると、僕のお腹がぐぅ、と鳴った。
「…新八くん…腹減ってんで…?」
「…マロニーくんしか食べてないもんで…」
ちょっと恥ずかしくなって、顔を逸らして俯くと、満面の笑みを浮かべた沖田さんがぎゅうっと抱きついてくる。
「んじゃ、今からぱーりーしやしょうぜ!やっぱり俺ァ新八くんと一緒にクリスマスしたいんでさァ!ほれ、酒もケーキも鳥も買ってきてるんですぜ!…ちょっと冷めちまってるけど…」
「…僕も…沖田さんとクリスマスしたかったです…皆居たけど…やっぱり沖田さんと一緒じゃなきゃ嫌です…」
そう言ってぎゅうっと抱き返すと、沖田さんがもっと強く抱き返してくれる。
そのままスリスリと顔を擦りつけてくるんで、僕が頭を撫でると顔じゅうにキスの雨を降らせてくる…くすぐったいよ…
幸せな気分のまま、暫く抱きあってると、僕らのお腹がぐうっと鳴る。
「…お腹すきましたね…」
「ぺっこぺこでィ!仕事上がりそのまま急いで来やしたからね!」
そう言えば、隊服のまんまだ…
「お料理温めてくる間に着替えてて下さい、僕の着物貸しますんで。本当ならお風呂も先に入った方が良いんでしょうけど…」
「腹ぺっこぺこでィ!」
「すぐ温めてきますから、お寿司とか先食べてて下さい!」
僕が走って台所に行って、チキンやオードブルを温めて、お茶を淹れて部屋に戻ると沖田さんはお酒を飲みつつお寿司をつまんでいた。
あー…遅かった…すっかり出来あがっちゃってるよ…疲れてる上空きっ腹にお酒呑んじゃうから…
真っ赤な顔でちゃっかり座布団に座った沖田さんは、居間から持ってきたのか卓袱台の上に料理を並べて自分の隣に敷いた座布団をぱんぱんと叩いて僕を見てる…
「新八くん!ここ!ここに座りなせェ!!」
「はいはい…」
温めたお料理も卓袱台に並べて僕が座ると、器用に箸でつまんだおかずをあーん、と言いつつ僕に食べさせる。
あぁ、空きっ腹に沁みわたる…やっぱり沖田さんの買ってきてくれるものは美味しいや。
きっと、高っかいんだろうな…どれもこれも…
「新八くんー!旨いですかィ?旨いですかィ?」
「はい、とっても!」
僕が笑うと沖田さんもふにゃりと笑って幸せそう。
そんな顔を見てるだけで、僕も幸せになっちゃうよ…
「沖田さんもちゃんと食べて下さいね?はい、あーん。」
普段は絶対そんな事しないけど、クリスマスだから…
僕が肉団子を摘んではい、と差し出すと、一瞬ビックリした沖田さんがとろけそうな笑顔でぱくりと食べる。
「新八が食べさせてくれるから、すっげェ旨いでさァ!春巻きも喰いてェです。」
「…仕方ないですね…そーちゃんの甘えんぼ。はい。」
今度は春巻きを食べさせると、もっと幸せそうになる。
…僕はお酒呑んでないのに…なんか…クリスマスの雰囲気ってそんな感じじゃん!
甘くて幸せで…多少の事なら許せてしまうから…
今日だけは特別、甘やかしてあげますから、僕も甘やかして下さい。
特別な日に、特別な人と一緒に居られる奇蹟が起こったんだから。
皆が幸せで有りますように、とか、祈ってしまいました。
END
クリスマス文2は沖新で原作クリスマスネタ妄想で!
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