そのまま居間まで行って、ちゃんと卓袱台の前に座ったそうご君に、はい、と渡す。
でも、嬉しそうに蓋を開けたそうご君が、じーっと僕の顔を見る。

「どうしたの?食べないの?」

「しんぱちはたべないんですか?」

「あー…うん、僕はいいや。」

「…おいしいです…」

「そうだねー」

にっこりと笑って見せても、そうご君はアイスに手を付けない。

「ほら、早く食べないと溶けちゃうよ?」

僕が急かしても、そうご君は俯いたままじーっとアイスを見てる…

「あ!ぼくのアイス、しんぱちにもすこしあげます!はい!」

良い事を思いついたとばかりに、スプーンで掬ったアイスを僕に差し出す。
あぁもう!コレ本当に沖田さん!?可愛いし優しいし!!
…それとも…本当はこんな人なのかな…?
イヤイヤイヤ、まさかね。サディスティック星の王子様だよ?あの人っ!
…でも…結構優しい所も有るんだよね…沖田さん…

折角なんで、差し出されたアイスをぱくりと食べると、満足そうに笑ったそうご君がアイスを食べ始める。
やっぱり口の周りも手もベタベタにしてるけど…歯を磨いてから綺麗に拭いてあげよう…

「おいしーね!」

「そうだね。」

「はい!もっとたべて?」

「えっ…?うっ…うん…」

にっこり笑顔で又スプーンを差し出すけど…あの…コレは…
かっ…間接キス…なんて…

イヤイヤイヤ、男同士でそんなんは無いから!大体、そうご君にはそんな考え無いからね!!
それでもドキドキと煩い心臓を押さえつつ、折角のアイスをぱくりと食べると、そうご君はものっ凄く満足そうににっこり笑った。

アイスを食べきると、そうご君が又コクリコクリと船を漕ぎ始めるんで、一緒に歯を磨いてトイレも済ませて僕の部屋に連れて行って布団に寝かせる。

「じゃぁ、おやすみ。」

「…しんぱちはねないですか…?」

「僕は、明日の朝ご飯の下ごしらえが有るから…もう少ししたら寝るよ。」

「じゃぁ、そうごもおてつだいします!」

頑張って起きようとするんで、頭を撫でて布団を掛ける。

「そうご君もう眠いよー、っておめめが言ってるよ?すぐに僕も寝るから、お布団で待っててくれる?」

「…はい…」

眠さが限界なのか、大人しく布団に顔を埋めてくれた…

これ以上ないぐらいの早さで朝食の下ごしらえをして、全力疾走で部屋に戻って布団を覗くと、そうご君はすうすうと眠ってしまっていた…
ちょっと残念だけど…まぁ、しょうがないよね…
そっと隣に潜り込むと、もぞもぞと動いてきゅうと抱きついてくる…
うわぁ!ちょっ…
そっと様子を伺うと、すりすりと頬を寄せて、安心したようににっこりと笑う…
…駄目だ…可愛い過ぎて死にそう…
そのままぎゅうと抱きしめて、なんだか幸せな気分のまんま、僕も眠りについた。



次の朝、何か息苦しくて目が覚める。
…目の前が真っ暗で…なんか固い…
もぞもぞと動いて上を見ると…沖田さんっ!?
あ…そうご君か…
僕が抱っこしてた筈なのに、いつの間にか抱きつかれてるよ…
よいしょ、と体勢を変えて抱っこし直そうとすると、ぎゅうぎゅうと抱きつかれて動けなくなる。
流石一番隊隊長…中身が子供でも、力有るよね…
仕方無いんで、諦めて僕が抱きつくと、ぱかりと開いた目がじっと僕を見つめる。
わー…綺麗な蒼…

「そうご君、おはよう。」

「………おはようございます………」

あはは、きょとんとしてる!
可愛いなぁ、寝ぼけてるのかな?
よしよしと頭を撫でると、すっと近付いてきた顔が、ちゅうと唇に吸い付いてくる…
なんだろ?甘えてるのかな?
そのままにさせてると、ごろん、と転がったそうご君が僕の上に馬乗りになってしっ…舌を入れてきた!?
あれ!?何か違う!何か違うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!
ジタバタと暴れても、どんな押さえ方されてるのかそうご君はビクともしない。
思う様口内を暴れ回る舌に翻弄されて僕がぐったりした頃、やっとそうご君が唇を離してくれる。
とっ…突然どうしたんだよ…

「…何で俺ァ新八くんと一緒に寝てんで?」

…この口調…
沖田さんっ!?元に戻ったの!?

「何でって!大変だったんですよ!?可愛くて!!」

「…は…?」

あ、しまった、変な事言っちゃった…

「イエあの、沖田さん何かの薬で中身が子供になっちゃってて…それがなんかもう、ものっっっっっっっっっっすごく可愛くて!…あ、イエ…それで土方さんが僕に面倒みろ、って依頼を持ってきて…で、今に至ります。」

「ちっ…アレか…しくじったぜ…それで?何で一緒に寝てんでィ。」

「そんなの、子供を一人でなんて寝かせられる訳無いじゃないですかっ!」

「…へー…俺ァ新八くんに手籠めにされたのかと思いやした。」

「そんな事しませんっ!!」

僕がグイグイと沖田さんを押しても、全く動かないぃぃぃぃぃぃぃ…
なんだよもう!
悔しくて唸りながらも沖田さんを見上げると、いつものニヤリとした笑い顔…
もう…そうご君のあの可愛い笑顔は見れないのかな…

「んじゃ、俺に手籠めにされなせェ。」

「へ…?」

ぎょっとして沖田さんの顔を見ると、幸せそうな、嬉しそうな、にっこりとした笑顔…そうご君の笑顔…
あ…又見れた…
ぼーっと見惚れている間に、さわさわと何かが僕の身体を這いまわる…くすぐったい…
我に返ると、沖田さんの手が寝巻きの中に入り込んでさわさわと僕の身体を撫でてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?

「ぎゃーっ!!ちょ…ちょっと何してんですかっ!!やーめーろー!!!」

「俺ァ新八くん、お前さんが好きだ。こういう事がしたい。新八くんは…嫌ですかィ…?」

しょんぼり、って顔でじっと見つめられると…そうご君がちらつく…
イヤイヤしっかり僕!沖田さんはそうご君じゃないからねっ!!
…アレ?いや、やっぱりそうご君…?

「俺の事…好きだろィ?本当は、キス…嫌じゃ無いんだろ…?」

何か悪い男的な発言をしつつ、又キスをされるけど…
…確かに嫌じゃないし…なんだよもう…
『そうご君』じゃなくて『沖田さん』に逢えて…嬉しいなんて…
仕方ないんで沖田さんの背中に腕を回すと、バッと離れてマジマジと僕を見て、そして、にっこりと綺麗に笑った…

「…好きだよ、悪いかコノヤロー…」

やっぱり何か負けた気がして悔しいんで、ちょっと憎まれ口をきいてみる。

「悪かねェな、すげェ嬉しい…」

僕に落ちてきた沖田さんが、思いの他優しくて…
やっぱり沖田さんはそうご君なのかな…?
いつか又、あの可愛くってしょうが無いそうご君に逢えるのかな…?
なんて思ってしまいました。


END