飛ぶようなスピードで走り続けて、着いた先はいつも沖田さんが昼寝をしている公園で…
助かった…?
上がってしまった息を整えつつ、御礼を言おうと沖田さんを見上げると、唇から血が出てる!!

「おっ…沖田さんっ!さっきので怪我…したんですか…?唇から血が…」

「へ?」

意外そうな顔で見つめられるんで、そっと触れるとやっぱりぬるりと血が出てる…

「こんなに血が…」

「あぁ、最近唇が荒れててねェ…又切れたんだろ。こんなん舐めときゃ治りまさァ。」

ニコリと笑いかけられると、心臓が壊れそうになる。
…そう言えば…沖田さんは変じゃ無い…ちょっと…残念…

「舐めても治りませんよ。僕、リップクリーム持ってます!コレ結構効くんで良かったら…」

袂からリップクリームを出して、はい、と渡すと沖田さんがじーっとソレを見る。

「あの、僕もかなり唇荒れてたんですけど、コレをつけたら良くなったんですよ?」

ほら、と唇を見せると、じーっと僕を見た沖田さんがおもむろにリップクリームを塗り始める。
あ、潤ったかな…?
そのままじーっとリップクリームを見ていた沖田さんが、僕の頬に手を当てて、僕の唇にもリップクリームを塗る…

あ…

「間接きっす、しちゃいやしたね…」

ニヤリ、と上がる唇を見ていると、凄くその唇の感触を確かめたくなる…僕の唇で…

「…間接キスだけで…良いんですか…?」

「…新八くんは…どうなんで…?」

「僕は…イヤです…」

沖田さんの首に手を回して、ちょっとだけ背伸びをする。

「俺も、そんなんよりきっすが良いや…」

ニコリと笑った沖田さんが、僕の眼鏡を外してポケットにしまう。
そっと近付く唇が触れた瞬間、全ての力が抜けてしまう…
それでも、出来るだけ沢山沖田さんを感じたくて、唇で、舌で、全身で触れてみる。
思う存分触れ合って、ふと離れると、銀の糸…勿体無くて舐め取ると、又合わさる唇…

「…すき…っ…すきです…おきたさぁ…っ…」

思わず言ってしまった言葉に、沖田さんの目が丸くなる…
あ…どうしよう…気持ち悪がられる…

「…それは…本気なんですかィ…?新八くん…」

真剣な瞳の沖田さんに見つめられると、もう誤魔化せない…

「ごめんなさい…気持ち悪いですよね…でも…でも僕…沖田さんの事が好きで…」

「きっす…したからで…?」

「違いますっ!僕は…僕はずっと前から沖田さんの事が…!」

もう誤魔化せないなら…僕の想いを全部ぶちまけてやるっ!!

「好きですっ!意地悪な所も、でも本当は優しい所も…ふざけてるみたいで意外と真面目なとこだって…全部…全部好きですっ!!」

言いきって、はぁはぁと肩で息をしていると、ふわりと笑った沖田さんがちゅっ、とキスをくれる…えっ…?

「俺も新八くんが好きでィ。この可愛い顔も、何にでも動じない突っ込みも、この眼鏡も。」

スッとさっき外した眼鏡をかけてくれると、うっすら頬を染めた沖田さんの顔がはっきり見える。
うわぁ…照れたような笑顔が凄く可愛いっ!
又好きになってしまうよ…!

そろりと近付いてくる沖田さんを抱きしめると、深い口付けを僕にくれた…



沖田さんに送られて万事屋に帰る途中、走ってくる桂さんに出会った。
バッ、と身構えたけど、桂さんは凄い勢いで駆け抜けて行っただけだった。

すぐ後を、真選組の皆さんが走って行く。
…僕は皆さんの目には入っていないようだ…

「総悟ー!テメっ、何サボって…」

「新八くんを送って行く所でさァ。テメェが仕事しろ、土方。」

いつもなら、ここで喧嘩になる筈なのに、沖田さんの背中に隠れている僕を見付けた土方さんがニヤリと笑う。

「ほぉー、やっと仲良しになったのか?」

「恋人になりやした!」

沖田さんが胸を張ると、土方さんがニヤリと笑う。

「苛めんなよ?」

そう言って、沖田さんの頭をクシャリと撫でて桂さんを追って走って行ってしまった。

そのまま万事屋まで送ってもらって、少し緊張しながら居間まで行くと、いつも通りの2人がソファに寝っ転がっている…

「…やっぱりさっきは皆変だったんだ…」

「そうみたいですねィ…」

やっと安心して、お茶でも淹れようと台所に行こうとすると、嫌そうな顔で神楽ちゃんがジロリと沖田さんを睨む。

「テメー、ドS、ココはオマエが来るような所じゃないネ。土産だけ置いて帰るヨロシ。」

「あぁん?何でオメェに土産なんざ持ってこなきゃなんねェんでィ。」

「大事なマミーを渡してやったんだから当たり前アル。酢昆布10個…30個持ってくるネ!」

そう言った神楽ちゃんがニヤリ、と嫌な笑いで僕を見る。

「神楽ちゃん、何言って…」

「仲良く手、繋いでるネ新八。」

「顔赤いよ〜、新八く〜ん」

銀さんも、神楽ちゃんと同じ顔で笑う。

「あのっ…その…えっと…恋人に…なりました…」

沖田さんの手をぎゅうと握り直すと、沖田さんも握り返してくれる。
ソレを見た2人が、もっとニヤニヤと笑う。

「沖田く〜ん、俺はケーキね〜」

「あ!銀ちゃんズルイ!ワタシもケーキ!!」

「…今度持ってきまさァ…」

キャホー!と喜ぶ2人は、もうすっかりいつも通りで…アレは一体何だったんだろう…?

僕の袂でコロリとリップクリームが転がる。
…キスしたくなる唇…?

…まさかね…

何だろうと、皆元に戻ったんだし…
沖田さんと恋人になれたんだし…
良かった…んだよね…?


END