いつものように大江戸ストアに買い物に行くと、今日は珍しく山崎さんは居なかった。
明日のあの人のスケジュール聞こうと思ったのに…
真選組、忙しいのかな?
だとしたら、明日あの人に逢えるのかな…?

ちょっと心配だったけど、予定通りケーキの材料を買った。
スポンジは出来てるのがあったんで、それを買った。
生クリームと、奮発してイチゴも買った。
それを銀さんと神楽ちゃんに見付からないように、なんとか家に持ち帰って早速デコレーションする。
我ながら上手くいったと思うよ!これならきっと投げ付けられないよね…?
100均で買ってきた箱にそれを詰めて、大事に冷蔵庫に入れておく。

明日は万事屋は休みを貰ったし…
誕生日プレゼント、上手く渡せると良いなぁ…

そう想いつつ眠ったら、あの人に微笑みかけられる夢を見た。
きっと正夢に違いない!

夢で勇気を貰った僕は、朝一でストーキングに来ていた近藤さんに、あの人の今日の予定を聞いた。
誕生日だってのに、普段通りに仕事だなんて…まぁ、社会人はそうか。
仕方ないんで、冷蔵庫に大事に入れておいたケーキを確認して、いつも持ち歩いている風呂敷に包んで家を出る。

あの人がいつも居る所は…

前に山崎さんに聞いたサボリスポットを思いだしつつ片っ端から回ってみる。
駄菓子屋に、団子屋に、甘味処に、河原に…
何処に行ってもあの人は見付からない。
最後、公園に行く途中万事屋の前を通ると、階段の下に黒服に明るい髪…居たっ!

…でも…あんな所で何やってるんだろう…?
銀さんにでも用事が有るのかな…?
まさか…誕生日だから神楽ちゃんに逢いに来た…とか…じゃないよね…?

恐る恐る近付いて、なんとか笑顔を作って話しかける。

「あの…沖田さん…万事屋に何か用ですか…?」

くるりと振り返った沖田さんが、驚いた顔で僕を見た後、頬を染めてぷいっと横を向く。
あぁ!可愛いなぁ、もう!!

「お前さんを探してたんでさァ…ちょっと付き合いなせェ。」

そう言って、ケーキを持ってない方の手を掴んで僕を何処かに連れていく。

うわっ!手、繋いじゃったよ!!すっごい嬉しい!ドキドキが止まらねぇよ!!
でも、どうしたんだろう…?
僕に用が有るなんて、有り得ないと思ってたのに…

引かれるままに着いていくと、沖田さんはいつもの公園に僕を連れていった。
片隅に有るベンチまで行くと、そこで止まってくるりと振り返り、僕に向き直る。
…なんだろ…凄く真剣な表情…
そんな顔で見つめられたら、抱きしめたくなっちゃうよ!

「沖田さん?どうしたんですか?」

そんな衝動を誤魔化そうと僕が話しかけると、じっと僕の目を見ていた沖田さんが今度は肩に手を掛けて顔を近付けてくる。

うわっ!近いよっ!!

「新八くん…お前さん…山崎と付き合ってんですかィ…?」

「…はぁ…?」

一瞬何を言ってるのか分からなくて、怪訝な顔で聞き返す。
すると、焦った沖田さんが僕から手を離して、もう一回、今度は痛い位に僕の肩を掴む。

「誤魔化したって無駄でさァ…ここ最近ずっと大江戸ストアで楽しそうに買い物してんのは知ってんでィ!」

「ちょ…沖田さん、痛いです!」

「ザキの野郎、お前さんの分のカゴまで持ったりして…すっかり旦那きどりじゃねぇですかィ!おまえさんも満更じゃなさそうで…」

「誤解です!」

段々、沖田さんの表情が怖い物になってくる…
何…?何を言ってるんだ…?この人…

「そんな訳ねェよなァ…万事屋まで送らせといて、その後も寂しそうに見送ってんだもんなァ…」

「そんな事してませんっ!確かに万事屋まで一緒に帰ったりしましたけど、屯所に帰る通り道だって…!」

「通り道な訳あるかィ…別の道通った方が近いや。」

…そうなんだ…ってか…

「なんで沖田さんがそんな事知ってるんですか…?」

僕がそう聞くと、かあっと真っ赤になった沖田さんが後ろを向いてしまう。
もしかして…僕らの事ずっと見てた…?
あれ…?まさか…嫉妬…?
でも、どっち!?僕に!?山崎さんに!?

「沖田さん…山崎さんの事す…?」

恐る恐る聞いてみると、ものっ凄く嫌そうな顔で僕を見る。

「何で俺が山崎なんざ…」

「…じゃぁ…僕…?」

信じられないけど…そうだったら凄く嬉しい…
沖田さんの顔を覗き込むように聞いてみると、いきなり噛みつくようにキスをされる。

「そうでィ。俺ァ新八くんの事が好きなんでさァ!今日は…」

「今日は沖田さんのお誕生日ですよね?だから僕…」

「知って…?」

「はい、山崎さんに聞いたんです。他にも沖田さんの事色々。だって僕、沖田さんの事が好きですから。」

「…なんでィ…そういう事だったのかィ…」

僕が笑うと、沖田さんから極上の笑顔を贈られる。
凄い可愛い…
僕からもキスを贈ろうとすると、ひょいっと抱えあげられる。

「へ…?」

「そんなら話は早ェや!誕生日には新八くんをくれるんですよねィ?有難く頂きまさァ。」

そう言って、ニヤリと笑った沖田さんは、人一人を抱えてるとは思えないようなスピードで走り出した…え…?

「いえあのっ!ケーキ…ケーキを用意しててですねっ!」

「初めてなのにケーキプレイとはマニアックですねィ…ま、俺も嫌いじゃねェよ?」

「えっ!?プレイって何!?え!?ちょっ…」

そのまま運ばれて連れ込まれた僕は、高そうなホテルの一室でケーキより先に食べられてしまった…
あれ…?
僕が沖田さんを食べるんじゃ…?

ちょっと納得いかないけど、可愛いと思ってた沖田さんは格好良かったし…
僕の作ったケーキも、凄く喜んで食べてくれたし…
そう、今朝の夢みたいに綺麗な顔で微笑んでくれた。
だから、これはこれで良いのかなぁ、と思ってしまいました。
だって、沖田さんは沖田さんだもんね。
改めて、誕生日おめでとうございます、って言った時の笑顔はやっぱり僕が好きになった沖田さんだったから。

これからもいっぱい幸せにしてあげますから、覚悟して下さいね?
僕の可愛い人。


「新八くんの方が可愛いんでィ!」



END