「…新八ィ……新八ィ…起きなせぇ……迎えにきやしたぜ……」

………う―ん…あれ…?沖田さんの…声がする………?
うっすら目を開けると、僕の顔を覗き込む沖田さんが見える。
…あれ―?夢かな…だって、この沖田さん、すっごく優しい表情で僕を見てるし…なんだか綺麗な薄紫色の着物を着てる…
うん、夢だな。
えへへ…カッコ良いなぁ…いつもはそんなにジロジロ見れないから、夢でイッパイ見よう!僕がへにゃっ、と笑うと、夢の中の沖田さんが真っ赤になる。
やっぱり夢だ…本当の沖田さんは赤くなんてならないもん…
じゃぁ…抱きついたり…ちゅうしちゃっても大丈夫かなぁ………



結局眠れなかった。
太陽が昇って明るくなってきたんで、もう新八を迎えに行っちまおう。
新八の家は茶ぁ飲みに何回か行ってやすからねぇ。迷う事無く門前まで行くと、丁度仕事から帰ってきた姐さんに出くわした。
挨拶して、今日遊びに行くってぇ話をすると、すんなりと家の中に入れてくれた。

「姐さん、良く知らねぇ男を簡単に家の中まで入れちまうなんざ、無用心ですぜ?」

「あら、沖田さんは新ちゃんのお友達でしょう?それに、新ちゃんは…いえ、貴方が何か出来るような度胸が無い事知ってるもの。告白すら出来ないんですものね。」

姐さんが高笑いしながら自室に帰ってゆく。
…何処まで知ってるんでさぁ…おっそろしい女性でさぁ………

とにかく新八の部屋に行く。

布団でぐっすり寝込んでいる新八の寝姿に、どきり、とする。
…姐さんはやっぱりスゲェや…こんだけソソる姿を見せられたって、なんにも出来ねぇよ。ヘタに手ェ出して嫌われちまったら、なんて思うと恐くてそんな事出来ねぇや…

寝こけてる新八の肩に手をかけて、そっと揺する。

「新八ィ…新八ィ…起きなせぇ…迎えにきやしたぜィ…」

うっすらと目を開けた新八が、ぼ―っと俺を見た後、にへっ、と笑う。
…なっ…!!何でぃ、その無防備な笑顔ァ!!可愛いじゃねぇか!!
俺が顔を赤くして、新八の笑顔に見とれていると、ふいに新八の腕が伸びてきて俺に抱きついてくる。
なっ…!?何を!!!!…寝惚けていやがるな…新八………

「オイ、新八ィ…起きろィ…」

「…沖田さん…好きです……えへへ…大好き…」

「なっ………!?」

今…何言いやがった、コイツ…!?えっ!?何が!?
俺が酷く赤くなって、おろおろしていると、抱きついたままの新八の顔が急に近付いてきて、俺のくっ…くっ…くちびるに触れる…
…!?って…きっきっきっきっ…きっす…されちまった!?しっ…しんぱちィ…!?これはどういうイミでさぁ!?寝惚けててぬいぐるみか何かと間違えたんですかぃ!?
でっ…でも…確かに『沖田さん好き』って言いやしたよね!言いやしたよねっ!!
動揺に動揺を重ねた俺がオロオロばたばたしていると、新八がほにゃっ、と笑って更にぎゅうと抱きついてそのまま寝てしまう。

「新八ィ…?」

名前を呼んでみても、すやすやと幸せそうに眠るばかりの新八を起こすに起こせなくて、一緒に横になる。
新八の体温を感じていると、暖かくて安心して俺も眠くなってきちまった。
いいや、寝ちまおう。
しっかりと新八を抱き込んで、ゆっくり目を瞑る。



ふぁ――っ…何か良い夢見たなぁ―!現実ではとってもじゃないけど言えないもんね。
僕が、にひゃりと笑いながら目を開くと、目の前は一面薄紫色だった。
…なんだ…?アレ?それに僕、何かに抱きついてるような気がする…それに、何かが僕に巻きついて…
一生懸命目を凝らしてよーく見てみると、僕の目の前に有るは夢で見た沖田さんの着物の色で…僕が抱きついてたのは………アレ?コレ沖田さん…?アレ?いつから来てるの…?
アレ…?アレ…?アレ………?もしかして…夢じゃ…なかった………?

って…え――っ!え―――っ!?え――――っ!!??

ちょっ…僕…沖田さんに抱きついて…好きって言っちゃって…きっ…キス…しちゃったんですけどっ!!!!
どっ…どっどっ…どうしよう………夢だと思ってたのにっ!!!
でも…沖田さんがここに居る、って事は…ヤじゃ…なかったのかな…?…って、僕が抱きついたまま寝ちゃったんじゃないかぁぁぁぁぁ―――っ!!
沖田さん優しいから、振りほどいて帰れなかっただけなんじゃ…
でも…本当に嫌なら振りほどいていくよな…沖田さんなら…でも…僕ら友達だし…

僕がフリーズしたままぐるぐるしてると、沖田さん目を覚ました。

「…ん―…新八ィ、おはようごぜぇやす。」

「おっ…おはようございます!!あっ…あの…沖田さん…いつからココに…?」

沖田さんがにひゃり、と笑う。

「朝方からですかねぃ。姐さんが帰って来た時に入れて貰いやした。」

…やっぱりアレは…夢じゃなかったんじゃ…?

「…あの…沖田さん、僕…何か寝惚けたり…」

僕がそこまで言うと、沖田さんの顔がぼふん、と音を立てて真っ赤になる。
…やっちゃった…やっちゃったよ、僕………

「あっ…あのっ…そのっ…僕………」

どうしよう…顔が上げられないよ…めちゃくちゃ嫌な顔されてたら…どうしよう………

「新八ィ…アレは本気ですかぃ…?」

「あっ…あの…その………」

僕が顔を上げると、凄く真剣な表情の沖田さんが、真っ直ぐ僕を見ていた。
…誤魔化せないよ…
僕も真っ直ぐ沖田さんを見て、こくり、と頷く。
と、沖田さんの顔が、にひゃりと崩れる。
なっ…反則だよ!!その笑顔っ!!

「俺の方が100倍新八の事好きですぜ?覚悟しなせぇ、俺ァ加減を知りやせんからねぃ。」

沖田さんが僕の頬を優しく撫でる。
僕はその手に擦り寄って、えへへ、と笑う。

「僕はその100倍沖田さんの事好きですから。」

僕が言い終わるか終わらないかのうちに、沖田さんの顔が近付いてきて頬にキスを落としてくれた。

「それ以上口説かれると止まらなくなりやすぜ?はなっから新八を貰うつもりでいやしたが、まさか朝イチで貰えるとは思いもしなかったでさぁ。今日はでーとになりやすね!でーと!!最高の誕生日ぷれぜんとでさぁ。」

ニコニコと微笑みまくる沖田さんに、そう言えば、と、んまい棒の詰め合わせを渡す。
一瞬ひくっ、と引きつった沖田さんがニヤリとした笑顔になり、んまい棒にかけてあったリボンを僕にかけて引き寄せ、大人のキスをする。
ちょっ…!?何をっ!!!僕がぺしぺしと頭を叩くと、するりと離れてくれる。

「加減を知らねぇって言っただろぃ?あんまり可愛い事ばっかりしてやすと、マジで食っちまいやすぜ?さっ、でーとに行きやしょう?」



その日は手を繋いであちこちに行った。
ちょっと恥ずかしかったけど、すっごくすっごく幸せだった。
まさか沖田さんも僕の事そういう風に好きで居てくれたなんて…夢みたいだ…
結局、プレゼントは僕!とかになっちゃったのかなぁ…?ちょっと恥ずかしいけど、喜んでくれたから良いか。
…僕にとっては、逆に僕が沖田さんを貰っちゃった感じなんだけど…
良いのかな…?良いんだよね…?

だって、僕たち、恋人同士になったんだから!!


END