3秒で落とす恋



僕がアノ人を好きになったのは、いつの事だっただろう。
つい最近だったような、随分前だったような。

出逢いは最悪、その後も最悪。
僕はアノ人の視界になんか入って無くて、なんでかそれが凄く悔しくて。
なんとか視界に入ろう、とか頑張った時にはもう好きになっていたのかもしれない。
その内、アノ人の上司が姉上に惚れて、僕らは急速に近くになって、アノ人を知る度僕の気持ちも大きくなって…
今じゃもう、押さえきれない位膨れ上がっている。
アノ人を好きじゃなかった自分が信じられないくらい。

そんな盛り上がっちゃった僕を後押しするように、バレンタインディがやってきて。
それも、僕を祝福するような晴天で。
そこまでされたら、行っちゃうしかないでしょう?

一張羅の羽織袴で、精一杯のチョコレートを持って告白に行こうとした僕に、更に天使が微笑んだ。

アノ人の姿を探して、いつもサボってる公園に着いた時、僕の目の前に天使が舞い降りた。
そう!そこにアノ人が現れて、僕にチョコレートをくれたんだ!!

…まぁ…なんだか馬鹿にされたような義理チョコだったんだけど…

でも、そのチョコレートは甘くて口でとろけて、僕の脳味噌までとろけさせて。
いつもよりもっともっとアノ人が好きになって、触れたくて仕方なくなった。
そんな気持ちに流されて、僕は危うくアノ人の唇を奪ってしまいそうになっていた。
アノ人がガッチリと僕の頭を掴んで止めてくれなかったら、危ない所だったのだ。
ヤバいヤバい、告白する前に嫌われる所だった!

はぁ、と溜息を吐いてなんとか前を見ると、おっそろしく近くにアノ人の顔!?
パニックになった僕は、大切に用意したチョコレートをアノ人に投げつけて、何かを叫んで逃げ出した。

あぁぁぁぁ…しまった!僕は一体何を…
頭を抱えながらも足は止まらなくて、暫く走り続けると後ろから腕を掴まれる。

「し…っ…新八くん!」

我に返ると、アノ人が僕の手を掴んで引き留めていた。

「ぅなっ!んなんですかぁぁっ!?」

「コレ…このちょこれいと…」

ポケットから、僕が投げたチョコレートと、なんとか名前だけ書き込めたカードを出して僕に見せる。
あ…あ…!僕の告白…伝わって…

「そっ…それはぁっ!義理チョコです義理!!どうせアンタチョコレートなんて貰えないでしょうからね!」

なんでだ僕ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?
なんでそんな事言って…

「…そりゃぁ…有難ェなァ…でも、嘘だろ?お前さん、俺の事好きだろィ?」

「そんな訳無いですから!そういうアンタこそ僕の事好きなんじゃないですか!?」

…なんでだ…なんで僕らはそんな事言って睨み合ってるんだ…?
僕…告白しに来たんじゃなかったっけ…?
どんだけ素直じゃないんだ僕…

「へぇ、そんな生意気言うなら1カ月後に勝負でィ。ほわいとでぃに返事寄越しやがれ。返事は『大好き』しか受け付けねェけどな。」

「望む所です!アンタこそちゃんと返事して下さいよ。返事は『大好き』しか受け付けないですけどね。」

フン!と顔を背けて両側に別れて歩く。
暫く行って、違和感に気付くけど…
あれ…?
これって…告白…に…なってね…?

振り返って見ると、アノ人も僕の方を振り返ってて慌てて目を逸らす。
…もしかして…僕ら両想い…?
そう思って声を掛けようとしたら、アノ人は凄い勢いで走って行ってしまった…



それからずっとアノ人は僕を避けているのか、逢うどころか見かける事も出来なくて。
遂に今日は約束のホワイトディ。
でも僕はクッキーどころか飴玉1つ買えなくて、給料くれと銀さんに詰め寄ったら最終兵器を渡された。

「これ、辰馬からもらったんだけどさ〜、食べて3秒見つめ合えばその人に恋するチョコなんだってよ。うさんくせ〜けど新ちゃんにやるよ。だからコレ食べて銀さんの事見てくんない…?」

「は?なんで?」

妙にキリッ!とした銀さんがおかしな事言ってたけど、気にしないでチョコだけ持って待ち合わせの公園に走る。
僕が公園に駆け込むと、アノ人はもう待ち合わせ場所に立っていた。
あぁ、やっぱり今日もカッコいい…

「お待たせしました!」

「怖気づいて来ないかと思いやしたぜ。」

不敵に笑う顔も、やっぱりカッコいい…

「はぁ?見くびって貰っちゃ困りますよ。アンタこそビビって逃げたかと思ってました。」

「は。俺が?」

アノ人は、フン、と鼻で笑って僕を見下すけど…

…おかしい…なんで又こんな事に…
今日こそ僕は告白をしに来たんじゃ…?
今日こそ…今日こそ素直になるんだ!!
俯いてしまっていた顔を向けて、持ってきた怪しげな最終兵器を開いてチョコを1つ摘む。
…へぇ…ホワイトチョコなんだ…

「沖田さんっ!好きです!!」
「新八くん!好きだ!!」

同時に叫んで、手に持っていた何かをお互いの口に突っ込む。
…なんだ…?甘くてふわふわしてて…
もぐもぐと口を動かしてゴクンと飲みこむと、彼もゴクンと飲みこんだ。

おっと、3秒見てくれなきゃいけないんだった。
又、お互いガシッと顔を掴み合って…あれ…?なんでこの人も…?
3…2…1…

「「返事は…」」

顔が熱くて体も熱くて。
この人に触れたくて触れたくて…
僕が顔を寄せると、幸せそうにふわりと笑って顔を寄せてくれた。
あぁ、可愛い…

唇と唇が触れ合って、暖かくってとろけそうで。
いつまでもそうしていたいけど、でも大切な事を忘れてるから。

「大好き…です…」
「そんなんじゃ足んねェ…大っっっっっっ好きでさァ。」

子供みたいな言葉に吹きだして、でも愛しくて力いっぱい抱きしめあって。
もう1度、なにより甘いキスをした。



END