「高杉ぃー!テメー新八をどうするつもりネ!?」

「おめーにゃ関係ねーよ。」

酷く怖い顔の高杉さんが、一歩近付いてくる。

「高杉…テメェまさか、新八犯る気じゃねェだろうな…」

「おうよ、そのつもりだ。」

高杉さんが、ニヤリと笑って更に一歩近づいてくる。
やっぱり…やっぱり高杉さん、僕を殺すつもりで…!

沖田君と神楽ちゃんが、僕を庇うように前に立ちはだかってくれる。
情けないけど…僕は2人の陰に隠れた。

「おめーも狙ってんだろ?風紀委員。俺と同じ目ぇしてんぞ?」

ククク…と笑った高杉さんが、更に僕らに近付いてくる。

今…この人何を言った…?
沖田君も僕を狙ってる…?
ドSだから、僕をパシリにしようとしてる、とか思ってるのか…?
そんな訳無いじゃないか!!沖田君は凄く優しくて…友達想いの良い人なのに!

「沖田君はそんな人じゃない!僕の大切な友人だ、馬鹿にするな!!」

酷い侮辱を腹に据えかねて、恐怖も忘れて2人の前に出る。
我に返ると凄く近くに高杉さんの顔が見えて、怖くて怖くて仕方ない。
…でも…友達を侮辱されて黙ってなんか居られない!

なんとか僕がその顔を睨みつけていると、高杉さんも黙って僕を睨んでくる。
こっ…怖いけど…凄く怖いけど負けるもんかっ!!

「晋助様ファイトー!」

「今がチャンスでござるよー!」

「晋ちゃんガンバ!」

「頑張って下さい!」

…なんか、力の抜ける声援が聞こえるけど…
それも高杉一派の作戦かもしれない!

「…志村新八…」

高杉さんが、ボソリと呟く。

「なんですか…?」

せめてもの抵抗で、ジッと高杉さんの目を見て返事をする。
うん、山で熊に遭ったら目は逸らすな、って言うもんな。
僕が身構えると、両隣で沖田君と神楽ちゃんがファイティングポーズをとる。

「俺の…」

ゴクリ、と喉が鳴る。
何を言うつもりなんだ?この人…

「俺の…」

下僕になれ、とでも言うのか…?

「俺のー…!」

いやそれとも『俺の面子をつぶしやがったな、殺る』とか…
自然と体がガタガタと震える。
カッコ悪いな、僕…でも…

そっと、両側から僕の学ランの裾が掴まれる。
沖田君…神楽ちゃん…!
その、ほんの少しの暖かさが凄く心強くて、僕の震えは止まった。
さぁ!なんでも言ってくるがいい!



「俺の友達になって下さい!」



ガタガタガターン



聞き耳を立てていたクラス中が、机ごと大ゴケをかます。
もちろん、僕らも皆コケた。

なっ…何…が…?ともだ…ち…?

信じられない気持ちで高杉さんを見ると、うっすら頬を染めて目をそらす…
えェェェェェ!?何!?もしかして照れてるのこの人ォォォォォォォォォォ!?
UMA並みに見る事が出来ないであろうモノを見てしまった僕は、すっかり毒気を抜かれてしまった…

「…はい…僕でよければ…」

だから、思わずそう応えてしまった。
友達は…多い方が良いけど…高杉さんと何を話せばいいんだろう…?
遠い目で高杉さんを見ていると、来島さん達が周りを取り囲む。

「良かったッスね!晋助様!!」

「晋ちゃんやったね!」

祝いの声とともに高杉一派に囲まれつつ、小さくガッツポーズする姿はなんだか少し可愛く見えてしまった。
僕は高杉さんを、少し誤解していたのかもしれないや…
本当は良い人なのかもしれない…

「…友達で満足してるといいネ。その隙にサクッと境界線飛び越えてやんヨ…」

「そんじゃぁ俺はそろそろ友達の枠を超えやしょうかね。」

「え?何か言った?」

「「なーんも。」」

僕が振り返ると、沖田君と神楽ちゃんが抱きついてくる。
あ、もしかしてヤキモチやいてくれたとか…?
やだなぁ!高杉君が友達になっても、2人とも変わらず友達なのに!
僕は何だか嬉しくなって、うふふ、と笑って2人に抱きついた。



その時新八の見えない所では、抱きついたまま抱き返されてこれ以上ないドヤ顔を決める沖田と神楽に、高杉をはじめクラスの大多数が射殺しそうな目を向けていた。
そしてその日から、クラス全員を巻き込んだ新八争奪戦が、本人の預かり知らない所で始まったのだった。



END