ないしょ、の、はなし(銀新→沖新)
いつものように大江戸ストアのタイムセールで今晩のおかずをゲットして、いつものように穏やかな帰り道。
たわいのないお喋りが楽しくって、ちょっとでも長く一緒に歩いて帰れるようにと、ワザとスクーターに乗らないで買い物に来たっていうのに…
何でこの人は僕が隣に居るっていうのに他所見するかなぁ…
そんなにアノ制服が気になるっていうのかよ。
僕らが通っていた道の先には、何か事件が有ったのか黒い制服の群れ。
銀さんが気になっているのはあの人達だ。
確かに、あの人達は綺麗だったり可愛かったりするけど、僕の前でそんなに鼻の下伸ばして見惚れる事ないじゃんか!
その顔がムッとしたんで、いつもはしないけど、そっと僕の方から手を繋ぐ。
すると、僕を見下ろした銀さんが、にんまりとイヤらしい顔で笑った。
「何?新八君ど〜したの?」
ニヤニヤと笑う顔がものっそムカつく。
どうせ全部分かってるのに…
「…別に…何でもないです!」
ふいっと銀さんから目を逸らすと、そんなの全然気にしないで僕の目の前に回りこんでくる。
「ヤキモチ、焼いた?」
「そんなんしてませんからっ!大体アンタ、僕がヤキモチ焼くような事何かしたんですか?」
責めるようにじーっと見ても、銀さんは余裕でニヤニヤ笑いを崩さない。
もう!全然反省してないし!!
「いや〜?別にな〜んもしてなくね?新八は銀さんが何かしたように見えたんだ〜?」
…その上しらばっくれるし!
チクショウ、僕がモテないからって安心しきってるんだコイツ!
少し驚かせてやる…っ…
「随分と余裕ですね銀さん。僕だってねぇ、いつまでもアンタの隣に居るとは限らないんですからね?いつかどこかの誰かにもらわれていくかもしれないんですからね!」
そう言って睨んでも、銀さんはムカつく顔で笑ったまま僕を見下ろしてて…
全然心配してない!
「新八は無いだろ。無い無い。沖田君とかなら誰かに貰われてくとか有りそうだけど、お前は無いな。」
…へぇ…沖田さんを見てたんだ…
ならもう僕なんかやめて、沖田さんと付き合えばいいじゃん…
「そんなの分からないですからね!その時になって泣いたって知りませんからねっ!!沖田さんにも振られれば良いんだアンタなんか!!」
「え?ちょ…新八…!?」
ふん!と顔を逸らしたまま、僕がズンズンと歩きだすと銀さんが慌てて追いかけてくるけど知らないよ、もう!
僕はそのまま銀さんを全く無視して万事屋に帰った。
◆
そのまま冷蔵庫に荷物だけ突っ込んで、僕は家に帰った。
神楽ちゃんは可哀想だけど、銀さんだって料理できるしなんとかなるよね!
でも、そんな時に限って僕は運が悪い。
なんでよりによってこの人に会ってしまうんだろう…
「近藤さん来てやせんかィ?」
今日ストーカーを回収に来てくれていた真選組の隊士は沖田さんで…
気付かなかったフリをして脇道にそれてやり過ごそうとした僕は、あっさり捕まってしまった。
…いつもなら、山崎さんや土方さんが回収にやって来るって言うのに、何で今日に限って沖田さんなんだよ…
「あの…僕も今帰ってきたばかりで…」
「んじゃぁ早く鍵開けて下せェ。近藤さん探してんでさァ。」
「…はぁ…」
まぁ、この人も仕事で近藤さんを探しに来てるんだし…無下にはできないよな…
玄関の鍵を開けて、ふと沖田さんの顔を仰ぎ見ると、なんだか凄く疲れているみたいだった。
そういえばさっき見た時忙しそうに働いてたっけ…
でも、その疲れた横顔が凄く色っぽくって綺麗で…ドキドキしてしまう。
僕が鍵を開けたまま固まってしまっていると、怪訝そうに僕を見た沖田さんが、いきなり僕の額に手を当ててくる!?
「なっ…えっ…!?」
「新八くん顔真っ赤ですぜ?風邪でもひいてるんですかィ?」
心配そうにそう言った声が、耳に心地良い。
ゴツゴツしてて、豆だらけの掌が僕の額を優しく撫でる。
この人…サボってばかりだと思ってたのに、こんなになるまで鍛錬してるんだ…
それに、意外と優しいし…
僕を覗き込む顔は、とても綺麗だ…
…銀さんがこの人に見惚れてしまったとしても、全然不思議じゃ無い…
「ちょっと熱ィな…近藤さん探したらすぐに御暇しやすんで、ちっとだけ我慢して下せェ。」
そう言って、そっと僕の頭を撫でる手は果てしなく優しい…
僕にこんなに気を遣ってくれる人だなんて、思ってもいなかった…
こんな人だったんだ…沖田さんって…
「大丈夫です!沖田さんこそお疲れでしょう?忙しいかとは思いますけど、少しだけでも休んでいって下さい。お茶淹れますんで…」
頬に降りて来ていた沖田さんの手をぎゅっと握って力説すると、少しだけ頬を染めた沖田さんが、ふんわりと微笑んだ。
…うわぁ…!!可愛い!!!
「気ィ遣わせちまったねィ…んじゃ、お言葉に甘えて有難く休ませて貰いまさァ。」
嬉しそうに微笑んでくれる表情に、なんだか胸がキュンとする。
僕でさえこんな気持ちになるんだから、銀さんなんかすぐにメロメロになるよなぁ…凄いムカつく。
もし、僕が沖田さんと仲良しになったら…銀さん悔しがるかな…?悔しがるだろうな…
僕が、じっと沖田さんを見ながらそんな事を考えていると、目が合ったその人がさっきよりまた少しだけ頬を赤く染める。
…コレは…
もしかしたら銀さんにヤキモチ焼かせられるかも…
そっと沖田さんの頬に手を伸ばして、意外と柔らかい肌に触れてみる。
「…沖田さんも風邪ひきました…?ちょっと熱っぽいですよ…?」
「風邪なんかじゃ、ねェな…酔ってんでさァ…アンタに…」
そんな台詞でさえ、綺麗な顔のこの人が言ったら僕の心を騒がせる。
なんでだろう…吸い込まれそうだ…
僕は、銀さんにヤキモチを焼かせたかっただけの筈なのに…そんな事、どうでも良くなってきた…
目の前に広がる碧と、僕に触れる低い体温がやけに心地良くて…
僕は流されるまま、その熱に酔いしれた。
◆
「…新八くん…俺責任取りまさァ…俺に貰われてくれやせんか…?」
物凄く無茶したとは思えない、不安そうな表情が可愛い…
全身ダルくて指1本も動かしたくないけど、でもこの人を安心させたい。
だから、そっとその頬に触れてすべすべした感触を感じる。
「僕…男ですが…良いんですか…?」
「勿論でィ!新八くんじゃなきゃ、貰いたくねェ。」
そう言って、真剣な目で僕を見て肩を掴む。
それだけで腰が抜けそうになるなんて…何でこんな事になったんだろう…
でも、それが嫌なんじゃ無くて…むしろ嬉しくて…
銀さんに言っていた事が本当になるなんて…思わなかった…
僕…もらわれちゃった…沖田さんに…
「…はい…僕をもらって下さい沖田さん…」
僕が言ってにこりと笑うと、沖田さんがぎゅうっと抱き付いてきた。
その心臓の音がビックリするくらい早くって、なんだか幸せになってしまった。
あ…銀さん泣いちゃうかな…?
でも知ーらないっと。
END
くらりす/naisyonohanasi
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