はっぴーばーすでー



今日も今日とて姉上のストーキングに精を出す近藤さんに、僕はお誘いを受けた。

『明日は総悟の誕生日なんだ。今晩から誕生日パーティーをするから新八君も来てくれないかい?』

って。
僕は沖田さんと仲良い訳じゃないからさっさとお断りしようと思ったんだけど…

『アイツは友達居ないから』
とか
『万事屋も連れて来て良いぞ』
とか
『今晩はご馳走だ』
とか言われたら…結局断れなかった。

だって、友達居ないとか言われたら…1人で三角帽子をかぶってケーキを前にした沖田さん…とか凄く寂しい誕生日が浮かんじゃったし。
(僕なら泣くね)
万事屋も、って言われたら今朝卵かけご飯だけだった食卓を思い出しちゃったし。
(2人とも死んだ目をしてた)
ご馳走だって言われたら…
真選組なんて男所帯のご馳走っていったら絶対肉じゃん!
唐揚げとか焼き肉とか…もしかしたら鳥の丸焼とかステーキが有るかもしれないじゃん!!
僕だって成長期の男なんだ、肉が食いたい!!!

そんなんで、僕ら万事屋はなんとかやりくりしてんまい棒の詰め合わせにリボンを掛けて真選組屯所に赴いた。

ごちそ…ゴホン、沖田さんの誕生日を祝う為に。



屯所に着くと、近藤さんが話をしていてくれたのか僕らはすんなりその厳つい門をくぐれてパーティーをするという大広間に案内された。
そこでは強面の隊士の皆さんが色とりどりの色紙を輪にして飾りを作ったり、『お誕生日おめでとう』という看板を作ったりしていた。

…なんか以外だけど…沖田さん実は皆さんに好かれてたんだなぁ、と思うと胸がほっこりとした。

「お、新八君来てくれたんだな!じゃぁ新八君とチャイナさんは飾りの方を手伝ってくれ。万事屋は看板な。」

にこにこと嬉しそうな近藤さんが綺麗に作られたわっかの飾りを体に巻きつけながら僕らに指示を出す。
…まぁ…そんな簡単にタダ飯なんか食べられないよね…

「はぁ?俺達は新八に言われて渋々来てやったんだぜ?」

「そうアル。あんなドS坊やの誕生日とか知ったこっちゃないネ。さっさとご馳走食わせるアル。」

「はぁ!?用意の手伝いに呼んだんだろ?報酬に飯喰わしてやるんだからキリキリ働けよ万事屋!」

「「あぁん!?」」

全くやる気の無い銀さんと神楽ちゃんが鼻をほじりながら近藤さんにいちゃもんをつけると、隊士の方々がくってかかって来る。
あぁぁぁぁ!
折角の御馳走がァァァ!!

「ちょっと!銀さんも神楽ちゃんも今日は沖田さんのお誕生日をお祝いに来たんですよ?おめでとうって気持ちで飾り付けましょうよ!」

「アイツが初めて真選組以外で作った友達なんだから、祝ってやってくれんか?」

下心満々の僕と、純粋に嬉しそうな近藤さんがそれぞれ言うと、顔を見合わせた銀さんと神楽ちゃんが大人しくそれぞれの作業に向かう。
なんだかんだ言ってこの2人も沖田さんの事嫌いじゃ無いんだよね。

全員で頑張って部屋中を綺麗に飾り付けた頃に、食堂のおばちゃん達が誕生日用のご馳走を運んで来てくれる。
まだまだ有る、って言われたんで僕らも運ぶのを手伝って大広間中に並べると、それはどれも美味しそうで…僕らは待ちきれなくてこっそりつまみ食いした。

「おいしー!」

「ウマいネ!早く腹一杯食べたいアルー!」

「あ!コラ!!」

僕らのつまみ食いに気付いた隊士の方が、楽しそうに笑いながら拳を振り上げる。
でもそれは本気じゃ無くて…僕と神楽ちゃんはきゃーきゃーと笑って逃げた。
皆これから始まるパーティーにワクワクしてて、テンションが上がっていて。
準備の為に土方さんが見廻りと称して連れ出していた主役が早く帰って来ないかとドキドキしていた。


『死ねやゴリラァァァ!死ねやゴリラァァァ!』


いきなりどこからか、激高した姉上の声が響く。
え!?何!?

「お、トシか?こっちは準備オッケーだ。もう着いた?んじゃ総悟を大広間に連れて来てくれ。」

静まりかえった大広間に(多分)土方さんと電話する近藤さんの声が響く。
…まさか…
近藤さんの携帯の着信音…姉上の…?

今日ばかりは何も聞かなかった事にしよう…

「皆、総悟が帰って来たぞー!さぁ、パーティーの始まりだ!!」

事前に1人1つ配られてたクラッカーを構えて、全員で身を潜める。
暫くすると、ぶつぶつと文句を言う声とそれを宥める声がする。

さぁ、いよいよだ…


「近藤さん、戻りやした。俺に用ってのは…」

ガラリ、と開けられた襖の向こうにはいつものように無表情の沖田さん。
全員で一斉に沖田さんに向かってクラッカーを鳴らすと、その表情は驚いたものになる。
ポカン、とコチラを見つめる表情は今まで見た事もないもので、それがなんだか凄く可愛く見えた。

『誕生日おめでとうー』

全員でそう言うと、部屋の中をキョロキョロと見回した沖田さんは、一瞬嬉しそうに笑って、そしてすぐに照れたように脹れっ面になった。

「誕生日とか…ガキじゃあんめーし…」

「いくつになっても誕生日なんてめでたいものだぞ?それに酒盛りのネタを俺達が逃すと思うか?」

にかりと笑う近藤さんに沖田さんもにやりと笑って、ズカズカと座布団を3重に敷いている席に座りこむ。
あ…っと!
僕が頼まれていたタスキを手に沖田さんに駆け寄ってそれを掛けてあげると、沖田さんが僕を見て驚いたように目を開く。
うわー『今日の主役』ってタスキがなんか似合う…

「何で新八くんが居るんでィ…」

「近藤さんに誘って頂いたんです。沖田さんのお誕生日だからって。」

「…ご馳走目当てですかィ…?」

「そんな事無いですよ!沖田さん友達居ないって言うから!…寂しいかな…って…」

僕がちょっと誤魔化すように言うと、沖田さんが無表情になる。
あ…僕、ヤバい事言ったかな…?
なんとか誤魔化そうとプレゼントに持ってきていたんまい棒の詰め合わせを盾にするように差し出す。

「ちゃっ…ちゃんとプレゼントも持って来たんですよ?…まぁ…んまい棒ですけど…でも!沖田さん駄菓子好きみたいだし喜んでもらえるかなぁ…とか…」

へへへ…と誤魔化し笑いも交えながらそう言いきると、沖田さんは遂に俯いてしまった!
やっ…やっぱりんまい棒は無かったかな!?
もう少し高価なものが…でも万事屋にはコレが精一杯だったんだよ!
手ぶらじゃないだけでも許して欲しいよ!!

「…がと…ごぜェやす…スゲェ…嬉しい…」

「へ…?」

沖田さんが何か言ったんで慌てて見上げると、僕の心臓は一瞬止まった。
だって、沖田さんが…沖田さんが物凄く可愛い顔で笑って僕を見つめていたんだから!!
そっ…そんな顔見た事無いし!!
ってかこの人こんな顔出来るのかよ!?反則だろ!反則!!!
イケメンがそんな顔で笑ったら男でも落ちるだろ!?

「どっ…どういたましてェェェ!!!…あ!お誕生日おめでとうございましゅゥゥゥ!!」

僕がカミカミでそう叫ぶのが面白かったのか、その後僕はずっと沖田さんの隣でお酌をさせられた。
それが別に嫌じゃ無い僕は…何かおかしなものにヤられてしまったのかもしれない。



END