今日僕はサンタの存在を信じました。



この日だけは特別だから。
可愛いあの子と今日の日の為のご馳走を二人だけで喰って。
あの子は俺の口の横に付いた喰いカスを、呆れたように、でも優しく笑いながら取ってくれて。
俺はお返しとか言って、あの子の唇ごとぱっくり喰らうんだ。
そんなクリスマスとか…

ある訳ねェよ、そんな事。

だって俺とあの子はそんなに話した事すら無ェし。
なんか苦手だー、ってオーラ出されてるし。
それに俺今日仕事だし。
決してあの子をなんとか攫おうと思って様子見に行ったらすんごい良い笑顔で万事屋三人揃って仲良く仕事に出掛けちまったから打ちのめされて仕方なく仕事してる訳じゃ無ェし…



ブラブラと見廻りしたり昼寝したり買い喰いしたり昼寝したりしてる間に辺りが暗くなってきて。
そうすると辺りがキラキラしたネオンに彩られておまけに雪までチラついてきた。
クソカップルやら家族連れやらが、なにやら楽しそうにふらついてる。
皆、楽しそうに笑ってる。

…別に寂しくねェし…

俺だって屯所に帰ったら近藤さんも土方も山崎も原田も皆居るし。
どうせアイツらなんざモテねェから、クリスマスイブっていっても彼女とイチャつくなんざ無ェだろうし。

…ケーキの一つも買っていってやろうかねィ…今日だけはタバスコ抜きで…

そう思い立った俺は、いつも行くケーキ屋よりちょっとだけ高級なケーキ屋に足を向けた。



ソコで俺は信じられないものを見た。
ガラにもなく、神様って居るんだなぁ、なんて思っちまった。

そう、そのケーキ屋の前には、銀と桃の化け物に囲まれて、黒髪おさげの天使がケーキを売っていたのだ。
ふわふわの毛が付いたミニスカサンタの衣装に身を包んだ天使…あの子がふわりと微笑む度に寂しかった俺の心が暖かくなる。
俺がフラフラとそこに近付いて行くと、銀と桃のバケモンが俺を威嚇してくる。ウゼェ。
ソイツらをガン無視してあの子の前に立つと、最高の笑顔を向けてくれた。

「いらっしゃいませ!ケーキいかが………おっ…沖田さんんん!?や!あのコレは…!」

俺だと分かった途端、顔を赤らめてあたふたと言い訳を始める。
別に虐めねェのに…
上がってたテンションがちょっと下がってくる…もうさっさとケーキ買って屯所に帰ろう…

「ケーキ下せェ、イチゴのヤツ。」

俺が俯きながら注文すると、あたふたしてたあの子がビクリと震えた。

「えっ!?あ、はいっ!1個で良いですか?」

「あー…」

じーっと見ると机の上にはケーキが三個。
売りきったら終わりなんですかねィ…?
んじゃ…

「三個くれィ。」

「え!?3個全部ですか!?」

「屯所への土産でィ。寂しいオッサン達に差し入れしてやるんでさァ。」

俺がそう言い訳すると、あの子がスゲェ綺麗に笑って真っ直ぐに俺を見た。

「沖田さんって実は優しいですよね、身内には。…ちょっと羨ましいなぁ。」

「…んな事ねェよ…」

「そんな事有りますよ。あ!ちょっと待っててもらえますか?」

俺がさっさと支払いを済ませて立ち去ろうとすると、あの子が俺を引き留めた。
ケーキもくれねェし…三個入る袋でも用意してくれてんのかねィ…?別に積み上げて持ってくから大丈夫だってェのに…

「沖田さんお待たせしました!」

暫くして店から出て来たあの子はサンタ服の上にポンチョを着て、真っ白いマフラーと手袋も着けてた。
更に可愛くなってら…

「1人で3個も持って帰るなんて無理ですからね!僕も一緒に行きます。」

にこにこ笑ってそう言ってくれる姿は滅茶苦茶可愛い。


…って…マジでか!?


俺がじっと見つめたまま動けないでいると、又にっこりと微笑んだあの子が俺にケーキを渡して手を取って歩きだす!

「あ!ちょ!新ちゃんどこ行くの!?」

「ドSについてくなんてダメネ!!」

「煩いです。1回に3個も買ってくれてたんですから当然です。店長だって良いって言ってくれてるんだから文句言わないで下さい。それよりあんたらは僕が居ない間にしっかり残りのケーキ売り切って下さいね。売れてなかったら怒りますよ…?」

にっこりと笑ってるのに恐ェ…
こんな顔もする子なんですねィ…

「じゃぁ行きましょうか?」

俺を見て嬉しそうに笑ってくれる姿は夢じゃないかと思うほどだ。
俺の身にこんな事が起こるなんて…クリスマスってスゲェ…マジで…

「…サンタって居たんですねィ…」

「え?」

しまった。
口に出てやした…

「…あー…新八くんその格好似合いやすねィ。本物のサンタに見えまさァ…」

なんとか誤魔化そうとそう言うと、その顔が真っ赤に染まってフイっと目を逸らされる。
俺、変な事言いやしたっけ…?

「こっ…これ、女装ですよ!?似合うとかそんなの…」

あぁ、そういう事か。男の子ですからねィ。
でも、ぷっくりと膨れる姿も可愛いんですけどねィ…

「すいやせん。でも、俺ァ可愛いと思ったんでさァ。」

珍しくまともに口説き文句言えちまった。
でもそんなん…気持ち悪がられるんじゃね…?
そっとその顔を覗き見ると、照れたような笑顔で…

「…可愛い…ですか…?………嬉しいです………」

なんて言われた…!!!!!
え…?マジですかィ…?
もしかして新八くん、俺の事嫌いじゃないんで…?

「…あー…このケーキ…良かったら新八君も一緒に喰いやせんか…?なんだったら鳥や寿司も追加しやすけど…」

「…2人で…ですか…?」

「勿論!オッサンどもになんか邪魔させやせん!!」

「…なら…フライドチキンとお寿司…買って行きませんか…?」

真っ赤な顔の新八くんが一歩俺に近付いてくるから、俺も一歩新八くんに近付いた。

クリスマス最高!
サンタってもしかしたら本当に居るのかもしんねェ、と俺は思った。



END