誕生日のプレゼント



毎年この時期になると届く優しい便りと過度な期待。
それは俺にとって嬉しいけど少しだけ厄介なモノだ。

「総悟ー!今年も届いてるぞ、ミツバ殿からの誕生日プレゼント。今年はどんなお洒落な着物なんだろうな?」

全開の笑顔で俺にその包みを持ってくんのも毎年近藤さんって決まってて、姉上のプレゼントに便乗して必ず一緒に近藤さんも俺にプレゼントをくれる。もう子供じゃないってェのにねェ。

「誕生日おめでとう!ちょっと早いけど俺からのプレゼントも今一緒に渡しとくな。中身は開けてからのお楽しみだぞー!今度一緒にやろうな!!」

…なんとなく中身がバレる事を言っちまうのも毎年の事だ…今年はゲームか…

「有難うごぜぇやす。」

この二つのプレゼントを受け取る時の気恥ずかしさや嬉しさは、ガキの頃から少しも変わらねェ。多分俺がおっさんになっても変わらねェだろう。
そして俺ァ二人が祝ってくれればそれだけで満足だ。
優しい二人はそうじゃねェんだろうけど…



早速自室に帰って貰った包みを開ける。

近藤さんのはやっぱり最近流行りの格闘ゲームで…そういやこないだやりたいって近藤さん言ってたっけ…次の非番にでも相手してやりやすか…

姉上の方は毎年変わらずその年流行りの着物だけど、何時まで経っても箱を開ける瞬間はドキドキしていけねェ。
そこにあったのは、今年流行りの縦縞の着物とそれに合う渋目の袴で…やっぱり姉上はセンスが良い。俺じゃァこうはいかねェよ。

有難く着物を箪笥にしまって、箱の前に正座する。
勿論着物も嬉しいに違いねェが、俺が本当に待ち望んでるモノは着物の下にそっと入れられている姉上からの手紙だ。
ソレは毎年俺に多大なプレッシャーをかけやがるが、それでもやっぱり楽しみなモンで。普段貰う手紙とは格が違う代物だ。


『 沖田総悟 様

ますます暑くなる中、お元気でお仕事頑張っていますか?

(もちろん元気でさァ!)

私もお陰様でここ暫くは体調も良く、庭に花などを植えて育てております。

(姉上が育ててんならきっと綺麗な花…)

今度帰省した時にはもぎたての美味しい野菜をごちそうしますね。
最近新しいドレッシングを開発したの!
タバスコに七味唐辛子とマヨネーズを足して、隠し味に練り辛…うふふ、それは食べてからのお楽しみね。

(…姉上…辛子にも手ェ出したんですかィ…)

本当なら直接言いたいのだけれど、お仕事の邪魔になりそうなので今年もお手紙でごめんなさい。

そーちゃんお誕生日おめでとう。
随分と大きくなったけれど、貴方はいつまで経っても私の大切な弟です。
貴方が私の弟として産まれてきてくれた事に、本当に感謝しています。
大好きよ、そーちゃん。

(…俺も…俺も姉上が俺の姉上で良かった。感謝してやす!)

いつも同じで捻りが無いけれど、今年も流行柄の着物を贈ります。

(イヤイヤ!姉上の見立ては最高でさァ!!)

これを着て格好良いそーちゃんになって、今年こそ可愛い彼女(お嫁さんでも良いのよ?笑)を紹介してくださいね?
早く甥っ子か姪っ子が見たいわ。


それじゃぁ今年も一年身体に気をつけてお仕事も恋愛も頑張って下さいね。


沖田ミツバ 』


…このプレッシャーは毎年の事でも慣れねェや…
まぁ、弟想いの姉上だから本当に心配してくれてんのは判りやすけどね…

今ん所期待には応えらんねェけど…今度洒落た着物でも着てナンパしてみやしょうかね………



そう思ってむかえた非番は俺の誕生日で。

近藤さんとゲームでもしようと思ってたのに、土方の野郎が邪魔しやがって一緒の非番にはならなかった。

やっぱアイツ死んでくんねェかな…


仕方ないんで俺ァ姉上に頂いた新しい着物を着て、一人町中をブラブラした。

折角だしナンパでもしてみっかとそこいらを歩いてる女を観察してみたけど、どうにも触手が動かねェ。
最近の女はどいつもこいつもケバくていけねェや。全然俺の好みじゃねェ。

一人ぐらい居ねェのかよ、ちょっとイモいぐらいの素顔美人は。磨いたらキラッキラに光るダイヤモンドの原石みてェなのは。
あ、眼鏡っ子とかだと良いかもしんねェ。
んで、人の話はちゃんと聞くけど流されねェ芯のしっかりしたヤツで、俺のボケにツッコミなんて出来たら最高だねェ…
そんな女が居たら即ナンパすんのになァ。
居ねェんだもん仕方ねェよ姉上。俺ァ努力はしやした。


あっさりナンパは止めにして、新しい落語のCDでも買おうかとCD屋に行くと、何故かそこはやたらと混んでいやがった。
よーく見るとなんかイベントをやってるようで、やたらとキャラの濃い例のアイドルが放送コードギリギリアウトな歌を歌ってた。

その人混みを避けて落語CDのコーナーに向かってる途中、その群れの中から何かが飛び出してくる。

…何だ…?人…か…?

思わず受け止めると、ソイツは黒目がちなでっけぇ瞳できょとんと俺を見上げてきた。


………居るじゃねェか、こんな所に………


ちょっとイモいすっぴんの黒髪ショート、その上大事そうに抱えた荷物の上に眼鏡まで乗ってらァ。
きっとコイツ笑ったらスゲェ可愛い。

だから俺ァ荷物の上に乗ってる眼鏡をそっとソイツにかけてやりつつ言っちまったんだ、

「俺と茶ァでも飲みやせんか?」

って…ソレが誰かも知らずに…


「え!?沖田さん!?何で僕!?」

その眼鏡をかけたツラはよく見かけるツラで…男で…

「イヤ、アレでィ…俺今日誕生日で…」

「え!?沖田さんお誕生日なんですか!?おめでとうございます!それじゃお祝いしないと。」

いきなりなのにソイツ…近藤さんの想い人の弟、志村新八は、にっこり笑って俺に祝いの言葉を告げた。
…何でィ…やっぱ可愛いじゃねェか…

「あ、でも僕お通ちゃんのCD買っちゃったから駄菓子屋さんのかき氷ぐらいしかご馳走できないや…イヤ、こういうのは気持ちですよね?ね?今日は暑いし!沖田さん何味が良いですか?」

「…さして仲も良くない俺にかき氷奢るなんざ太っ腹ですねィ新八くん。」

俺がそう言って笑うと、新八くんの顔が面白いぐらい真っ赤に染まる。
あー、ますます可愛い。心臓がドキドキしまさァ。

「ふっ…太っ腹なんかじゃないですけど!でもここで逢ったのも何かの縁だし…沖田さんの誕生日だったなんてすごいラッキーだし…」

なんかモゴモゴ言ってっけど、この空気は居心地が良い。もう少しコイツと一緒に居て話をしてみたい…なんざ俺らしくねェや。でも…

「んじゃ俺が奢りやすんでふぁみれすにでも行きやしょーぜ。」

「は?何言ってんですか、誕生日の人に奢らせる訳ないでしょ。大人しく祝われて下さい。」

「…んじゃ、ゴチでィ。」


二人して移動した先でも安っぽいかき氷を喰いつつ俺達ァよく喋った。
何で今迄ロクに話もしなかったんだと思うぐらいその場は居心地が良くて。
新八くんが赤い顔で笑う度に俺の心臓はドキドキと煩くなって、だんだんヤバい感じになって。

「沖田さんの着物お洒落ですね…流石イケメンは何を着ても似合って、かっ…格好良いですよね…」

なんて言われたらベンチに押し倒しちまいそうになるのをなんとか理性を総動員して抑えた。

…ヤベェ…俺新八くんの事…


姉上、来年の誕生日までにはきっと可愛い彼女を紹介出来ると思いやす。
だから楽しみに待ってて下さい。
俺が本気出して落ちないヤツは居ねェから。

それに、

「新八くんの誕生日には、俺がもっと旨いモン奢ってやりまさァ!」

って言った時の、嬉しそうな真っ赤な顔は期待して良いと思いやすからねィ。

だから、もうちょっとだけ待ってて下せェ。
最高に可愛くてしっかり者の恋人、紹介しやすから。
きっと姉上も気に入る筈です。
きっと。



END