僕らが食堂に入ると、そこに居た隊士の皆さんがざわめいた。
何だろう…?嫌な雰囲気ではないんだけど…ちょっと変な感じだ…

一瞬僕が立ち止まると、沖田さんが繋いだままでいた手を高々と上げた。

コレかァァァ!
何で手繋いだままだった僕ゥゥゥ!?

食堂にどよめきがおこって、僕は慌てて手を離した。
そうしたら沖田さんがどこかに行ってしまって、僕は周りに居た隊士の皆さんに促されて食堂のど真ん中に座らされてしまった…
おっ…沖田さんんん!こんな所で1人にされたらいたたまれないよォォォ!!

そっと端の方に移ろうと僕が立ち上がると、僕の前に美味しそうな定食が差し出される。
その横には小さなケーキもある………年の数だけロウソクが立てられて燃え盛ってる………

「ちょ!コレェェェ!!燃えまくってますけどォォォ!!!」

「お、急がねェと。」

『アネさん、誕生日おめでとうございます!!』

食堂に居た皆さんが僕の誕生日祝いの言葉をかけてくれたけど、一部おかしくなかったか…?

「沖田さん今…」

「新八くんローソクローソク。」

言われて慌ててロウソクを消す。
生半可な風じゃ消えないから僕の持てる肺活量の全てを使って…それだけで疲れたよ…

「あの…コレって嫌がらせですか…?」

「俺らの気持ちでさァ。」

「気持ちが重いです。」

「そんな事ァないと良いですね。さ、遠慮せず喰いなせェ。折角のおばちゃんの料理が冷めちまわァ。」

…何かをウヤムヤにされた気がするけど…
確かにせっかくの美味しそうな料理が冷めちゃうもんね。
アレはきっと僕の聞き間違いだ。姐さんの弟さん、とかだったんだよきっと。


「「いただきます」」

2人で手を合わせて定食をいただく…美味しい!凄く美味しいよコレ!!
良く考えたら真選組屯所の食堂のご飯なんてそうそう食べられるものじゃないもんな…貴重な体験だよ。
普段沖田さんはコレを食べてるんだよな…ちょっと羨ましい…

ロウソクまみれのケーキまで美味しくいただいて、食後のお茶を飲みながら沖田さんと雑談していると、なんだか外が騒がしくなった。
あ…何か事件が有ったのかな…?

「出動ですか?」

「イヤ、ある意味テロリストが屯所に来たな。」

「えぇぇ!?ココに!?」

随分大胆なテロリストだな!真選組屯所に乗り込んでくるなんて。
よほど腕に自信が…
そう思っていた僕の耳に聞こえてきたのは、僕が良く知る声で………

「新八ぃー!ドコアルカ!?返事するネ!!」

「ウチの子ドコに隠してんだサド王子!目撃証言があがってんだよ!!」

「わんっ!!」

「神楽ちゃん!?銀さん!?定春!?」

思わず僕が叫ぶと、すぐにドタドタと足音が響いて3人が食堂に雪崩れこんできた…


「新八ぃー!無事アルカ!?ヤられてないアルカ!?」

「神楽ちゃん何とんでもない事言ってんの!?」

赤い弾丸みたいに僕めがけて走ってくるけど、何かおかしな事言ってるよこの子!!


「新八無事か!?どっか無くなってないか!?お前に何かあったら俺がお妙に殺されるんだからな!?」

「何も無くしてませんよ!むしろ増えてます!!」

「何!?おっぱい付けられたかァァァ!?」

「何でだァァァ!?」

群がる隊士の皆さんを押しのけて、銀さんも僕めがけて走ってくるけどあの人もおかしな事言ってるよォォォ!?


「わん!わんっ!!」

定春も隊士の皆さんを蹴散らして僕に向かってくる。


僕の出勤が遅くなったから…心配して探してくれたのかな…?
なんか嬉しいかも………って!
ちゃんと話して3人を止めないと皆さんに怪我させちゃうよ!!

「銀さん神楽ちゃん定春!僕別に攫われた訳じゃないです!!沖田さんに誕生日を祝って頂いていたんです!!そろそろ万事屋に戻ろうと…」

「そりゃぁ出来ない相談でさァ。新八くんの誕生日はまだまだこれからでィ。」

そう言った沖田さんが、いきなり僕を横抱きにして銀さん達をすり抜けて走り出した。
うわっ!?僕を持ってこんなスピードで走るのこの人…っ!?
凄いなぁ…でもこんな事無いからなんだか楽しい!!

「すいません銀さん!夕飯までには帰りますからー!!」

「あっ!待てヨドSー!」

「ちょっ…新八ー!」

「わおーん!!」

心配してきてくれた3人には申し訳ないけど、もう少しだけ沖田さんと一緒に大騒ぎしたくって、僕は沖田さんにしがみついて連れられるまま逃げてしまった。





僕を抱えた沖田さんが向かったのは、近くの河原だった。
暫く走って疲れたのか、僕を降ろした沖田さんは河原に座りこんでしまった…大丈夫かな…?

「お疲れさまでした!凄いですね沖田さん、僕とそんなに体格変わらないのに…」

「鍛え方が違うんでィ…」

自慢げに言ってるけど結構辛そうだよね…
持っていたてぬぐいで額の汗を拭いてあげると、ピクリと震えた沖田さんがポケットから布に包まれた何かを取り出して、僕の手に握らせた。
…何だろう…?

「誕生日プレゼントでィ…」

「え!?沢山貰いましたよ!?」

「あんなんオマケでィ。本命はコレでさァ…」

沖田さんが照れたように横を向いてしまったんで、布に包まれたそれを開けてみると…

「刀の鍔…?凄くキレイですね…でも、僕真剣持ってませんけど…」

家にある刀は立派な鍔が付いてるし、真剣を新調する気は更々ない。

「本体は…道場復興してからプレゼントしてやらァ。」

「へ…?」

道場を復興したら、って…そりゃぁいつかはって思ってるけど…そんなすぐにじゃないよ…?その時も…僕の近くに沖田さんは居てくれるって事なのかな…?

「…そんなの…いつになるか解りませんよ…」

ジッと沖田さんを見ると、真剣な表情で僕を見返してくれた。
意味分かって言ってるのかな…この人…

「縁者って事で真選組ご用達にしてやらァ。」

「…ゴリラの婿入りは謹んでご遠慮させて頂きます。」

そう言う事だよね…?
それとも沖田さんが姉上を狙って…?…チャレンジャー…
今日の僕へのプレゼントの数々は外堀から埋める作戦なのか…?

そこまで考えて、僕の心臓はギュッと締め付けられた。
胸が痛くて…泣きそうだ…何だコレ…?

「そうじゃねェよ…まぁ、それも良いけど…新八くんが王子に嫁入りじゃ駄目ですかィ…?」

「はぁっ!?僕男ですよ!?………サディスティック星の…ですか…?」

僕がチラリと沖田さんを見ると、らしくない不安そうな顔でジッと僕だけを見ていた。
そんな表情見せられたら…胸の痛みはどこかに行ってしまって、涙があふれてしまったじゃないか…

「復興した後もずっと一緒に道場盛り上げていきやす、っていうお買い得物件ですけど。」

自信満々に手を差し出す姿は、光に当たってキラキラ光ってて本当に王子様みたいだ…
イケメンってのは本当に無敵だよね!僕が…その手を取りたくなっちゃうんだから…

「絶対ですからね?」

僕がその手を取ると、ほうっと息を吐いた沖田さんが子供みたいに全開の笑顔を見せてくれた。
手…震えてた…沖田さんも緊張してたんだ…


「新八ぃー!パーティーの時間アルー!!」

「ケーキ食うぞケーキ!!」

「わんわん!」

万事屋の皆が迎えに来てくれて僕が手を振ると、沖田さんが舌打ちをする。

「アイツらマジで邪魔でさァ…ずっと新八くんを独占してやがんだから、たまには俺に譲りやがれ!今日だってアイツら出しぬくのにどんだけ苦労したか…」

…だからあんな時間に家に居たんだ…
そんなに頑張ってくれるなんて…ヤバい…きゅんとしちゃった…
でも…

「沖田さん、僕の我儘聞いてくれますか…?」

そう言ってジッと目を見つめると、暫く目を逸らさなかった沖田さんがフイッと横を見て大きく溜息を吐いた。

「…どうしても俺ァ新八くんには弱いんでィ…我儘聞いてやらァ…」


僕の我儘は、この後は皆で誕生日パーティーをする事。
銀さんも神楽ちゃんも定春もお登勢さんもキャサリンさんもたまさんも姉上も近藤さんも九兵衛さんも長谷川さんも、大きなケーキを囲んで僕の誕生日を祝ってくれた。もちろん沖田さんも一緒に。

そのパーティーはやっぱり大騒ぎになって、僕はいつものように突っ込みで疲れ果てたけど、すっごく楽しかった。
皆に出会うまでは、いつも姉上と2人の誕生日だったから…やっぱり皆でワイワイと騒ぐ誕生日パーティーは楽しくて嬉しい。


でも、来年からは…
これまでとはまた違う誕生日が迎えられるのかと期待しながら、隣でうたた寝する大好きになってしまった人のほっぺたをつついてみた。


END