迎えた朝
その日は今まで経験した事もない頭痛がして目が覚めた。
ガンガンと頭が割れそうに痛くて、それでいてグルリと目が回る。
僕…夕べ何したんだっけ…?
「うーん…」
唸りながらも、張り付いたまま開かない目蓋をなんとかこじ開けてみると、そこに広がったのはいつもとは違う天井…
…え…?
ココ…ドコだ…?
とりあえず頭だけ動かして辺りを窺うと、ソコは広めの和室のようで、僕はフカフカの布団に寝ていた。
………誰かと………
そう認識した途端、頭痛は吹っ飛び物凄い量の汗が全身から噴き出した。
え!?
ちょ…
えぇぇぇぇぇっ!?
マジで夕べ何しちゃったの僕ゥゥゥ!?
誰とドコで何をォォォ!?
脳内だけは焼き切れるぐらい回転してるけど、あまりの事に僕は見動きすらできないで固まってしまった。
イヤイヤイヤ、このままじゃダメだ!
勇気を出してそーっと布団を捲ってみると、僕は大方の予想通り、全裸だった。
そのままそーっと隣を見ると、背中を向けて丸まって寝ているそのヒトも、全裸だった。
………これは………ぼく………K点超えた………?超えちゃった………?
……………誰と………………?
起き上がってしっかりとそのヒトを確認するのが一番早いっていうのは、僕だって解ってる。
解ってるんだけど…
今の僕は、ソレが怖くて出来ない。
だって…起きてから少し経って頭がスッキリしてきたから…僕はうっすらと夕べの事を思い出し始めてしまっているから………
そう、昨日僕ら万事屋は、近藤さんに誘われて真選組の宴会に参加させてもらったんだ。
本当は僕だけが誘われてたんだけど、つい口を滑らせてしまったらあの2人がそんなおいしい話を放っておく訳が無くって…しっかり僕についてきてしまったんだ…
もちろん顔を合わせた途端、銀さんと土方さん、神楽ちゃんと沖田さんがケンカを始めたんだけど…そんなのは勝手にやらせといて、僕は近藤さんと山崎さんと一緒に健全に美味しくお茶やご飯を頂いていたんだ。
でも、そうこうしているうちに近藤さんの周りにたくさん隊士の皆さんが集まり始めて、男所帯特有の悪ノリが始まってしまったのだ。
近藤さんは早々に全裸になったし(色んな意味で凄かった…)、山崎さんはあんぱんって唱え始めた。
ケンカを終えた銀さんと土方さんは、懲りずにお酒の呑み比べをしていたし、神楽ちゃんはそこいらじゅうの食べ物を吸い込んでいた。
沖田さんはいつの間にか僕の隣に居て、幸せそうに酒瓶を抱えてうとうとしていた。
強面の隊士の皆さんも、話してみると良い方ばかりで話も面白くって、楽しくて僕も浮かれちゃってて…ついつい勧められるままに、お酒に手を伸ばしてしまったんだ…
そう、ソレはさすが真選組の宴会で呑まれているモノだけあって、どれも凄く美味しかった。
だから僕は、渡されるまま次から次へとグラスやらお猪口やらジョッキやらを空けていって………ドコからか記憶が途切れてしまって、今に至る………と………
その事を考えると、多分僕が今寝ている所は真選組屯所のどこかの部屋で…隣で寝ているのは隊士の誰か…つまり男だ。
夕べアソコに居た女性は神楽ちゃんだけだったし、神楽ちゃんはこんなにガタイ良くないからね。
まぁ、ガタイが良いと言っても男にしてはシュッとしてるけど、女の子の体じゃない。
ついでに言うと、この人は銀さんでもない。
銀さんはホラ…父上みたいな臭いするから。
でも隣に居るヒトは、なんか良い匂いするし…
だから、このヒトは真選組の誰かなんだ。
そこまで解っちゃってるから…僕はこのヒトを確認したくない。
だって全裸だよ!?全裸!!
こんなのもしかしたら何かあったみたいじゃないか!
僕は、ハジメテは女の子が良いんだ!!
断然、お通ちゃんみたいな、女の子が!!!
…イヤ、いくらお酒が入ってたからってそんな間違い有る訳無いけどさ!万が一!万が一だよ!!
…待てよ?
そうだよ、僕がそんな事有る訳無いじゃん!
もしかしたらお酒をたらふく飲んで記憶を飛ばして寝ちゃった僕を面白がって、真選組の皆さんがドッキリを仕掛けてるんじゃないのかな…?あの時の銀さんみたいに。
よーし、ここは騙されたフリをして、さっさと『ドッキリ大成功』の看板を持ってスタンバってる山崎さん(予想)を呼び込んでやるとするか!
勢い良く布団を捲って、ガバリと起き上がって、さぁリアクションするぞ!と意気込んだ僕だったのに、口から出たのは全く違う言葉だった。
何故かって…?それは…そんな事言えないような痛みが僕を襲ったから…
「いっ…痛ァァァッ!何コレっ…腰が…って!気持ち悪いィィィ!何か…何か出てる…っ…!?」
「…煩ェなァ…あぁ、起きたんですかィ…」
僕が恐ろしい事態にアワアワしてると、隣で寝ていた男がのっそりと起きた。
この声…この口調は…
「おはよーごぜェやす…イキナリ起きたら体辛いですぜ…昨夜は無理させちまいやしたからねィ…」
「おはようございます…って!おっ…沖田さんかァァァ!?」
僕が顔を確認しようと振り向く前に、スルスルと伸びてきた腕に体を拘束されてぎゅうぎゅうと締め付けられた!?
うわァァァ!
何だコレ何だコレ何だコレェェェ!!
なんで僕の心臓ドキドキすんのォォォ!?
その上素肌の感触が気持ち良いとか、低目の体温が安心するとか…何おかしな事想っちゃってんのォォォ!?
なんで僕の上で必死な顔で揺れてる沖田さんの姿なんて浮かんじゃってるのォォォ!?
見た事無い!見た事無いからそんなのォォォ!!
その映像が怖くて痛みに耐えながらもなんとか拘束から逃れようと動いたのに、沖田さんの腕は緩むどころか更に締まってきた…うぅぅ…
ピッタリくっついてると…見た事無いはずなのに、暗闇に浮かぶ沖田さんの笑顔が脳裏に浮かんでくる…何…?
「なんでェ…冷てェじゃねェかよ新八くん…昨夜はあんなに愛しあったってェのに…あ、俺が中々起きなかったんで拗ねてんのかィ?仕方ねェなァ…」
おっそろしい事をブチかました沖田さんが僕をグルリと回して正面から向き合わせて、今まで見た事も無いような優しげな笑顔を浮かべた。
なっ…なァァァ!?
そしてそのまま僕に近付いてきて、キっ…キスをしてきたァァァ!それもかなり深いヤツ!!
「ふっむぅぅぅ!?」
ピッタリと口を塞がれながらも、なんとか離そうと顔を押してるっていうのに、どんな力を込めてるのか全く離れない!
それどころかどんどん距離を詰められてるよォォォ!!
そのうち酸欠のせいか気持ち良さのせいか、僕の頭はボーッとして何も考えられなくなって…恐ろしい事に沖田さんの背中に手を回して縋りついてしまっていた…
あれ…?この感じ………
凄く落ち着いて安心して…懐かしい感じ………
でも、もっと必死に求められて…嬉しいなって…思った………?
どれぐらいそうしてたのか解らなくなった頃、そっと沖田さんが離れた。
それが凄く寒く感じて寂しくて、今度は僕からその赤くなった唇を追いかけて吸い付くと、ソレが笑うように動いて応えてくれた。
「総悟ォォォ!テメェいつまで寝て………」
スパーンと襖が開いて、すぐに土方さんの怒鳴り声が聞こえた。
ハッ!僕、一体何を…
慌てて離れようと動いた瞬間、僕の腰に走る激痛…!
「痛ァァァッ!!」
「新八くんはウッカリさんですねィ。言ったろィ?今日は動けなくなりやすぜ、って。」
ふんわりと笑った沖田さんが…可愛い…
そっと優しく頬を触られると、なんだろう…すごく不安そうな顔が頭に浮かんでくる…そんな表情見た事なんか無いはずなのに…
「そんな事聞いてませんよ!」
「昨夜言いやしたぜ?それでもアンアン啼きながら俺に腰擦りつけてきたじゃねェか。」
「そっ…そんな事するかァァァ!!」
大声出しても痛いけど、そんな事言ってる場合じゃないぞこれ!
本当にそんな事したような気がしてきた…だって気持ち良…イヤイヤイヤ!
土方さんも襖開けたまま固まってるよォォォ!ドン引きだよォォォ!!
何か言い訳しないと!何か…
「シたから腰痛ェんだろうが。中出しした俺のも出てきてただろィ?」
「生々しい事言うなやァァァ!っ痛たたた…」
思いっきり突っ込んだら腰にきた…
僕がうずくまると、沖田さんが優しく腰を擦ってくれる…
やめろォォォ!なんかキュンとしちゃうだろォォォ!!
全身を優しく這いまわってたこの手の感触を想い出しちゃうだろォォォ!!
「…あー…俺はそういう性癖に偏見とか無いから。気にすんな。」
物凄く目を泳がせたままそう言った土方さんが立ち去ろうとするんで、誤解を解こうと僕が立ち上ると、やっぱりふらついて沖田さんに抱きとめられてしまった…
その腕の感触が…覚えがあって…ダメだ…なんか色々思いだしてきた…僕は夕べ沖田さんと…ノリノリで色んな事シちゃった…んだ…
「だーから、無理すんねィ。」
「でも…っ…」
優しく苦笑なんかされたら、またおかしな気分になってしまう…
イヤイヤイヤ!ここで流されたら僕は………
「新八ー!ココか………あ………なんか、悪ぃ………」
僕と同じく酔いつぶれたのか、屯所に泊ってたであろう銀さんが血相を変えて飛び込んできた…と思ったら、僕らを見て土方さんと同じく固まって、すぐに目を泳がせて足早に立ち去ろうとした。
「ちょ!土方さん!銀さん!誤解…」
「誤解じゃねェよ。恋人になったんだろ?俺達。」
僕が引き留めようとしたら、又沖田さんに口を塞がれてしまった…唇で…
そんな事まで!?
酔った勢いでとかそんなんじゃ…
その時僕の頭の中に浮かんだのは、布団の上で僕に向き直って正座する沖田さんの姿。
…そうだ…夕べ…僕はこのヒトに告白されたんだ…
『新八くん…俺…新八くんが好きだ…』
すごく不安そうな…真剣な顔で………
僕は何て応えたんだっけ………?
心臓がドキドキして…ふわふわして………
何も言えなくて、抱きついた………
「うぉー!新八らぶらぶネ!サド、テメェ新八泣かせたら許さないアル!!さっそくアネゴに報告するヨー!」
銀さんに続いて駆け付けた神楽ちゃんは、僕らを見てニヤリと笑って、恐ろしい事を言って駆け去ってしまった…
イヤァァァ!待って神楽ちゃんんんー!!
姉上は!姉上だけはァァァ!!
「…これで俺達公認カップルですねィ。」
凄く近くで嬉しそうににっこりと笑った沖田さんがそんな事言うけどでも…
それがそんなに嫌じゃないなんて思ってしまった僕は、少しだけ素直になって、コクリと頷いた。
END
→