ちょこれいとの日(新八篇)



2月にはいると、もうそこいら中。

カラフルな色彩と、甘い香りが空間を埋め尽くす。

女の子達にとっての一大イベントが始まるから。

まぁ、僕ら男にとっても一大イベントだけど…

僕は毎年ドキドキするだけで、特に甘酸っぱい何かが有る訳でもないちょっとイラッとする日だった。



そう、去年までは。

でも、今年は違うんだ。

本来の意味とは違うけど、僕にとっても今年のバレンタインデイは一大イベントで。


何をどうしたか好きになってしまったあの人に、僕は女の子ではないけれど、ドサクサに紛れて告白しようと決めたから。





それは、昨日万事屋で観ていたテレビがキッカケだった。

その番組は、今時期には有りがちなバレンタインデイに上手くチョコレイトを渡す方法を紹介している番組で、銀さんと神楽ちゃんと僕は、ひやかしながら面白く観ていたんだ。
どれも女の子にされたらドキッとするような渡し方で、ふざけた神楽ちゃんにされてすらも、僕の心臓はドキリと跳ねた。


でも、やっぱりソレは神楽ちゃんみたいな可愛い女の子がやるからイィんであって、男の僕がやったとしてもウケ狙いにしかならないような仕草で…


まぁ、告白なんてしないけどね!
アノ人お菓子好きそうだからチャンス!なんて思ってなかったけどね!!

そんな事思いながらもちょっとだけガッカリと肩を落としていると、最後に僕がやってもそんなにおかしくない渡し方が紹介されたんだ。


…アレなら…
アノ方法なら、なんか通り魔的に渡せるんじゃないかな…?

そう思ってしまってからの僕の行動は早かった。



まずは、いつも家に潜んでいる近藤さんにお茶とお茶菓子を振舞って、隊服の構造を確認した。

よし。
ちゃんと有る。


そして、その渡し方に適したチョコレイトをお菓子屋さんに買いに走った。

今月はごめんなさいお通ちゃんんん!
僕の一世一代の告白だから!!
保存用のNEWアルバムは、絶対来月限定版を買いますからァァァ!!!


最後に、剣術しかやってこなかった僕は、ネット茶屋で調べて体術を学んだ。

不意をついたとしても、アノ人なら僕の動きをかわしてしまうかもしれないからね。

多分一回。
チャンスは一回きりなんだ。




そうしてやってきた2月14日。
僕は万全の準備を整えて、近藤さんに聞いたアノ人の見廻りコースに身を潜めている。


近藤さんには本当にお世話になってしまった…何度も練習させて貰っちゃったもんな…
今度僕の秘蔵の姉上コレクションを見せてあげよう。
一枚たりともあげないけど。


僕がうんうんと頷いていると、革靴が地面を踏みしめる音が近付いてくる。


きっ…来たァァァ!
嘘ォォォ!!もう少し遅いかと思ってたよなんで時間通り!?


そっと通りを覗いてみると、黒い隊服が二人………


イヤイヤイヤ、この渡し方は二人居ても大丈夫だから!

覚悟を決めただろ新八!

やれば出来る子新八ィィィ!!


大きく息を吸って、見廻り中の二人の前に、僕は飛びだした。



「ん?メガ…」


「おっ…沖田さんんんんんん!」


土方さんが何か言いかけたのを遮って僕が叫ぶと、二人が目を見開いて固まる。


チャーンス!


そのままの勢いで沖田さんに近付いて、隊服の胸倉を掴んで、目にも止まらぬ早業で内ポケットにぴったりのサイズのチョコレイトを差し込む。

そして、こっ…ココがポイントだったよな!

グイッと顔を近付けて、押し殺した小声で僕は囁いた。


「秘密ですよ…」


これでなんかドキッとさせられるはず………


ジッと沖田さんの目を見つめると、何故か目を泳がせた沖田さんが千切れるんじゃないかって勢いでガクガクと首を縦に振った。

………なんかリアクションが違うような………?




後日僕の前に現れた沖田さんは、その時の恐怖を小一時間僕に語り続けた。

それは、もう後々までしつこく語られる、僕たちの慣れ染め。



END