沖田さんはちゃんと約束を守ってくれたみたいで、午後から銀さんを呼び出してくれた。
「さ、神楽ちゃん!今のうちにケーキ作っちゃおう!」
僕は料理は出来るけど、ケーキは作った事無い。
神楽ちゃんは、料理も作らない。
そんな2人でケーキなんて上手く作れるのかなぁ…?
僕がちょっと不安になってると、張り切った神楽ちゃんが割烹着と三角巾をつけてやってきた。
「新八っ!早く作るアルヨ!!」
…とにかく頑張ろ!
神楽ちゃんに粉をふるってもらって、僕が卵を割って黄身と白身に分ける。
いつもと違って、凄くゆっくりキレイに粉をふるう神楽ちゃん。
気合入ってたもんなぁ!失敗出来ないぞ…
どんどん作業を進めていくと、なんだか楽しくなってきた!
分けた卵を2人で混ぜて、どんどん混ぜて、粉も混ぜて!
出来た生地をオーブンに入れて、その間に生クリームを泡立てる。
泡立てるのは神楽ちゃんにお任せして、僕はイチゴの代わりに買ってきた桃缶の桃を薄くスライスしていく。
本当はイチゴが良かったんだけど、この時期イチゴなんて無いしね!
オーブンがチン、と鳴ってスポンジが焼き上がった。
2人で覗くと、上手く膨らんでた!!
少し焦げちゃったけど、クリーム塗っちゃえば分かんないよね?
少し冷まして、僕がスポンジを3つに切って間にクリームと桃を乗せていく。
じーっと見てたんで、ニヤリと笑って桃を1切れ神楽ちゃんの口に放り込む。
僕も1切れ頬張ると、甘い汁が口いっぱいに広がる。
「おいしいヨ!さすが桃アルネ!!」
「じゃあ、神楽ちゃん、周りにクリーム塗って?」
「おっ…おう…任せるヨロシ!!」
緊張した顔で、恐る恐るケーキの周りにクリームを塗ってる。
その隙に、上に飾るクリームをビニール袋に入れて先を少し切る。
「新八ー!出来たアル!!」
暫くケーキと格闘してた神楽ちゃんが僕に駆け寄ってくる。
満面の笑顔で、ほっぺと鼻の頭にクリームを付けてる。
「あはは、頑張ったね神楽ちゃん!顔にクリーム付いてるよ?」
僕がタオルを渡すと、ごしごしと顔をこする。
その間に、さっき作っておいたクリームで飾り付けしていく。
…銀さんみたくうまくは出来ないや…
残してあった桃も上に乗っけて、真ん中に溶かしたチョコで文字を書く。
「神楽ちゃん、ここに『銀さんお誕生日おめでとう』って書いてあげて?」
僕がチョコを渡すと、緊張しながら神楽ちゃんがケーキに文字を書いていく。
「でっ…出来たアル…でも…ワタシ字、ヘたアルヨ…」
確かにちょっとうねうねしてるけど…
「銀さんは神楽ちゃんが書いてくれた方が喜ぶよ?きっと!」
「そっ…そうアルカ…?」
えへへ、と笑って嬉しそうだ。
プレゼントのケーキが出来上がったんで、料理も用意する。
料理は…いつもと変わんないけどね…
料理が出来て部屋の飾り付けも終わった頃、沖田さんに連れられて銀さんが帰ってくる。
僕と神楽ちゃんが、用意してあったクラッカーを鳴らすと、びっくりした顔が沖田さんを見て、すぐ満面の笑顔になる。
「銀さん、お誕生日おめでとうございます!」
「銀ちゃん!たんじょう日おめでとうアル!!」
僕らが言うと、ぐしゃぐしゃと頭を撫でてくれる。
「なんだよサプライズか?沖田君、キミもグルだったのか?あーもーやられたよ、銀さんまいったね。………ありがとうな………」
銀さんが照れたように赤くなる。
そして、すっごく幸せそうに笑ってくれた。
夕飯にさそったけれど、沖田さんは仕事中だから、とか珍しい事を言って帰っていった。
気を使ってくれたのかな…?
3人で囲む食卓は、いつもと同じだけどいつもとは違った。
すっごくすっごく幸せで、すっごくすっごく楽しかった!
プレゼントのケーキを出すと、銀さんの顔がふわっとゆるむ。
「なんだー?コレ神楽が書いたのか?ヘッタクソだなぁ!」
「なにおー!銀ちゃんの字だってそんなに変わらないネ!」
「はいはい、2人とも喧嘩しない!銀さん!コレ僕らで作ったんですよっ!」
「ぷれぜんとアル!!」
「おー…さんきゅーな…」
あははっ!銀さん赤くなった!喜んでもらえた!!良かったー!!
銀さんの年の数っぽいロウソクを立ててから吹き消してもらって、大きくケーキを切り分ける。
桃のケーキは、甘くてすっごく美味しかった。
その夜は、僕も万事屋に泊まっていく事にした。
銀さんの部屋に布団を敷いて、3人で一緒に寝た。
なんだか、父上と妹と一緒に居るみたいで、すごく安心する…
この2人に逢えて良かった…来年も再来年もずっとずっと…3人で誕生日祝い、出来ると良いな…
出来ますように…
END
銀さん誕生日おめでとう小説。
万事屋3人は、ダメな父さん・しっかり者の長男・やんちゃな末っ子だと思ってますから、ワタシ。
宜しかったらフリーでどうぞ。
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