温かな



ふかふかな枕に顔を付けると、日向の匂いがする。
すぅっと息を吸い込む度に、なんとも満たされた気分になるのは、くすぐったいような幸せなような。
凄く幸せな気分のまま又まどろみに沈もうとすると、遠くから俺を呼ぶ声がする。
…ウルセェなぁ…
でも、不思議な事に、不快じゃない。


「……なた…あなた…もう朝ですってば!…きて…起きて下さい…」


…あー…?
誰だ…?


「もう!お仕事遅れちゃいますよ?」


…仕事…?


「起きて…?………そー君………」


…恥ずかしそうなその声は…まさか…!?


俺がパチリと目を開けるのと、柔らかい唇が俺の頬に当たるのはほぼ同時だった。
見慣れた黒髪は、やっぱり…

ぎゅうと抱きつくと、柔らかい身体がクスクスと震える。

「もう、いつまで経っても甘えん坊ですね。子供達に笑われちゃいますよ?」

子供!?
そんなんいつの間に…!?
柔らかい身体を抱きしめたまま、ガバリと身体を起こすと俺達に駆け寄ってくる小さな身体…

「おとうさん、おはようございます!」

…にこりと笑うのは、キミにそっくりな可愛い女の子…

「えいえんにねてればいいのにばかおやじ!」

…ヘッ、と笑うのは、俺に良く似た生意気な男の子…

あぁ、そうだ。
俺達は結婚したんだった。

苦労の果てにキミを落として
皆に恨まれながらも祝福されて(キミが)
たくさん愛し合って、宝物が増えた

俺は、もう何回目になるかも判らない誓いを、心の中で立て続けてる。

キミ達がいつも笑えるように。
俺はそれだけを考える、と。

キミと子供達と、この腕で囲んで俺も幸せに浸る。



「おはようごぜェやす。毎日愛してやすぜ?パチ恵…それに…」




「ふぅえっ!?おっ…沖田君寝惚けてませんかぁぁぁぁっ!?」

「寝惚けてなんかいやせん…なんでィ…そー君って呼べィ…」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?そっ…そーくん…?」

「おめぇらも…」



「とっとと起きるネ、ソークン」

「寝惚けんのも大概にしやがれソークン」

「寝惚けたフリですよね!?羨まし過ぎだよ!ソークン」

「…殺す…ソークンで…」

「ソレ、使い方間違ってるからな?そんな事よりいい加減に離れろ〜?ぶっ飛ばすぞ?ソークン」



…ガキがやたら増えやがった…
2人じゃ…?


目を開けると、ソコは見慣れた教室。
俺の腕の中には、真っ赤な顔で目を潤ませる、大好きなあのコ。
幸せな気分のままニコリと笑いかけると、真っ赤に色づく頬が可愛い過ぎらァ。

でも、アレ?子供達は…?

キョロリと周りを見渡すと、グルグル眼鏡の生意気女に瞳孔開いたマヨラ、地味男に眼帯野郎に銀髪天パ…

アレ…?

「…パチ恵…子供達は…?」

「へぇぇぇぇぇぇぇっ!?こっ…子供なんて居ませんっ!!」

「何言って…」


あ…

アレぁ…夢か…

ぼんやり周りを見ると、チャイナに土方に山崎に高杉に銀八っつあん…

俺の腕の中には愛しいあのコ…

腕の中…

腕…

………


ギャァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!

やっ…やっちまった!!
俺ァまだなんも言ってねェのに!!
ヤツラ全員出し抜く為に、色々計画練ってたってェのに!!!

頭の中で大パニックになった俺は、パチ恵を見つめたまま固まっちまう。

「おっ…おき…そーくん…?」

律義に『そー君』呼びしてくれるパチ恵はなんて素直なんでィ!?
イヤだってホラ、夢の中のパチ恵だと思ってたし!
なんかスゲェ良かったし!アノ呼び方!!

「…あの…離して…くれませんか…?」

これ以上赤くなれないんじゃないか、ってェぐらい真っ赤な顔で目を潤ませて俺を見上げるなんざ、反則じゃねェか。

あぁ、きっと今が人生最高のチャンスにちがいねェ。

「イヤでィ。俺のモンになってくれたら離してやらァ。」

俺に出来うる限りの真剣な顔でパチ恵を見下ろすと、キョロキョロと辺りを見回して、でっかい目でじっと俺を見つめてくる。

「…あの…それは…下僕…」

「違いまさァ!俺ァアンタが…パチ恵が好きなんでィ!!結婚して子供作るぐれェ!!!」

「いやぁぁぁぁっ!この人まだ寝惚けてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

キリッ、とキメ顔で言ったのに…何ででィ!?

グイグイとパチ恵が俺の胸を押しだしたら、今迄大人しかった周りのヤツラが一斉に動き出す。

パチ恵はチャイナに奪われるし、俺は銀八っつあんにゲンコを貰った。
ヒデェや、俺ァ本気だってのに…

「パチ恵!俺ァ寝惚けてなんざいやせんぜ!!本気で好きだからな!!!さっきの夢、ぜってぇ正夢にしてやらァ…」

改めて俺が言うと、パチ恵の顔が又赤くなる。

「知りません!」

「ぜってぇお前ェらを幸せにしてやるから、覚悟しやがれ!」


あんな温かな幸せ、諦められるか!
ニヤリと笑ってパチ恵を見ると、夢の中の幸せそうな笑顔がよみがえる。

待ってなせェ、子供達。
お父さんがすぐにお母さんと逢いに行ってやるから。

…ちっとだけ、応援して下せェ…


我ながら、弱気な自分が可笑しくなってクスリと笑うと、がんばれ〜、と言う高い声が聞こえた気がした。


END


3Zの沖パチですが。
まだ付き合ってない2人です。これからですよ、これから!!