01・買い物の途中で
こんにちは、志村新八です。
今日は月に1度の大江戸スーパーの特売日です。
朝イチでチラシチェックを終わらせ、お菓子をネタに荷物持ちを確保し、メモを握り締めてイザ出陣です!!
カートをマッハの勢いで転がしつつ、3人で手分けしてチェックした特売品は全て確保しました!!
生活必需品と、日持ちのする食料はココがチャンスですからね!!普段の値段でなんて、とってもじゃないけど買えませんから!!
万事屋の稼ぎじゃ!!
で、銀さんと神楽ちゃんにお菓子を選んで貰ってるんですが…
…長ぇヨ、アンタ達………
1個だけですよ、と言ったのが悪かったのかなぁ…神楽ちゃんは酢コンブで決まりだと思ってたのに、なんかオマケ付きに心奪われちゃったらしいです…
銀さんも銀さんだよ、いい大人なんだからさっさと決めれば良いのに…そんなに吟味したって大差ないよ、全く…
子供かよ、アンタら…そして、そんな事言ってる僕はオカンかよ………
そんな事を考えながらカートに寄りかかっていると、カゴの中にポイッ、とお菓子が入る。
…やっと決まったのか………
ポイッ
ポイッ
ポイッ
ポポポポポポポポポポ…
「ちょっと2人ともっ!!1個だけって言ったでしょうがっ!!!!!!!」
ツッコミつつ僕が顔を上げると、両手一杯にお菓子を抱えた沖田さんが立っていた。
「よぉ、新八。奇遇ですねぃ。」
「沖田さん!?何してんですかアンタ!仕事はっ!?…って、サボリか………ってか、人んちのカゴになにポイポイポイポイ入れてんですか!!ウチにはそんなお金有りませんよッ!!!!」
「なんでぃ、ケチくせぇなぁ。」
「ケチじゃぁないでしょう!ケチじゃっ!!マジで無いんですよっ!!!」
むぅっ、とふくれた沖田さんが、持ってたお菓子をドサリ、と僕のカゴに入れる。全部………
そして、懐をゴソゴソと探って財布を出し、ここの所あんまりお目にかかっていないお札を出し、僕に差し出す。
「ほら、コレで全部買いなせぇ。」
えっ!?何してんのコノ人!?僕だってそんなつもりで言ったんじゃないのにっ!!!!
「いや、ちょっとっ!こんな大金どうしろとっ!!お菓子代じゃ多すぎですよっ!!」
「ガタガタ煩ぇねぃ。妻に家計で悩ませないのは夫の甲斐性でさぁ。」
「やっ!ちょっ!妻ってっ!?まだ早…イヤイヤ…それにコレは万事屋の買い物ですよっ?」
「舅小姑にコビ売っとくのも夫のつとめでさぁ。」
沖田さんはニヤリ、と笑い、綺麗にウインクを決めてくる。
…もぅ、何なんだコノ人は…赤くなるでしょうが、全く………
「あっ!コラ!!サド王子!!!新八に近寄るんじゃないアルっ!!」
「ちょっと沖田君、ウチの子に手ェ出さないでくれる?」
何か感じたのか、2人がダッシュで僕達の方にやってくる。
あぁぁぁぁぁ…スーパーの中なのに!!ここで乱闘なんかしたら暫らくココ来れないよっ!!
その上折角確保した特売品が買えないなんて有り得ない!!!
「銀さん、神楽ちゃん、沖田さんから臨時収入が入ったんで、お菓子、2個まで大丈夫ですよ―」
僕が例のお札をヒラヒラと振ると、2人はピタッ、と止まり、そのままクルリと回れ右をしてダッシュでお菓子売り場に戻った。
「「ありがとぉ―――!パピ――――――!!」」
…ダメだ…ダメダメだよ…アノ人達…誰がぱぴーだ………僕が痛む頭を抱えつつ沖田さんを除き見ると、
満更でもない様な顔で笑っている。
「新八がマミーで俺がパピーですかぃ?」
そっ…そう言う事なのかな……?僕がパピーじゃぁなくって…?
なっ…何言うかなぁ、もぅ…
でも、なんだか幸せそうに笑っている沖田さんが嬉しくて、僕も幸せな気分になる。
「じゃっ、行きましょうか?沖田さん。」
僕が笑顔で振り向くと、沖田さんは不思議そうな顔をする。
「どこへでぃ?」
「折角の臨時収入ですから、何か美味しい物を買い足しに。今晩アンタにも何か作ってあげますよ。」
「マジですかぃ?」
「マジです。何が食べたいですか?」
ええと、ええと、と悩み始めた沖田さんと一緒に、ガラゴロとカートを押して(もらって)食料品売り場に向かう。まさか、買い物の途中でこんな幸せな事が起こるなんて…今日は良い日に違いない。
END
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