※ちょ――――っと血の表現が有ります。苦手な方はバックプリーズ!!
11・真夜中の叫び声
イヤな雨だ…まるで何か大切な物を、どこかへ流して行ってしまいそうな勢いで振り続けている。
僕は久し振りの休みだって言うのにどこに行くアテもなく、自宅の縁側でお茶をすすりながら、ただこの降り続く雨を見ている。
今日は珍しく、沖田さんもサボリに来ていない。いつもなら大抵僕の近くでゴロゴロと寝てるのに…
「…新八ィ………」
あ、来た…ヒマな時間もコレで終わりか、とボヤきながらも、内心嬉しかったり。
僕は自然と浮かんでくる笑顔を消せないまま振り返る。
…でも、そこには誰も居なかった。…アレ………?
「…沖田さん…?アレ?どこに…」
「……新八ィ………」
庭の方から、消え入りそうな沖田さんの声がする。
…何か変だ…
僕が慌てて後ろを振り向くと、沖田さんが立っていた。
…!?
沖田さんは、血まみれで、自分の腕を押さえていた。
なっ…何が…!?どうなって…!?
「…すいやせん…しくじっちまいやした………」
沖田さんの体に付いているその血は、いつものような返り血ではなく…沖田さん自身の……?
降り注ぐ激しい雨が、沖田さんの体に付いた赤い物をどんどん洗い流していく。でも、後から後からその赤い物は沖田さんの体を汚していって…
「沖田さんっ!!!」
僕が駆け寄ると、沖田さんは僕の腕の中に倒れこんできた。
…!?冷たい…凄く冷たいよ!沖田さんっ…!!このままじゃっ………
「沖田さんっ!沖田さんっ沖田さん沖田さん沖田さんっ!!総悟っ!!!!!」
ぴくりとも動かない沖田さんをガクガクと揺さぶるけど、沖田さんは返事をしない。
どんどん冷たくなっていく体を、なんとか暖めたくて強く抱きしめる。
…だけど………
「イヤだぁ――――――――――――!!!!!!!!」
…僕の目に飛び込んできたのは、真っ暗な天井だけで………
部屋に響き渡った真夜中の叫び声だけが虚しくこだまする。
隣を見ると、何にも知らず幸せそうにすぴすぴと眠りこける茶色い頭………
…夢…か………
あんまり幸せそうに眠りこけてるんで、なんだか憎らしくなって、ぺしり、と頭を叩く。
疲れてるんだろうけどさっ!それでも起きないなんて…いいのか?一番隊隊長…………
僕がちょっと心配になっていると、う―ん、と唸って抱きついてくる。
…あったかい…
沖田さんの暖かさを確認して、どっと安心する。あぁ、ちゃんと生きてる…
…でも…僕だってちゃんと分かってる。沖田さんの仕事が危険なものだって。何時さっきの夢みたいな事が現実に起こっても不思議じゃないって事を…
不安を吹き飛ばしたくて、僕がぎゅうと抱きつくと、沖田さんが更にぎゅっと抱き締めてくる。
起こしちゃったかな…?顔を上げてみると、締まりの無いにへら、とした笑顔を浮かべて、しんぱちぃ…と寝言を言った。
なんだよ…幸せそうな顔しちゃってさ………
…この先…何が有っても、僕だって沖田さんを護るから…だから…
「無茶はしないで下さいよ…?」
「…う―ん…善処しまさぁ…」
「ちょっとっ!アンタ本当は起きてんじゃないんですかっ!?」
「…グ――――……………」
…タヌキ寝入りかもしれないケド、まぁ良いか………
僕は沖田さんの胸に顔をうずめて暖かみをちゃんと感じて、今この時を大切にしようと心に誓った。
END
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